第8話 天使
引き続き8話目です
短いです
「ぁー……」
昨日は飲み過ぎた……。
昨晩、夜8時には理沙の家に帰り着いた俺たちは、そこから夕飯を食べつつ飲み始めた。
積もる話しもあり、夢中で話し込んでいると気が付けば深夜2時を回っていた。
その時間までノンストップでアルコールを摂取していたこともあり、理沙と二人してそのままダウンしてしまった。
酒に弱いわけではないし、若さ故に肝臓が頑張ってくれたおかけで酒臭さもない。
だがそれでも寝不足と軽い二日酔いでグロッキーな状態だった。
理沙にいたっては起きる素振りもなく、昨晩暑かったのか服を脱ぎ捨てワイシャツ一枚という至極目のやり場に困る格好で、俺は煩悩を必死に払いつつベッドに寝かせてきた。
その後は一度家に帰り、シャワーを浴びると時間もギリギリだったため直ぐに登校した。
教室に着くなり俺は机に突っ伏し、冒頭のセリフが出てきた。
今日は授業がつらそうだな……。
そんな事を内心独り言ちていると思わぬ声がかかった。
「ぁ、あの、……おはようございます、沢良木くん」
「へ?」
俺は間抜けな声を上げて声のする方を見た。
少し頬を染め、はにかむ金髪の天使がいた。
「……あ、ああ」
見惚れてしまい上手く言葉が繋げずにどもっていると、金髪の天使は少し心配そうにこちらを見てきた。
「あ、あの、具合、悪いですか?大丈夫ですか?」
ホントに天使だ。うん、癒される。
心配そうにこちらを覗く双眸にそんなことを思ってしまう。
これで今日は頑張れそうだ。
「いや、大丈夫だよ。おはよう、斉藤さん」
俺は身体を起こすと隣の席の金髪少女、斉藤愛奈さんに微笑んだ。
自然な笑みがこぼれ、自分でも少し驚いた。
「そ、そうですか。よかったです……」
恥ずかしそうに視線を反らすと少し俯いてしまった。
そのいじらしい仕草に心を揺さぶられる。
この愛でたい小動物感たまらない。
「……ぁ、ぇと、……ぁ……」
俺が人知れず和んでいると、斉藤さんがチラリチラリとこちらへ視線を投げ掛けながら、何か言いよどんでいたが。
ーーキーンコーンカーンコーンーー
「あ、鐘なったね。斉藤さん何かあった?」
チャイムが鳴り斉藤さんの言葉をかき消してしまった。
「ぃ、いえ、なにもっ……」
「そう?」
釈然としないまま、この日の授業が始まった。
今日は特に変わった事もなく順調に時間が過ぎていった。
一度、斉藤さんが例のメモ交換で授業のわからない所を質問してきた。
自発的にこちらへメモをくれた事と、いつもノートの切れ端だったものが可愛らしいネコを模した付箋に変わっていた事になんだか癒された。