第97話 絶不調☆俺
本日もよろしくお願い致します。
土日を挟み月曜日
再びやってきました登校日。
やって来てしまいました登校日。
俺の月曜日は最悪なコンディションでの幕開けだった。
「……はょー」
「おう、沢良木……ってどうした?」
教室に入りまず顔を合わせたのは藤島だった。
ここのところは毎日言葉を交わし、昼食を一緒に取る等、なんだかんだ言いつつも行動を共にすることが多くなった。
そんな藤島は俺の様子を見て怪訝そうにしている。
誤魔化す必要も無いので、俺は自分の状況を素直に伝えた。
「……ちょっとダルいわ」
絶不調☆俺である。
「いや、なんで学校来てんだよ」
速攻、藤島から呆れた表情と共に至極真っ当なお言葉が飛んできた。
「行けると思ったんだがなぁ。朝起きて、なんかダルくね?とか感じて、熱っぽくね?って感じて、節々痛くねって…………あれ、これ風邪じゃね?」
「思考力の減衰も入れとけ」
「そうっすね……」
「どうするんだ? 休むなら先生に言っておくぞ?」
どことなく心配した様子でそう提案してくれる藤島。
弱った心にこの気遣い、思わずキュンと……来ないぜ!
どうせならラブリーエンジェル斉藤さんに言われたかった。
キュン死出来るわ。
「ん、まぁ、とりあえず授業受けるよ。無理そうだったら帰るわ」
「おう、無理すんなよ」
弱った心にこの気遣い、キュンと来ちゃうじゃないか。でも、俺はやっぱり斉藤さんが良いのさ。
「おはよう沢良木君!」
「宗君おはよ!」
「ああ、二人とも、おはよう……」
席に着くと早速美少女お二人からの挨拶があった。
相変わらずの眩しい笑顔ではあったが、体調不良からちゃんと返せたか定かでは無かった。
しかし、二人を見ると既に互いに睨み合っているようで俺の様子には気が付いていないようだった。
失礼にならずに助かった。
いつもならここで、愛想笑いや二人に一言でも挨拶を続ける所だが、気力も持たず俺は机に突っ伏すのだった。
「沢良木君?」
「宗君?」
疑問符を頭に浮かべる二人に俺は返事を返す事すら難しかった。
休み時間。
「ねね、宗君! 午後の移動教室なんだけどさ、なんかグループ組むんだって。それで、あたしと組まない? ってお誘いなんだけど!」
「……んぁ? 何?」
隣の真澄に何か、話しかけられていたがボーッとしていて、聞き逃してしまった。
悪い、と一つ謝りもう一度と促した。
「んもぅ! だから、午後の授業で一緒に組もうって話!」
「ああ、物理の実習、だっけ? 別に構わないが……」
俺はそこまで言いかけて、一つ嫌な予感が脳裏を過った。
何かと真澄に突っかかるあの娘の事だ、こんな話をしていると……。
「さ、沢良木君! わたしと午後の実習組みませんか!?」
ほらね。
天使ちゃんが顔を赤くしながら俺へと問いかけてきた。
つか、何で敬語?
ほんのりと懐かしいです。
「あ、あなたねぇ! あたしが最初に誘ったのよ!? 後からズルいわよ!」
「ず、ズルくないもん! わたしも誘おうと思ってた所だったし! それに決めるのは沢良木君だよ!!」
おおう。
また始まったよ。
もう勘弁してくれよ。
なんでそんなに仲悪いのよ。
もうちょい仲良くしてくれてもさぁ。
「あ、あはは……」
はぁ。
二人から見詰められ、俺は愛想笑いを漏らすしかない。
俺に振らないでくれよ……。
この際どっちでも良いっすよ。
とは言えない小物でニュートラルな俺。
おいそこ、ヘタレ言うんじゃねぇ。
あ、言ってない、そうですか、言ったのお前だろ、って? あ、そうですね、はい、すいません。
「ほら、沢良木が困ってるぞ」
「相変わらずだねぇ」
困り果てる俺の元にやって来たのは藤島と高畠さんのバスケ部カップルだった。
その手には次の時限の教科書がある。
藤島の登場に美少女二人が警戒の色を浮かべる。
確かにここ最近藤島に俺が助けられる事が多い、となれば、二人はそれを阻止されていると言うことであって。
「藤島君? 何かな?」
挑む様な声色の真澄は藤島を見やる。
真澄程では無いにしろ、斉藤さんも藤島を見ていた。
俺的には板挟み状態でいつも助けてくれるので、藤島に対する好感度はうなぎ登りなのだが。
「沢良木が困っているようだったからな」
真澄の気迫にも何処吹く風と、藤島は澄ました笑いで受け流した。
「そんなこと無いわよ? ね、宗君?」
「……ん? おぅ? ぁー、そうだな?」
真澄に振られるも、内容が頭に入って来ず生返事になってしまう。
今朝からの体調不良がいよいよ佳境に差し掛かってきたかと感じる。
早退すべきか否か。
熱っぽい頭でぼんやりと考え事をする間も話は進む。
頭では一生懸命考えているのに、全然考えがまとめられていない、みたいな?
そんな感じ。
「ほら!」
「……ふむ」
それ見ろ、とでも言うかの様に胸を張る真澄。藤島はそんな彼女を一瞥すると視線を俺に向けた。
「?」
藤島の視線の意味を図り損ねている内に藤島の視線は外れていた。
いったい何なのか。
……つか、そんなことよりダルい。
まじダルいわ……。
本当に帰ろうかしら。
「お、そろそろ時間じゃないか。皆行こうか」
高畠さんの言葉に皆が揃って時計を見れば、余鈴まであと僅か。
移動教室の事を考えれば、そろそろ動きたい時間だった。
「……行くかぁ」
俺は身体のダルさから、ため息を吐くように言葉を吐き出すと立ち上がった。
「あっ、ねえ宗君! 結局どっちと組むのー!?」
「そ、そうだよ沢良木君っ!!」
俺の後を追いかけてくる美少女二人へ、おざなりにならない程度に話題を逸らしつつ教室を移動したのだった。
これを、その場しのぎとも言う。
出来れば藤島あたりと組めれば楽だな、なんて適当に考えていた。
結局の所、物理でのペアは出席番号順という何の捻りも無いものであったため、斉藤さんとも真澄とも組む事はなかった。
そんな結末だった。
昼休み。
相も変わらず机を寄せ合い、いつものメンバー5人で昼食と相成った。
座る場所もいつもと同じ。俺の左右に美少女様達が陣取る形だ。
そして、俺は今目の前の物体を手に固まっていた。
……どうしよう。食える気がしないぞ……。
表面に張り付いた黒くてかるしっとりとした手触り。
固すぎず柔らかすぎず、適度にふっくらとした感触。
学生も満足出来るであろう、このサイズ感。
コイツを作った御仁のニヤリとした笑みが、何故か脳裏に浮かんだ。
「……ぅ」
まあ、なんてこと無い、購買のおにぎりである。
移動教室の帰りに購買に寄り買っておいたのだが、俺は体調不良により極度の食欲不振☆に陥っていたのだ。
購買のおばちゃんのせいでは無い。
多分。
「宗君あーん」
「さ、沢良木君、あーん」
俺が不調だろうと変わらないのは両隣に陣取る元アイドル様と天使様である。
今日も二人は元気一杯に火花を散らし張り合っていらっしゃる。
飽きないもんだね。
「……あーん」
それぞれ美少女からおかずを頂く。
最近では慣れと諦めから、味を楽しむ余裕が出てきたのだが、今日はご覧の通り絶不調☆なのである。
今までとは違った意味で味を感じなかった。
「ね、美味しいかな?」
「どうかな?」
「あ、あぁ、美味しいよ?」
すいません、正直味が分かりません。
「……ぅぷ」
それに、食欲不振なところを口に突っ込まれたからか、少し吐き気が……。
あ、ヤバい。
もう食えない。
マジでギブっす。
本当にごめんなさい。
「宗君、まだまだあるよー?」
「わ、わたしのおかずもあるからね!」
尚も嬉々として、俺への餌付けを試みる二人。
俺には最早、迫り来る美少女達が拷問官にしか見えなかった。
こんな美少女二人に拷問されるならそれはそれで。
……良くねぇよ。
「宗君?」
「沢良木君?」
可愛らしく小首を傾げる二人。
俺が二人に伝えられる、いや、伝えたい言葉は一つ。
「ごめん、ギブ」
俺は保健室へと旅立った。
お読み頂きありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。




