表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/199

第87話 転校生がやってきた

新学期が始まり数日が経った。

授業も通常のものに移行して、夏休み明けの浮わついた空気は薄れつつあった。


二学期が始まり環境が大きく変わった。

二学期初日の騒ぎ以来クラスの連中がだいぶ馴れ馴れしくなったと感じる。明らかに、男女問わずクラスの連中に話しかけられることがかなり多くなった。

俺も意固地に避けたりするつもり等は特に無いので普通に接していた。

高畠さん曰く、「一学期の沢良木君はちょっと近寄りがたかった、と皆言っていたな」と言うことらしい。

だいぶオブラートに包んだ言い方をしてくれたが、言わずもがな、キモロン毛や暗い雰囲気からだろう。

期末には斉藤さんとも仲良くなって学校でも会話するようになったし、高畠さんや藤島とも少しではあるが関わりを持つようになった。

それも踏まえた反応なのかもしれない。


「おう、沢良木おはよう」


「あ、沢良木君、斉藤さんおはよう!」


「ああ、おはよう」


「お、おはよう!」


通学路で一緒になった俺と斉藤さんが教室へと入ると、近くにいた生徒に挨拶された。俺らもそれに返す。


今日の斉藤さんのヘアスタイルは見慣れたノーマルな下ろし髪。曇り空で少し肌寒い朝だからか。

斉藤さんの髪型は気温によって変わるのだろうか。

もちろん何にしたって可愛いのだ。


「今日も斉藤と一緒か。お前ら相変わらず仲良いのな」


こんな感じに茶化すのは藤島。

コイツはクラスの中でも元より会話を持っていた数少ないクラスメイトなので、俺らと話すのもお手の物。


「あ、いえっ、偶然通学路で会ったからっ!!」


藤島のからかいに律儀に返す斉藤さん。

赤面してあたふたとする姿が可愛い。

だけど、斉藤さん。そんな反応したら相手の思うつぼなのよ。


「どやぁ」


「いや、意味わかんねえし」


このくらい適当で良いんだよ。

まあ、本心からのどやぁだけども。

天使とお友達、十分どやぁに価するというもの。




席に着くと近くの席の生徒が話しかけてきた。

ちなみに名前はまだ無い(俺の中で)。

まぁ、クラスメイトAで良いや。


「なあ沢良木、今日の数学の宿題やったか? 良かったら教えてくれよ」


「別に良いぞ。ただ、写させないぞ。教えるだけだ」


「分かってるって」


特に断る必要も無かったので俺は頷いた。

Aは持って来たノートを俺の机に開いて置く。

それを見ていた、斉藤さんの元へ来ていた高畠さんも挙手をしている。


「あ、それじゃ私も頼む!」


「……高畠さん。写させないよ?」


「わ、分かってるよ!!」


「そ、それじゃあわたしも……」


「斉藤さんも? 良いよ。何処が分からなかったの?」


「え、えっとね……」


「なんか私の扱い雑じゃないか……? いや分かってるんだけどさ。なんかね? 後でダーリンに慰めてもらおうっ」


今日も高畠さんは絶好調だ。


数人ではあるがAを筆頭に臆せず俺とコミュニケーションを取ろうと言うクラスメイトが出てきた。

そいつらに続く様に他のクラスメイトも話しかけてくる。

今の様に勉強に関する話題が多いのは試験の順位を見たところによるのかもしれない。


斉藤さんもたじろぎながらではあるが、巻き込まれるようにコミュニケーションを取っていた。

斉藤さんの交友の輪が広がるなら、と俺も受け入れる事にした。


俺たちの二学期は一学期と比べると大分慌ただしい様相であった。






「転校生?」


ホームルームまで後僅かという頃、斉藤さんが俺に教えてくれた。

俺は一時限目の教科書を机に出すと斉藤さんへ向き直った。


「うん。さっき唯ちゃんと絵里ちゃん達から聞いたんだよ」


なんでも今期から転校生が編入するという。

確かに周りに意識を向けると転校生と言うキーワードがちらほらと聞こえる。

結構話題になっていたようだ。


ちなみに絵里ちゃんはテスト発表明けに斉藤さんに話しかけてきた生徒の片割れだ。

俺にはどちらか判別がつかないけど。


「へぇ、こんな時期にねえ。ウチのクラスなの?」


「そうみたいだよ? なんか高橋先生が話しているのをクラスの子が聞いたみたい。編入手続きで始業式に間に合わなかったとか言ってたね。女の子らしいよ」


「ふぅん?」


だそうだ。


そんなことより、俺は斉藤さんがそうやってクラスメイトとお喋り出来るようになったことの方が喜ばしい。成長を隣で見守っている気になっている俺なのだ。

お兄さん嬉しいよ。


「あんまり興味無い? 女の子だよ?」


「いや、取り立てては?」


いや、その聞き方だと俺が女の子であれば誰でも喜ぶ色情魔か何かのように聞こえるじゃないか。やめて欲しい。


まさか斉藤さんにそう思われていたの?

だとしたら生きて行けない。

斉藤さんをエロい目で見ないように鋼の精神を必死にフル動員させていたと言うのに。

世知辛い世の中である。


「そっかそっかー」


そんな俺の苦悩を知ってかしらでか何故か嬉しそうな斉藤さん。

俺は首を捻るしか無かった。


「? まあ、仲良くなれると良いね?」


「うんっ」





クラスの喧騒は時間を追う毎に大きくなっていく。

全員の意識が今日来ると言う転校生へと向いていた。

女子は新たの増える友人として。

男子は、転校生と言えば美少女というテンプレを夢見て。


そしてソイツは現れた。


がらがらと教室の引き戸が音を立てて開く。

桜子ちゃんに続き颯爽と歩く姿には皆が見惚れる。


教室の喧騒はピタリと止んでいる。


少し茶色みの強い黒髪は腰近くまでのスーパーロングであったあの頃とは違い、今はロング程に揃えられていた。

最早見慣れたと言っても良い、とても整った顔立ちにクリクリとした大きな黒色の瞳。少しつり目がちだが、気が強そうだとかそんな印象を与える程ではなく、むしろ可愛さを引き立てていた。

いや、知ってるけどさ、そんなに気は強くないって。

むしろ甘えん坊で。


それと、特に目立っていたのは服の上からでも分かる二つの膨らみ。自己主張が強すぎるそれは少し幼さを残す顔立ちとのギャップで、この子を魅力的に写すんだろう。とか初対面では考えたなぁ。


「転校生として今日からクラスの一員になる……まぁ、皆知ってるかぁ。それじゃ、自己紹介してね!」


桜子ちゃんのどこかなげやりな紹介をバトンタッチされたソイツは、はいっ、と返事をした。


「今日から皆さんと一緒に学ばさせて頂く、菅野真澄と申します。どうぞよろしくお願いいたします!」


壇上に凛と立つ美少女。

つい最近まで行動を共にしていた元人気アイドルの少女。


真澄はキラキラとしたアイドルスマイルで微笑んだ。






うそん。









お読み頂きありがとうございました。

分かりきっていた展開だと思いますが、再び登場です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ