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第35話 事務所の救世主

本日もよろしくお願いいたします。

申し訳ありませんが、短いです……









「仕事よ宗」


「出し抜けになんだ」


御崎高校は先日ついに夏休みに突入した。

1ヵ月にのぼる長期休暇の始まりだ。

生徒達は思い思いの休みを過ごすのだろう。

部活に精を出す者。家に籠る者。友人と毎日興じる者。将来を見据え勉学に励む者。そしてバイトに勤しむ者。


俺も例に漏れずバイトに精を出していた。

殆ど社員レベルの出勤である。

バイトの鑑だぜ。

……社員はいつ増えるのだろうか。


そんなこんなで俺は今日も大友万屋で労働力を提供していた。


昨日冷房がイカれてしまい、蒸し風呂と化した事務所で俺は机に向かっていた。

頬を汗が伝う感触をしばらく感じ続けている。

結局未だに髪を切っておらず、この髪の毛による保温効果で熱中症を発症してしまう心配が浮上してきた今日この頃である。


冷房は修理になるか交換になるか分からないが、業者は未だに来れないようだ。

最近急激に気温が上がった影響で引っ張りだこなんだろう。

自分らでやればいいじゃないと思うかもしれないが、生憎今工具が手元にない。

冷媒の配管を締めるトルクレンチとかコンプレッサーなんかは専用品だ。

作業自体は出来ても工具が無い状況では難しい。

見た感じ冷媒抜けっぽい状況なので、冷媒も欲しい。

資材の調達も考えると、結局直ぐに修理とは行かない状況なのだ。


残りの社員二人は現場に出ている。

いつだかの三丁目の山下さんの所だ。

今日は剪定ではなく、蔵の整理だかなんだか。



俺は手を止め声の主を見る。

俺と同じく机に向かう理沙は、それはそれはもうだらしなく机に突っ伏していた。手には団扇。力なく扇がれている。

暑さからかそのシャツはいつになくはだけられていた。


……普通に下着見えてるっての。

実に扇情的なお姿だ。



「言うの忘れてたんだけどね、今日クライアントがここに来るわ」


「……忘れんなよ。それで、俺に話したってことは俺に?」


「ん、実際に会って最終決定だけど、年齢とか動きやすさが適任かなーって。今はタイミンよく仕事が入ってないから皆で動くけど、宗がメインになるかな」


「ふーん」


「詳しくは聞かないの?」


「理沙が俺に適任だと言うならそうなんだろう。それに今日来るんだろ。そうすれば分かるさ」


仕事の割り振りなど人を使う事に関して理沙は一級品だ。

信頼があるから安心して仕事が出来る。

断じて、説明を聞くのが面倒ではないのだ。断じて。


「うふふ、宗に信頼されてるみたいで凄く嬉しいなっ!」


ダルそうに机に突っ伏していたが、うって変わって嬉しそうな笑みを浮かべる。

歳に似合わない可愛らしい笑顔だ。

思わずドキリとする。

悔しいっ!!


「へいへい」


気恥ずかしさにおざなりな返事になってしまった。


「うふふ。来所予定は1時間後くらいの予定よ」


俺の物言いを特に気にした様子もなく上機嫌に続ける。

理沙の言葉に壁に掛かる時計で時間を確認した。


今4時だから5時頃来るってことか。

その頃にはちょうど書類も片付くだろうから、良いタイミングか。

しかし。


「……この蒸し風呂に客入れるのか?」


「……仕方ないじゃない。壊れるなんて予想出来ないわよ」


まあ、それはそうだが。

しかし、客を迎える環境ではないな。


「窓全開にして、少しでも温度が下がることに期待しましょうか」


そう言うと立ち上がり窓を開けた。

そして閉めた。


「開けない方が涼しいってこともあるみたいね!」


「……」


「そんな目で見ないでよぅ! しょうがないじゃない!」


今回は最悪な環境でクライアントを迎える事になりそうだった。





「救世主やぁ!!」


「すごーい、涼しー!!」


「山下さんに感謝だな」


「使わないから持っていけってさー」


戻ってきた二人を含めた万屋全職員の視線は一つの物体が独り占めしている。


ゴォゴォと少しうるさいが俺らの元に冷気と言う、今最も欲していたモノを運んでくれている。

所謂、スポットクーラーと言われる代物だ。

一般人には馴染みが無いかもしれないが、工場の製造ラインなどでは、従業員にスポットで冷気を当てたりするのによく使われる。

本体その物に家庭用エアコンで言う送風機、室外機が一体化した物なので、密閉した空間で使用すると本体の稼働による熱で結局室温は上がってしまう。

よって本体は別室に置き、ホースで事務室に冷気を送る形を取る。

家庭用に比べれば幾分能力は弱いので、キンキンに冷やす事はままならないが、先程までとは雲泥の差である。

クライアントとの約束の時間まで30分はあるので、それまでにいくらかでも冷やせるだろう。


この救世主を持ってきた二人には感謝しかない。

そして救世主その物を提供してくれた山下さんには最大の称賛を。

しかしなんで持ってた山下さん。



そして、今回のお客様がやってくる。












お読み頂きありがとうございました。

仕事の関係で中々書けず遅くなるかもしれません。

申し訳ないです。

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