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第79話 勉強の成果

お待たせしております。

今回もよろしくお願いいたします。








ついに訪れた期末テスト当日。

クラスの中は初めてのテストに浮き足立っている様に感じる。

ホームルームまではまだ20分程あるが、半分の生徒は机にかじりつき最後の追い込みをかけている。もう半分の生徒は余裕か諦めか雑談に興じていた。


遠目には、高畠さんが半泣きでノートと向き合っていて、それを藤島が呆れた様子で見守っている。

高畠さんは結局自分を追い込めなかったようである。

やっぱり彼女はポンコツかもしれない。初めて喋った時はその口調等が相まって、出来る女感が出てた気もするが、気のせいだったかもしれない。


俺と斉藤さんはと言うと。


「……はいっ、どうですか?」


「……うん、オッケーだ。間違いないよ」


斉藤さんから渡されたノートに目を通す。

間違いが無いことを確認すると俺は頷いた。

やった、と斉藤さんが小さく喜ぶ。

その顔には笑みが溢れていて実に微笑ましい。

俺もつられて笑みを浮かべる。


俺と斉藤さんは数学の計算問題で最終確認をしていた。

期末テストは今日1日をかけて行われ、数学、国語、英語、理科、社会の順。


周りの少しピリピリとした空気に比べると俺たちの間には朗らかな空気が流れていた。

と言うのも俺たちはこの二週間欠かさずテスト勉強を重ねてきたのだ。そのためだいぶ心に余裕がある。


毎日の休み時間、それと放課後に勉強会だ。

斉藤さんと今まで以上に時間を過ごしたお陰か、更に仲良くなれた気がする。それが中々に嬉しい。


後は勉強してきた事を本番で発揮するのみ。


「それじゃ次はわたしが出しますね?」


「ああ」


今度は斉藤さんが問題を出す、と言うことで問題を読み上げようとしたとき、その笑い声は聞こえてきた。


「「きゃはははっ」」


数人が屯している場所から不快な高笑いが聞こえてきた。その声に周りの何人かは顔をしかめている。

この大事な時間に騒ぐとは迷惑甚だしい。

その集団の中心は例の如く、松井某。

藤島曰く、あれで松井はそれなりに頭が良いらしい。

それであの余裕なのかもしれないが、周りからすればそんなん知ったこっちゃない。迷惑なことに変わらないのだ。

いい加減シメたくなるであります。


隣の斉藤さんはどこか不安げな様子で松井及び取り巻きを見ていた。


「斉藤さん」


「いえ……大丈夫です。沢良木君には沢山教えて貰ったんですから。しっかりと解きますよっ! どんと来いですっ!」


俺の呼び掛けに斉藤さんは一度かぶりを振ると、ぎゅっと小さな拳を握りしめ決意を新たにした。

その瞳には悲壮感は無く、やる気に満ちていた。

そんな彼女に俺も頷いた。


「ああ、頑張ろうな」


「はいっ」



取り巻きの中からチラリと視線がこちらに向かっていたことを、斉藤さんは気付いていなかった。


俺は努めてそれを意識の外へ追いやる。

この子が力を十全に発揮出来ること、それだけを考えるのだった。






「それじゃ、号令があるまでプリントを裏返すなよー」


手元には裏返した解答用紙。

教師の号令を待つばかり。


隣へと視線を向ける。

そこには金髪の少女。

彼女も俺へと視線を寄越した。

その表情から少しだけ緊張の色が見えるが、そこまで気負いの無い自然な笑みをくれた。


君なら大丈夫。

さあ、見返してやろうぜ。


「―――始め」


斉藤さんのリターンマッチが始まった。




―――――




「……」


先生の号令でプリントを裏返し、真っ先に名前を記載する。

名前をか書き終えるとわたしは一呼吸した。


さあ、いきますよ!!


自分に気合いを入れると早速問題に目を通す。


大丈夫。

わたし解けます。

なんたって最高の先生に教えて貰ったのですから!!


この2週間はテスト勉強の毎日でした。

休み時間を使って簡単な復習をして、放課後には図書室で宗君が作ってくれた予想問題をひたすら解く。

家に帰っても自分なりに勉強しました。

こんなにも勉強漬けの毎日でしたが、ちっとも苦しくはありませんでした。

それどころか楽しくさえあったのです。

宗君から教えて貰うと自分でも不思議な程、内容が頭に入ってくるのです。

勉強した事がしっかりと身になっている、そう感じると勉強は更に捗り、それは楽しさへと繋がったのです。


……それに、ずっと宗君と一緒に居られたのは、その……とても嬉しかったです。

内緒、ですよ?



心の中で隣の"先生"へお礼を述べ、ペンを走らせます。


「……ぁ」


小さく、本当に小さく声が漏れます。

そして、無意識にわたしの頬は緩むのです。


さっき、宗君と解いた問題だ……。


無事正解して宗君からお墨付きを貰ったのです。


わたしのペンは止まらない。

すらすらと数字が並んでいく。


テストと言うもので初めて感じる確かな手応えに、わたしは心が弾むことを抑えられなかった。





「はい、そこまで」


先生の号令に手に持つペンを机に置く。


「ふぅ」


制限時間の半分程で殆どの問題を解く事が出来、結局3周程見直しも行った。

応用問題は少し自信無いけれど、やれる事はやった。

そんな思いで胸はいっぱいだった。


「それじゃ、後ろから前に回してくれ」


いっぱい○がついて帰って来てね!と願いを込めてわたしは用紙を前へ渡した。


「次は国語だからな。準備しておけよー」


先生がそう言い残し、教室を後にすると教室はあっという間に喧騒に包まれました。

お互いにどんな手応えだったのか、友人と語り合うのでしょうか。


わたしも隣の宗君へ向き直ります。

宗君もわたしの視線に気付いたのかわたしの方を向いてくれました。


「どう、でした……?」


「大体は大丈夫かな。斉藤さんは……ふふ、大丈夫みたいだね」


わたしの顔を見た宗君はそんなことを言って笑います。


「えへへ、こんなに書けたのは初めてですっ」


自分でも分かるくらい頬は緩んでいます。

もう、嬉しくて堪らないんです。

恥ずかしいですけど、宗君に笑われてしまうのも仕方ないですよ。

それくらいわたしは浮かれていました。


「そっか。頑張って勉強した甲斐があったね」


「はいっ」


「あ、でもテストはまだ始まったばかりだからね。気抜いちゃダメだよ?」


わたしを窘める様に宗君は言いますが、宗君の表情は笑っています。いたずらっぽい笑い方で、たまに宗君がする表情です。この表情わたし結構好きです。


「えへへ、わかってますよー」


「それじゃ、次の確認もしちゃおうか?」


「はい、頑張ります!」


気合いを入れ直すと宗君と二人で国語の教科書を開くのでした。














お読み頂きありがとうございました。

やっと後一話で終わりそうです。

※閑話の域を超えてる気がするので取りますw

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