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第53話 モールで買い物

本日2話目、よろしくお願いいたします。








今朝、真澄に約束させられた通りモールへ買い物に繰り出した。

真澄の仕事は今朝聞いた通り昼には終わったようで、13時過ぎには御崎へ着いていた。

連絡を受け駅へ向かい、そのままモールへ来た形だ。


真澄はいつもの変装姿だ。

意外にこれでバレることは今まで無かったと言う。



真澄に聞くと、今日購入するのは日用品や食料品がほとんどだと言うことだった。


「そうすると、とりあえず1階のスーパーとかで大丈夫なのか?」


「大体はそんな感じかなぁ。あ、あとはホームセンターも行きたい」


俺はモールのメイン通りを歩きながら真澄に目的地を聞いていた。

辺りを様々な店が軒を連ねる様を横目に歩いていく。


「了解」


真澄に返事をしながらも俺の頭は自然と、先日このモールで起きた一件を思い出すのだ。


斉藤さんを探してここ走り回ったな。

あの時は人が凄くて中々見つからなかったんだ。

煌めく金髪を探すも人混みから見つける事が出来なかった。


今日は夏休みとはいえ、平日なので人はそこまで多くはないようだ。

あの日もこのくらいだったら直ぐ見つけられただろうに。

まあ、導きの小さな天使のおかげで見つかったから良かったが。

その後にスマホの連絡先を交換したんだったな。


「ちょっと食器類を買いたくてね。マンションに越してきてようやく落ち着いて来たから料理でも……って聞いてる?」


「……んぁ? 悪い考え事してたわ」


「ほんと宗君って失礼じゃない? こんなに可愛い娘と一緒に歩いていて上の空ってさー!」


少し拗ねたように口を尖らせ真澄が俺をジト目で睨む。

その表情も確かに可愛いと思うのだが。


「自分のこと可愛いとか言うヤツに俺は初めて出会った」


「だって本当だもの。少しはこの幸せの感謝してよね。あたしとショッピング出来るような状況を望んでいるファンが日本中にどれだけいることか!」


なんでそんなに恩着せがましいのだ。

お前のファンなど知らん。

それにショッピングと言ったって日用品だろう。


反論するのも面倒なので適当に流すとする。


「うわぁ、嬉しいなぁ」


見よ、このウキウキを体現した俺の動きを。


「わざとらしいっ!それになんかキモいっ」


俺の返事とウキウキ小躍りが気に入らないのか、真澄の拳が俺の脇に刺さった。

痛い。ユーモアの通じないヤツめ。

だが、理沙の拳程じゃないぜ。

こんなんじゃ、俺を悶絶させることは出来ない。

俺の腹斜筋は強いのだ。

ふはは。


あいつマジ本気で殴るんだもの。


「このっ、なんでちっとも効かないの? 結構本気でいったよ?」


「ふん、こんなんじゃ効かん。修行して出直して来やがれ」


「なんでそんなに偉そうなのかなぁ!?」


その後も真澄とああだこうだと言い合いながらスーパーのある方面へ歩を向けるのだった。





「あとは何が必要なんだ?」


「んーとね……」


顎に人差し指を当てて考える仕草をする真澄を横目に、俺は買い物カゴを乗せたカートを押して、モール内のスーパーを歩いている。

何もせず着いて歩いても良いが、手持ちぶさたなのと、真澄の買い物とはいえ女の子だけを動かすことに居心地の悪さを感じる為にお手伝いをしている次第だ。

シャンプーや洗剤、トイレットペーパー等の日用品の類いをカゴに入れていく。


これがアイドルの使っている品物かっ、なんて残念ながら俺は興奮しない。

さっきの真澄の話では無いが、ファンならこういう時に喜ぶのだろうか。

……分からん。


勿論、本来の身辺警護と言う役割を忘れている訳では無いのは明言しておく。

辺りの人間におかしな動き、視線を向ける輩が居ないか等目を光らせる事は忘れていない。

真澄の身に危険が迫った場合に咄嗟に動ける立ち位置を常に確保しながら歩く。

どれも真澄や周りの人間に気取られない程度の最低限の動きでだ。

それは現在俺の警戒度が高くないからであり、そもそもこんな所で常に気を張って警戒をしていても、俺が絶対に持たないから。

人間の集中力なんてたかが知れている。


よって、有事の際にいかに迅速に切り替え行動出来るか。警戒すべき場所を明確にする。それが重要だ。


と、昔教わった。

それを元に俺は警護を勤めるだけだ。



「あ、あとインスタントコーヒー買いたいな」


コーヒーのコーナーなら会社の買い物でよく利用するので把握している。


「ああ、それなら二つ先を曲がった所だな。……あれ、真澄は紅茶が好きなんじゃないのか?」


「ん? コーヒー好きだよ? なんで?」


「前に三人で真澄の家にお邪魔したときに紅茶出されただろ。随分凝っていたようだから、てっきり好きなのかと」


なんか蘊蓄も披露された覚えもある。

ティーセットだって立派なものだったし、こだわりがあるのだと思っていた。

しかし、真澄は首を振る。


「あー、あんなのパフォーマンスだよ。パフォーマンス。ティーセットだってお母さんのヤツだし。淹れ方は教えられたから知ってるだけ。あたしが好きなのはコーヒーで、インスタントみたいな安物でいいんだよ。それも薄く作るの」


「さいですか」


そんな見も蓋もない……。

しかし、さすがはアイドル。偶像としてのお役目を果たしていたわけだ。

あれ、なんで俺にはこんな扱い?

釈然としないよ。


まあそんなことはどうでも良いが、コーヒーに関しては俺と同じ好みだな。

ドリップだのミルで豆から、なんて凝った物よりインスタントの薄くて安っぽい感じが好きなんだ。


おい、そこ貧乏言うな。


「てことで、インスタントコーヒー買うの」


「はいはい……っと」


俺はコーヒーやお茶、紅茶が置かれたコーナーへ曲がろうとする真澄の腕を取ると自らの方へ引き寄せた。

勿論余裕をもって引き寄せたので、真澄は痛くないはずだ。


「きゃっ、何!?」


「危ないよ」


真澄が曲がろうとした先に俺が視線を向けると、二人の子供が走って飛び出して来た。

追いかけっこでもしているのか周りを見ている様子はない。


「あ……ありがとう」


飛び出した子供達を見て、真澄も状況を理解したようだ。

少し気の抜けた様子で返事をしていた。

返事を聞いて俺も手を離す。


とまあ、こんな具合に咄嗟に動けるように気を抜かず張りすぎず注意するのがプロってもんよ。

ごめん、プロ言いすぎました。

俺そんなに凄くない。


「これも仕事だ」


仕事として成立するレベルには働くけどさ。


しかし、あの勢いでぶつかって転びもすれば、ケガだってありうる。

子供に理解させるのは難しいだろうけど、親はちゃんと躾してくれ。

人気アイドルをケガさせたとあっては大変だぞ。


「……」


「ん? どこか痛かった?」


「あ、ううん、大丈夫。しかし、宗君思いの外使えるねー! 安心安心!」


人を物みたいに言いよってからに。



そう言えば水族館でも斉藤さんをこんな風に抱き寄せた事あったな。

あの時は咄嗟も咄嗟で、つい胸に抱いてしまったが。

斉藤さん柔らかかったな。それに良い匂いで。……げふん。


おっと変態チックな思考に陥る所だったぜ。

天使最高。


「そりゃ良かった」




その後も買い物を続け、ホームセンターでは家に家族用サイズしかないと言うことで一人サイズの鍋等を購入した。

買いたい物は揃ったと言うことで俺達はモールを後にすることとした。


モールを出ようと出口へ向かっている最中。

ふと、雑踏の中で俺は見覚えのある後ろ姿を見た気がして、歩みを止めてしまう。


「あれ? 今のは……」


「宗君? どうかしたの?」


俺を伺い首を傾げる真澄。

返事をするように首を振ると再び俺は歩を進める。


「いや、なんでもないよ」


見間違いだろう。

自分にそう結論付けると真澄と共にモールを後にした。



今日も変わらず、真澄のストーカー事件に関しては進展しなかった。










お読み頂きありがとうございました。

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