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積もる紅灰

作者: 黒宮杳騏

溢れる涙は、哀情か愛情か。



宵闇の切なさが、不意に私の息を止めた。

揺らめく瞼を閉じて濡れた頬を拭っても、深い海を溶かした墨は未だ乾きそうにない。


『かくとだに…えやは伊吹のさしも草……さしも知らじな燃ゆる思ひを……』


目眩がする程に明るい月を疎ましく思いながら、浮かぶ言葉を擦れかけた声で歌う。

時折胸が痛むのは、積もり行く灰の耐え難い重み。

しかし、私がどれ程烈しく焦がれようと未来を変える事は出来ず。


「……報われる事は…ない……」


それでも尚、私は思いの燃えるままに燃やすしかないのだ。

行き場を失くした焔が亡者の如く藻掻く度に、流す涙が油と為って焦熱を産むとしても。


「…せめて、灰に……」


添えるのは、紅く燃え立つ徒花。

連ねた思いを纏う手紙達は、秘めた情念を糧に狂おしく燃え上がる。



有明けの月が消える頃には、燻る残り火も睡りにつくだろうか。


還らざる私の思いを残して。

引用元・藤原実方朝臣(百人一首)より

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