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第94話 なんか友達出来てたぜ

大変長らくお待たせしました。

よろしくお願いいたします。







はい、今週も始まり3日経ちました。

月曜日に真澄がやって来たので、本日は木曜日。

平日は折り返したであります。


え、美少女二人はどうなったのかって?

まあ、変わらずっすよ。ええ。


授業中に俺の机に自分の机くっつけようとするし、休み時間の度にお互いにつっかかるし、昼休みは俺の口に弁当詰め込むし。


最早、1年2組では見慣れた光景らしいです。

実際、皆たいして気にして無いしな。


くそう。


変わった事と言えば、胃薬が俺の常備薬になったくらいかな?

○スター10初めて買ったけど、結構効くのね!

お兄さんビックリ!


あと、俺が結構ストレスに弱いってことがわかったよ!

お兄さんビックリ!

胃もビックリ!


いつか慣れるのかしら?

胃痛に?

シチュエーションに?


いやいや、それより根本的な部分的で二人の仲をどうにかしたいよね。

やっぱり仲良くしたいからな……っと。




さあ、戦いを始めよう。



胃痛との、な。






俺はガラガラと教室の引き戸を開ける。


「あ、沢良木君おはよー」


「ああ、おはよう」


「おっす、沢良木」


「おう、おはよう」


教室に入った俺にクラスメイトが挨拶をくれる。

天使と元アイドルの騒動の副次効果というべきか、先週に比べて更に声をかけられるようになった。

勿論、俺みたいなのが気に食わないヤツもいるだろうから、全員とはいかないが。

あと、俺を見てニヤニヤしないで欲しい。

特にそこ。バスケ部のポンコツガール。


そろそろクラスの連中の名前を覚えようかな、なんて思ったりもしている。


「……ぉ、おはよう」


そして、俺は冷戦地帯へと足を踏み入れる。


目指すは斉藤さんと真澄の間に鎮座する俺の相棒机ちゃん。

中頃まで入った亀裂がとってもチャーミング。

二人の美少女に挟まれてどこか嬉しそうだね!

たとえ、そこに冷々とした空気が流れていようとも。


「あ、沢良木君、おはよう!」


「あ、宗君おはよー!」


「あ、ああ」


俺は思わず恐怖を感じてしまう笑顔に返事をすると相棒へ腰かけた。


二人の笑顔が最高に眩しいぜ。



ああ。

胃が痛い。

週末早く来ないかなぁ。


俺は内心ぼやくのだった。





「お願いしますっ、藤島様! この通り!」


休み時間、廊下にて。

俺は今、藤島に拝み倒していた。

そんな俺に藤島はため息を吐く。


「はぁ、今日もかよ」


「今日もだよ!!」


「なんで偉そうなんだよ」


藤島は再びため息を吐いた。

第二射ため息最短記録を更新する勢いだ。

そんなにため息ばっか吐いてると、どっかの婚期逃しそうな姉ちゃんになっちゃうぞ!

あ、こいつ相手いたんだった。

死ねリア充!

あ、俺も天使のお陰でリア充だったんだ。


今は毛ほども充実してないけどねっ。

胃に穴開くよっ。

ハハハっ。


くそう。


理沙姉ちゃんもゴメンよ。

灰皿を振りかぶる姿が脳裏に浮かんだ。


「頼むよ、今日も一緒に飯食ってくれよ。頼めるヤツ居ないんだよ」


そう。

俺が藤島へお願いしていたのは、昼飯の相席。


2日目も変わらずに教室で食べていたのだが、その日は藤島と高畠さんは別だった。

そしたらもう、辛いのなんの!

クラス中からの視線はダイレクトだし、初日の高畠さんからのアドバイス通り二人の美少女は多めの弁当を持って来て俺へ嬉々として食わせるし。

肉壁……もとい人間バリケード的な目隠しフェンスが必要だと感じたね。

なので、3日目はバスケ部カップルに再び相席をお願いしたわけだ。

そして、本日も引き続きお願いしようと拝み倒しているのだ。


「他にも友達くらい……」


「?」


「……ああ。俺達の他に友達居なかったよなお前」


なんかいきなりディスられた。


「うう、うるせえしっ。友達くらい直ぐ作れるしっ」


嘘じゃないよ? 本当の本当だよ?

そう、友達くらい……友達?


突然黙りこんだ俺に訝しげな表情になる藤島。


「なんだよ?」


「今の言い方だと俺と藤島が友達みたいじゃん」


「……友達だろ」


俺の言葉にきょとんとしていた藤島さんだったが、少しすると視線を逸らしながらそう宣った。

その頬は心なしか赤く見えて……。

そんな姿に思わずキュンと……来なかった! うん!

誰得だよっ。

斉藤さんならまだしも野郎のなんて嬉しくねぇよ!

頬染めなんて絶対幻覚だよっ。

え、何、いつの間に藤島ルート入っちまったの? ねえ?


「あ、ぉ、そうか……」


思わずどもってしまう俺。


ああ、斉藤さんの照れ顔が見たい。

最近、ぱーへくつエンジェル照れスマイル全然見てないわ。

大変よ、補充しなくちゃね!


廊下にて照れるノッポ野郎二人。

あ、藤島バスケ部だから結構背が高いんだ。俺より低いけど。多分180ちょうどくらい。


つか、これこそ誰得だよ!

鳥肌もんだよ!

もうやだよ!


そこへ、すれ違う女子グループが俺達を見て、きゃいきゃい喜びながら通り過ぎて行った。


あ、地味に需要あったみたい!


嬉しくねぇよ!

こんちくしょうっ。


「なんだよ、俺は友達だと思ってたんだが?」


「お、おう……」


なんか友達出来てたぜ。

やったね。

でも、頬染めはノーサンキューで!



あ、それと、なんとか昼飯の約束は出来た。




―――――




「はい、沢良木君あーん」


「あーん」


「宗君、あーん」


「あーん」


「はい、沢良木君あーん」


「あーん」


……俺の目の前では実にカオスな光景が繰り広げられていた。


「な、なぁ、ダーリン……」


「んぁ?」


俺と同じく沢良木達の様子を見ていた唯が引き気味に俺を呼んだ。


「なんなのだろう、この光景は」


「……」


俺は何とも言えなかった。


光を失った瞳で延々と弁当を食べ続ける沢良木の姿に。

沢良木の両サイドからは絶え間無く弁当が供給され続ける。

両翼を固める美少女達は非常ににこやかだ。

幸せそうに沢良木へ弁当を食べさせ、その箸を見た後に自分の口に運び恥ずかしそうだがニマニマしてる。


……ごちそうさん。


沢良木もその表情を綻ばせている。

あ、いや、作ったような笑みが貼り付いている、の間違いだったな。


「さ、沢良木君、死んだ魚のような目をしているね……。初めて言葉通りの目を見たよ」


引いているのか、感心しているのか分からない調子で唯は頷いていた。


確かに唯の言う通り、沢良木の目は濁り、顔の表情には感情が見当たらない。

コイツは無心で食べ続けていた。


最初でこそ周りも冷やかしたり、面白がったり、羨んでみたり反応していたのだが、今ではチラリと視線を寄越す程度になっていた。


正直、最初は俺も面白がって見ていた。

まあ、俺には唯がいるから羨んだりは全くないんだが。ほんとだぞ?


しかし、クラスの視線も日々窶れていく沢良木に同情じみた視線に変わっていった。

未だに怨念の篭った視線を寄越すのは、ますみんのファンだったヤツか、他のクラスの連中くらいだろう。


「あ、そういや沢良木、今日俺が日直なんだけどよ、教材運ぶの手伝ってくれよ」


見かねた俺は沢良木へと話題を振った。

隣で、命知らずめ、と唯の言葉が聞こえたが気にしない。

唯の言葉通りと言うか、案の定と言うか、向かいの美少女達は揃って、キッと睨みをくれた。

おーこわい。

気圧されそうになるが、俺は努めてそれを無視する。

沢良木は二人とは正反対に表情に喜びを現していた。

あからさまな沢良木の反応に吹き出しそうになった。



一学期にはあのキモロン毛だった事に加え、周囲との交友も殆ど無い様子だった沢良木。まあ、斉藤とは仲良さそうだったが。

自ら会話する事も無く、いつも一人でいるようだった。雰囲気も相まって周りも話しかけられずにいた。


それが、蓋を開けてみれば男の俺でも素直に認めるイケメンだった。それに加え頭も良いし、スポーツも出来るときた。あの日、体育のバスケでクリアされたこと未だに覚えてるんだからな。

世の中ずるいわ、と感じたのは俺だけじゃ無い筈だ。


以前から、少しずつ俺も会話するようになってオモシロイやつだな、とは感じていた。

それに加え、馴れ馴れしくなってくると、意外な程に表情豊かな所もあった。

沢良木の雰囲気だとか馬鹿な反応だとか減らず口だとか不思議と不快ではなくて、寧ろ惹かれてすらいた。

間違っても男色家ではないからな?

俺は唯一筋だ。ほんとだぞ?


友達としてだ、友達として。

それが、コイツと来たら「今の言い方だと俺と藤島が友達みたいじゃん」とか抜かしやがる。

友達だと思ってたのは俺だけかよ……ってそんなことは良いんだ。

俺はそう思っているんだから。


まあ、沢良木曰く友達は全然居ないようだから、沢良木の数少ない友人としては少し心配もするわけさ。

少しくらい助けてやるかね、って。


「まあ二人とも沢良木貸してくれよ。次の教材なんだが重いらしくてな女子には無理みたいなんだよ」


「宗君じゃ無くても良いでしょ?」


ますみんが俺の言葉に反論する。確かにその通りなんだが。

するとあからさまに沢良木が悲しそうな表情になった。

だからヤメロ。笑っちまう……。


「それもそうだが、俺が沢良木と喋りたいんだよ。お前らが沢良木にずっとくっついてるから、タイミングねぇじゃん」


ますみんはむっとした表情だが、斉藤は少し照れていた。


「……まさか、健太……」


お、唯も俺の目的が分かったのか?


……ああ、これ違うな。

やっぱり変な方向に勘違いしてるな。

だから俺は唯一筋だって。ほんとだぞ?


「まあ、そんな訳だから沢良木を貸してくれよな」


隣のポンコツな恋人はスルーして俺はそう締め括った。

二人は不服そうにしながらも頷いてくれた。



その後、沢良木の愚痴を聞きながら俺は日直の仕事を沢良木とこなしたのだった。


学食の購買部で飲み物を買ったり、斉藤達には悪いが寄り道して時間を潰しながら教室へ戻った。

ため息を吐きながらも肩の力は抜けているようだった。


購買部で多く飲み物を買った沢良木を不思議に思って見ていると。


「ああ、二人の分だよ。斉藤さんはミルクティーで真澄はブラックコーヒー。ブラックは俺が好きなヤツだから真澄も大丈夫な筈だ」


だそうだ。

モテるヤツは大変だなぁ、なんて他人事のように笑ってやった。

あ、俺も唯に買って行くことにした。

少しは甘やかしてやるかね。


教室に戻ると不穏な空気漂っていたが、沢良木が二人に飲み物を渡せば綺麗さっぱり霧散していた。

嬉しそうに飲む二人になんだかんだ言いながら沢良木も嬉しそうにしていた。


「あ、健太ありがとう……」


予想外だったのかビックリしていたが、唯は嬉しそうに微笑んだ。

俺もその笑顔に満足だ。


今一度、沢良木へ視線を向ける。


ま、頑張れよ色男。


再び美少女二人に囲まれ苦笑いする沢良木を、俺は内心応援するのだった。









お読み頂きありがとうございました。


まさかの藤島回。


次回もよろしくお願いいたします。

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