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第64話 成果

ギリギリですが、本日もよろしくお願いいたします。

笹野さん=大次郎になります。(6話以降名字出てないので忘れ去られてるかとw)






「これは酷いわね……」


「悪質すぎるよ……」


あたしの持ってきた写真を万屋の女性方が見ていた。

理沙さんと杏理さんが、写真を目の当たりにして表情を歪めていた。


宗君の運転で万屋へ着くと、事務所で急遽対策を練ると言うことで万屋の皆が集まってくださった。

万屋へ向かう最中宗君が理沙さんへ連絡をして、そこから召集がかかったようだ。


杏理さんと笹野さんは自宅に居たところを、わざわざ駆けつけてくれていた。

近所だから気にしないで、と言ってくれたが申し訳気持ちは晴れなかった。


写真を見るに当たって、宗君と笹野さんの男性二人は理沙さんが追い払っていた。

二人は部屋の隅に追いやられて直立不動だ。


ああやって男性に見られない様に理沙さんは気を使ってくれているのだが、実は先程、宗君にはこの写真を車中で一度見せていた。


よくよく考えたら、とんでもない写真を見せてしまったと思う。頭が回っていなかった弊害だ。


普通に服来てないし。

流石に全裸は見せなかったけれど。


なんで着替えシーン見せちゃったんだろうか。

……どうしよう、死ぬほど恥ずかしい。

今になって恥ずかしさが込み上げてきたんだけど!


思わず俯き皆に顔を見られない様にする。


「ぅぅ……」


「菅野さん負けちゃダメよ」


「そうだよ! 頑張ろうっ!」


理沙さんと杏理さんはそれを落ち込んでいる事と勘違いしたのか、慰めの言葉をくれた。


すみません。違うんです。

自分のやらかしてしまった事が恥ずかしくて、俯いているんです。



でもあの時、宗君は悲痛な面持ちで写真を見ていた。


「……ごめん」


そう小さく呟く宗君にあたしは何も言えなかった。

あたしはその横顔に不謹慎にも思わず、ときめいてしまっていたのだ。

自分の事を考えてくれている、その事を強く感じてしまったからだと思う。


確かにとてつもない恐怖ではあったけれど、あたしの為に駆けつけてくれる人が居るんだ、って。

そう思うと心は挫けなかった。





「とうとう、被害が再発したわ」


理沙さんの言葉に万屋の他の面々も神妙にうなずく。

宗君と笹野さんも同じ席に着き、皆で向かい合う。


「ひとまず今、菅野さんの身はこちらで確保出来ているから、最悪の事態は免れていると言って良いでしょう」


「そうだねー、宗君グッジョブ」


「……いや、もう少しあの場に居れば菅野さんのショックも少なく出来たはずだ。最良とは到底言えない」


皆の前なので菅野さんとあたしを呼ぶ宗君が苦い顔をしていた。

あたしはそんな事を少しも思っていないのに。


「宗、そんなに思い詰めるなよ?」


「そうだよ宗君、あたしは感謝してるよ。直ぐに来てくれて嬉しかった……」


笹野さんが宗君を慰めていたので、あたしも便乗する形で感謝を伝えた。


「だ、だが……」


しかし、尚も気にした様子の宗君だった。


「宗君! あたしは宗君が来てくれただけで嬉しかったんだよ! だからありがとう!」


宗君の気が少しでも晴れる様に、あたしはいつものテンションを意識して声をかけた。

思っていることは本当なのだから。

しかし。


「宗、何であんたが護衛対象に慰められてんのよ。情けないから止めなさい」


菅野さんごめんなさい、とあたしに謝りながらも、理沙さんのいつもの優しい表情は鳴りを潜め、とても冷めた目で宗君を見下ろしていた。


「ぅぐ、……すまん」


「私に言うな。言う相手が違うでしょ。それに謝るぐらいなら、結果で示しなさい」


端から聞いていて、身のすくむ様な辛辣な言葉だったが、宗君は直ぐ様顔を上げて頷いた。

その横顔が凛々しくて、あたしはつい見惚れてしまう。


「ああ。……真澄申し訳ない。それと、ありがとう」


「あ、いや、あたしは…………ぅん」


突然自分の方へ向き直られ、そんな事を言われたものだから、しどろもどろになってしまった。

多分、あたし顔赤い。

なんか悔しい。


「宗君ってヤツは……」


はぁ、と杏理さんはため息を吐いていた。

どうかしたんだろうか。


「理沙、大丈夫だ。中断してすまない。続けてくれ」


「ええ」


理沙さんは宗君の言葉に、先程と打って変わってニコリと微笑み頷いた。

そして、膝の上で手を組むと宗君を見つめたまま続けた。


「まず、念のための確認だけど……菅野さんの荷物は?」


「車だ」


「あ、宗君に置いていけって言われて」


先程この事務所に到着した際に、宗君からそう言われたので車に置いたままであった。

疑問には思ったが、宗君の真剣な表情と耳元で囁かれた事で、あたしは頷く他無かった。


「よろしい。それじゃ……」


理沙さんはそう言うと、部屋の皆を見回す。


「私達がこの1カ月無駄に過ごしていないって所、見せてやりましょうか……」


ニヤリと口角を上げる理沙さんに万屋の面々が頷いた。



あたしはその雰囲気に飲まれかけていた。


確かに、万屋へストーカーの調査に関して依頼はした。

しかし、被害は一時とは言え無くなっていたのだ。

そして、宗君の送迎で仕事へと向かい家に帰るだけの毎日が続いていた。

その中であたしは油断しきっていた。このまま何も無く、何事も無かったように終わるのでは無いだろうか。そう感じ始めていた。

日頃顔を合わせるボディーガードの宗君でさえ、そう見えていた。

何も進展は無い、問題無い、そう言った内容を宗君の口から聞くこともあった。


しかし、その実はどうだろうか。


被害者と言う身を忘れ、言い知れぬ頼もしさに興奮している様に思う。




「菅野さん。これから話す事をよく聞いて」


あたしに向き直った理沙さんは姿勢を正した。

あたしも緩みかけた心に渇を入れると向き合った。


「……はい」


あたしも皆同様に頷く。

それを見届けた理沙さんは口を開いた。



「犯人について、よ」


あたしは、その言葉に息を飲んだ。








お読み頂きありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。

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