第4論 縁なき衆生は度し難し
深い
深い、深い、
黒い水ような場所にいる。
目を閉じても、開いても、目に映る景色はただの黒。
漆黒や暗黒など、小説とか絵では色んな黒の景色を表現さているが、普通の人がその景色の色が漆黒なのか、暗黒なのか、黒なのか分っていて使い分けてるようには思えない。
やたらと難しい漢字を使って、雰囲気を作り上げて、黒と簡単にいえばいいのに。
本を書く人間は皆、見栄や脚色、格好つけたいものなのだろうか。
より繊細に、より比喩をつかい、人の心に共感しては心に棲みつき、人を支配してしまうことだってある。青春小説やラブストーリ、日常や異世界ファンタジーなら、人に幸福や笑い、悲しみや道徳などを人に与え、終わる作品は大丈夫。だが、そういうものばかりがある世界でもない。
人に寄り添い、人を支配し、人を連れ去ってしまう...
世の中にはそんな厄介なものが生まれる。
作家本人に意思に関係なく、作品たちがひとり歩きをして、”人を連れていってしまう” 何かに変貌してしまう。本来の役割ではない、持ってはいけない力を持ってしまう。だから、繊細でより人の心の隙間に入るものは厄介で対処にも困る。
暗黒や漆黒など、より繊細に書かない方がいい。
それは、普通の人なら分からない見分けがつかない黒でも、”普通の人じゃない人達から見れば” 見分けが出来ていて、それに共感してしまい、惹きこまれてしまう。
それが、深く繊細なほど、より、深く、より、根強く、より、招かれる...≪白い手の≫
バシャッ
「つうっ!!!」
声にならない悲鳴が道端に鳴り響く。
その悲鳴と同時に鑑堅哉は眼を見開いた。
彼の周りには水で濡れていて、彼自身も髪や顔、来ていた服までもべったりと彼の体に張り付くように濡れていた。
彼の意識は一気に目覚めたが、数秒間。彼の思考がまだ朦朧としていたが...
「お目覚めですか?」
耳から透き通る、落ち着いた声色が耳の鼓膜を通りこして蝸牛まで響く。
眼を開いた視界には、影が掠れている。
視界もまだ回復していない。
太陽の照り返しもありながら細目になりながらも、声のするほうへ視界のピントを合わせるように徐々に視界が回復した目に映る影は、
風に流れ、濡羽色の髪をもつ。美しい少女が立っていた。
視界も段々とはっきり見えるようになるにつれて、少女の髪色だけではない。
顔も体も服装も今でははっきり見える。太陽に光が中和するような白い肌、はっきりとした顔立ちしかし、眼は切れ長だが優しい瞳。鼻はすうっとながれ小さく、唇が…白い肌と対立するふっくらと赤みがかっいる。
彼女は学生だろうか?
少女が来ている服は、白のセーラー服のように見えるが私が知ってる一般のセーラー服と一点違和感がある。
それは、彼女の履いてるスカートが紅い色であること。
今の時代、昔よりも制服の自由さあり、学校にもよるが形や色までも様々なスタイルがある。制服は学校の示す大切な役割でもあり尊重するものだ。
しかし、ながら、いくら昔よりも厳格なものではなく可愛らしさファッションセンスを入れたものが制服が多いがセーラー服のスカートが紅い色では、学風に異論が持たれそうだし、傍から制服は制服でもコスプレのようにも見えてしまう。
目の前、この少女はもしかしたら、コスプっ「違います。」自分の思考を鋭く切るように彼女からの口から発せられた。
「コスプレではなく、正装ですのでご心配はいりません。」
少女はそういったあと
「それと、あなたの”御身体も今はまだ”心配いりませんね」
少女は微笑みながら鑑に伝えた。
鑑はその一言を聞いて今までの事を思い出した。起きたとき目の前にある自分の身体。自分の生死確認。幽体離脱で出来ることの検証。自分が幽霊であるかの証明。そして、吐き気と共に此処で倒れたこと…。
「あんたは、私が視えるのか!?」
まさか、こんなセリフを自分が言う日がくるなんて思いながら、鑑は少女の方をみる。
少女は、先ほどの微笑みから何かを考えだした。
何を考えてるのが鑑には分からなかったが、その行動がより鑑の心に不安を齎す。
何故、彼女は私が視えてると言ってくれない?明らかに私の言葉を聞いて彼女は考え始めた。
私の言葉が伝わってはいる。しかし、彼女は何か考えている?
もしかしたら、本当は聞こえてないのか?だったら、もう1度...
「あんたには、「視えるも何にも、貴方は存在しています。」」
またもや彼女が私の言葉を覆いかぶさった、それも狙ったかのようかに、いやここまでくるとまるで…
私が意味が分からない、もしやと考えを施行させてるさながら、彼女はやっと考えが纏まったのか。彼女は続けて語り始めた。
「貴方は、自分が視えるか?視えないか?と聞いてきましたよね。視えるって言葉は存在しない何かのものの事を指します。しかし、貴方は存在してます。分りやすく簡潔的に言えば”視えてる”と言った方が分りやすいと思いましたが、しかし、それは、貴方が存在していないという言葉にもなってしまいます。なので、視えるか?っと言ったら、視えてはいません!」
頭が混乱するような言い回しに、私の思考回路は迷路に迷い込まされたように思える。
しかし、彼女の言いたい事を要約して、更に分りやすく纏めてみると...
「じゃ、言葉を変えるけど...私は生きてる?」
「はい!」
彼女は明るくそう頷いた。