表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/199

第45話 噛み締めてる

本日もよろしくお願いいたします。

申し訳ありません、短いです。








今わたしは水族館にいる。

人生初の水族館は凄く楽しめている。

水族館そのものが、と言うよりはもうひとつの事実がそう感じさせている一番の理由なのだが。


手には温かく少しゴツゴツとした感触。

それを思うと胸が高鳴る。


今日わたしは密かに心に決めていた目標があった。

それは……。


宗君と手を繋ぐこと!


わたしは自分の手に視線を落とす。

そこにはわたしの手を包みこんでくれる温かい手がある。

固くて少し荒れているその手は男の人だと言うことを伝えてくるが、握り返してくれる感触はとても優しい。


えへへ。


思わず頬が緩んでしまう。

いや、最早今日はずっと緩んでいると言っても過言ではない。

嬉し過ぎて、感情をもて余している感じ。


あの、初めて宗君が我が家を訪れた夜。

大規模な停電が起こった夜。

満天の星が瞬いていた夜。

そして、初めて宗君と手を繋いだ夜。


あの時の記憶はわたしの大切な思い出。

思い出すだけで、甘く幸せな気持ちに浸る事が出来た。

だけど、人間とは欲張りなモノで、またあの時の幸せを感じたい。そんな風に考えてしまうのだ。


宗君とデートが出来る、そうわかった途端に歯止めが効かなくなってしまう。

手を繋げるように頑張る。

気が付けばそんな目標を立てるわたしがいた。


目標達成ですっ!!


無事目標を達する事が出来たわたしは再び幸せな気持ちに浸るのだった。





最近わたしの癖になりつつあるのは、宗君の横顔を見上げること。

夏休みに入ってからはご無沙汰であったが、今日はここぞとばかりに見上げている。

会っていなかった分を埋めるように。


……カッコいいなぁ。


今日久しぶりに会った宗君の変わりようには、物凄く驚いた。

ここ数年で一番の驚きだったのは確実だ。


以前までは長い前髪やメガネで表情があまり見えない姿だった。

それが今では適度な長さまで切られセットされた髪で素顔を晒している。

学校で顔を会わせていた時も、チラリと素顔が見えることもあって、整った顔だとは思っていたが実際に見たら、それはもう想像以上だったわけだ。


顔で好きになったわけでは無く宗君その人に惹かれたわたしだったから素顔がどんなでも構わなかった。

特にそんな面食いと言うわけでもないし。

そもそも恋も知らなかったわたしは基準がいまいちはっきりしていなかった。


けれど、実際は文句の付けようの無く、わたしでも分かる程の目鼻の整った顔立ち。

今だってすれ違う女性が何人も振り向く有り様だ。


上手く言葉で説明出来ないけれど、こんな彼を容姿ではなく、沢良木宗君と言う人として好きになれたことにこの上無い嬉しさと言うか自慢に思うのだ。



ふと、彼はわたしの視線に気が付いたのかこちらを向いた。

当然、宗君を見ているわたしと目が合う。


えへへ。


宗君と目が合うだけで、自然と胸が高鳴る。

自分の表情も蕩けているだろうと分かる。


わたしと目が合った宗君は一瞬恥ずかしそうに視線を泳がせるのだが、直ぐにわたしの目を見て優しく微笑んでくれる。

もうそれだけで心が満たされるのだ。


幸せだなぁ。


手も繋ぐことが出来た。

彼に笑顔を向けられている。


わたしは最上とも呼べる幸せを噛み締めるのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




水族館の見学を続け、俺と斉藤さんはショーの会場まで到着した。

俺の隣には変わらず斉藤さんが居る。


最近俺は思う事がある。

夏休みに入ってから斉藤さんとは会えていなかったが、最近斉藤さんがよく俺の事を見上げてくる気がするんだ。

思い返すと確か、あの初めて電話をした翌日、朝の通学路で一緒になった日からだと思う。

気が付くと側に居る斉藤さんが、俺を見上げているのだ。

そして目が合うと身悶えるような可愛らしい天使の笑みを俺に向けてくれる。

それからと言うもの内心、天使かよっ、と何度叫んだか数知れない。


「……」


今も俺に視線を向けているのを感じる。

正直、見られること自体得意ではないし、あまりに見られるのでとても恥ずかしい。


でも。


「えへへ」


「……ふふ」


こんな笑顔が見れるのだ。

得意じゃないとか恥ずかしいなんてものはどうでも良くなるってもんだろう?


「ショーまであと少しだね。空いているところに座ろうか」


腕時計で時間を確認すると斉藤さんを促した。


「うんっ」


俺は繋がれた小さな手を優しく握り直すと、席へ向かった。





ショーの会場は大きなすり鉢状の場所だった。

斜面に席が拵えてあり、底面が水面となる形だ。

席も見回したところ、おそらく500人程の定員を収容出来るように見えた。


俺と斉藤さんは空いている席を見つけてそこへ向かった。

既に大部分が観客で埋まり、人でごった返している。

思いの外、外周部に観客が集まり中心に近付くにつれて人が疎らになっていた。

不思議に思いながらも、俺と斉藤さんは中心に程近い空いている席に腰かけた。


「近い所空いてて良かったね!」


「そうだね。でもなんで空いているだろうな?」


この時の俺達はその理由に思い至らなかった。

少し考えれば分かる理由ではあったのだが……。




――皆様、大変長らくお待たせしました!只今よりイルカショー、開催いたします!――


天使が待ちに待ったイルカショーが始まった。












お読み頂きありがとうございました。


時間が中々取れず、執筆が進みません……

短くとも毎日頑張りますので、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ