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第41話 待ち合わせ

本日もよろしくお願いいたします。







手に収まるスマートフォンを見つめる。


おおう。

切られてしまった。

もう少し斉藤さんと電話出来ると思ったんだが。


思い返すと凄い電話だったな。

中々繋がらず絶望を味わい。繋がったと思いきや、今度は斉藤さんには泣かれるし。

最後には遊びに誘われる。


うん。

結果的に斉藤さんの色々な面を見せて貰って凄く満足だ。

なんだか、凄く友人として大事にされてる感がする。

俺だって何より斉藤さんを大事にしたいという気概がある。



しかし。


「水族館か」


これってもしかしてデートと言うものなのではなかろうか?


だとしたらヤバい。

もの凄い緊張するぞ。

なんで緊張するのか分からないが、凄い緊張する。

デートと意識すると胸の鼓動が早くなる。


よく考えれば女の子と二人で出かけるなんてそうそうあるものではない。

故の緊張か。

理沙は家族みたいなもんだから対象外だけどな。



「何着ていく?」


せっかく斉藤さんと久しぶりに会うんだ、それなりの見てくれで臨みたい。

あんまり堅い服装はあれだし、何より暑いだろう。

斉藤さんに不快感を与えない感じで……。


「あ、髪……」


切ったこと忘れてた。

これで、俺だと斉藤さんに分からなかったり、落胆されたらって昼間に気落ちしていたことを思い出したぞ。


ミキちゃんに教わったヘアセット術を最大限活かして乗り切るしかない!!




「よしっ! 寝るっ!!!」


うだうだ悩んでも仕方ない。

出来る事は限られている。

明日はその限りを尽くそうではないか。

俺の長所は思い切りの良さなのよね。

することは決まった!


「あれ? そう言えば斉藤さん9時に駅って言ってたけど、駅の何処で待ち合わせかまで言ってなかったな」


なんか速攻で切られたし。

斉藤さんのお茶目さんめ。

そそっかしい斉藤さんも可愛い。


ふむ。

恐らく現地ではなく駅なのはバス等で行くつもりなんだろう。水族館の方角的に電車は無いからな。

さすれば、バスロータリーに向かうのが吉だろう。


わざわざ聞いて恥をかかせる必要もない。


そう締め括ると、俺は明日の斉藤さんとの初めてのデートを楽しみに心地よい眠りについた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「変じゃないかな……」


スマホの画面に反射する自身を見て、変な所が無いか確認をする。

そして、時間を見る。

もう、この動作を何度しただろうか。



バスロータリーで宗君を待つ私は端からみたら、かなり落ち着きの無く見えてるに違いありません。

少しすると再びスマホを取り出して、自分と時間を確認するのですから。


でも、しょうがないじゃないですか!!

宗君との初デートなんですよっ!?


不安で不安でしょうがないんです。

宗君に変に見られないか。

可愛いって思って貰えるか……。


もう、気合いに気合いを入れました!

帽子は麦わらのカンカン帽で、ワンピースに合うものを選びました。

そのワンピースは白が基調で、左右の腰の辺りにはリボンが付いています。プリーツがついていてヒラヒラしているところも可愛いです。ポイントで襟やリボンの青色が入っているところが特にお気に入りです。

ノースリーブな所は少し恥ずかしいけれど、今日は宗君へのアピールなので頑張ります!


気が付けば再びスマホに視線を走らせるわたしが居ます。


「まだ8時半かぁ……」


ええ、分かっています。

既にここに着いて20分は経っています。


早く着きすぎたよぉ。

楽しみにし過ぎでしょ、わたし!


宗君だってそんな早く来ないでしょうし……。


「あ……」


あれ、わたしこの場所伝えたっけ?

昨日の電話の最後、デートのお誘いした時は舞い上がってしまい、なんて言ったか覚えていない。


「やってしまった……」


それに今考えると、あの時宗君はもっと話をしたい、なんて言ってくれたのに。

今になって、宗君の言葉が思い出され、なんて勿体ない事をしたのかと後悔に苛まれる。


うわぁー!!

わたしのばかぁ!!!


後悔に頭を抱えた時、その声が届きました。




「お、可愛こちゃん発見!」


「お、ホントだ」


「いいねぇ、俺らと遊ぼうよ」


「え?」


顔を上げると、柄の悪い3人組。

相変わらず汚い金髪とだらしない服装。

こんなスタイルが流行っているのだろうか。


しかし……わたしって絡まれ易いんでしょうか?


呑気な心の声と裏腹に、足は少し震えてきました。

否応なしにモールの一件が思い出されます。


「わ、わたし、待ち合わせしているのでっ!」


流される訳にはいきません。

わたしには宗君との初デートが待っているのですから。

拳を握りしめ、勇気を出してはっきりと断りました。

ですが。


「そんなのいいじゃん、放っておいて俺らと遊ぼうぜ」


「そうそう!」


全く聞く耳を持ちません。

彼らが一歩踏み出す度、わたしは後ずさります。


「も、もう来るので……」


「良いから良いから!」


わたしが断るも聞く耳を持たず、尚も近付いて来ます。

三人のその顔には嫌らしい笑みが貼り付いています。

そんな顔で女の子が着いていくと思っているのでしょうか。

宗君の笑顔なら喜んで着いていくのに。


心の中で必死に虚栄を張りますが、恐怖感は薄れません。


「し、宗君……」


わたしは手に持つスマホを無意識に握りしめていました。

それを目敏く見つけた一人がおもむろに近付くとわたしのスマホを引ったくります。


「ほら、このままキャンセルの連絡入れちまおうぜ?」


「や、やめっ……!!」


取り返そうと手を伸ばした時。




「そのキャンセルは必要ない」


突如横から現れた背の高い男性がわたしのスマホを取り上げました。

そのままわたしの横に立つと、おもむろに肩を抱かれました。

突然の事にわたしは動けなくなってしまいました。

口も開けず、声も出ません。


「待ち人の到着だ」


「なんだてめぇ……っ!?」


「っ!?」


「お、おぃ……」


絡んで来た人たちが息を飲むのが、聞こえます。

と言うか、このわたしの肩を抱く人の声って……?


「い、いくぞっ!」


一人の声がすると、他の二人も立ち去ったようです。

それと同時に抱かれていた肩が離されます。


わたしは下げていた顔をゆっくりと上げました。

そして、その顔を見つめます。


「斉藤さん、待たせてごめんね」


え? え?


その声と、その顔がわたしの中で一致しません。

混乱は徐々に増すばかり。


目の前に立つのは一人の凄いカッコいい男の人。



何度見ても髪が長く無ければ、メガネもありません。

でも、大好きなこの声は間違う訳が無いのです。



「……さ、沢良木、君?」


「ああ、お待たせ」



そう言うと、わたしの大好きな宗君が笑った。











お読み頂きありがとうございました。


斉藤さんは本当に助けがいのあるヒロインですよね。

次回沢良木君視点です。

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