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第32話 攻略してみたい

本日もよろしくお願いいたします。







声がした方へ視線を向けると理沙と並びアイシャさんがこちらを見ていた。


理沙は呆れたジト目を向け、アイシャさんは何やらニコニコと嬉しそうだ。


「あんた達見てるとこっちが恥ずかしくなるわ」


ビシッとても効果音が付きそうに俺を指差す理沙。

達と言いながら俺だけ指してるじゃねえか。


「あ、連絡するの忘れてたわ。ゆるしてね!」


「うざい」


理沙の手刀が俺の脳天に落ちる。


俺の可愛さ満点な謝罪が効かないとは。

流石理沙の姐さんや。

ウィンクまでつけたのに。


「……」


俺と理沙のやり取りを呆然と見つめる視線が一つ。


「斉藤さんどうかした?」


「えっ? あ、あっ、あのっ!」


俺の声に突然起動した斉藤さんはぎこちない動きで立ち上がると理沙の正面に立った。


「さ、ささ、先程は突然逃げてしまい、も申し訳ありませんでした!!」


そう言うと深々と頭を下げた。


突然の事に理沙も面食らったようだ。

俺もびっくりだよ。

斉藤さんは顔を上げると再び理沙を見据える。


「わ、わたし、斉藤愛奈と言います! 沢良木君とはクラスメイトでいつも助けてもらってますっ、よろしくお願いいたします!」


一気に言い切ると再び理沙に頭を下げた。

頭を下げ続ける斉藤さんに、面食らっていた理沙も相好を崩した。


「ふふ、ほら頭を上げて。こちらこそよろしくね、愛奈ちゃん。私は大友理沙。宗の姉みたいな者よ」


「は、はいっ、よろしくお願いします!」


斉藤さんが凄いハキハキ喋ってる。

……なんか体育会系みたいなノリになってしまったぞ。

俺、体育会系少女☆愛奈ちゃん、とか嫌だ。

恨むぞ理沙め。


理沙はおもむろに斉藤さんを手招きすると、耳元で何か喋りだした。

それに従い大人しく理沙の言葉を聞いていた斉藤さんだったが、その顔がみるみる赤くなっていく。

その視線はチラチラと俺に向いているのが気にかかる。


俺に内緒話とか寂しくて死んじゃうぞ?


「沢良木君、愛奈ちゃんを連れ戻してくれてありがとうね?」


俺が寂しそうにしていたからか、アイシャさんが俺に話しかけてくれた。

アイシャさんは優しい笑みを浮かべている。


「いえ、感謝されるような事はしてませんよ。むしろ謝らないといけない事が起きてしまったと言うか……」


そうだ。俺が斉藤さんを追いかけるのは当然だ。

それよりその後が問題なんだ。

あのチンピラどもめ……。


「謝る?」


「ええ、理沙にも言わないといけないので、二人も交えて話したいんです」


「そういうことなら」


そうアイシャさんは頷いてくれた。





「警察ぅっ!? あんた何やらかしてんのよ!?」


「面目ない」


俺は理沙とアイシャさんに頭を下げていた。

先のチンピラとの一件を二人に説明していた。


「さ、沢良木君は悪くないんです! わたしがそんな所に行ったのが原因でっ」


「う、だけどねぇ……」


言い募る斉藤さんに理沙が言いよどむ。


「そうよ理沙さん、沢良木君は愛奈ちゃんを助けてくれたのだし、わたしとしては感謝しか無いわ」


斉藤さんにアイシャさんが援護射撃するかたちになった。

理沙も二人にそう言われては強く出れないようだ。


擁護してくれる二人には感謝したいが、斉藤さんを捕まえられなかったのは俺なわけで、その結果警察の厄介になってしまった。

原因は結局はっきりしないが、俺が一因なんだろう。

叱責は甘んじて受けるつもりだ。


「いや、俺がもっと上手く立ち回れれば何も問題なかったかもしれない」


理沙は何か言いたげだったが、しばらくすると肩の力を抜いた。


「……はぁ、そこまで言われたらこれ以上ごちゃごちゃ言わないわよ」


ため息をついた理沙は斉藤さんに向き直った。

そして微笑む。


「とにかく愛奈ちゃんが無事で良かったわ」


「むしろ帰ったらわたしからのお説教が待ってますから。うふふ……」


「ひっ……」


斉藤さんは不穏なオーラを醸し出すアイシャさんに怯えていた。


プルプル震える斉藤さん不憫可愛い。

ここは一つ言葉を手向けよう。


「……手加減してあげてくださいね」


「さ、沢良木くぅん……」


庇護欲にかられる目に、すがり付くような動きの斉藤さん。


なにこれ可愛い。

お持ち帰りしたい。


しかし、助けてあげたいがアイシャさんが怖いので、大人しく絞られてくれ。


俺は苦笑いするに留めた。






時間も時間と言うことで、今日は解散する事になった。

斉藤家はまだ買い物も始まる前に例の一件だったわけで、何も終わってないのでこのままモールでショッピングを。俺と理沙はこのモールにはもう用も無いので万屋へ一度荷物を置きに向かう予定だ。


「それじゃ、理沙さん今度ウチにいらしてね? 主人も会いたがっていたので」


「ええ、近いうちお邪魔したいと思います。宗も連れてね」


理沙は何故か斉藤さんへウィンクしていた。

それを受けた斉藤さんも何やら顔を赤らめたり、落ち着きが無いご様子。


さ、斉藤さんが攻略されている?

そんなまさか……。

理沙め、体育会系少女☆愛奈ちゃんといい、ますます許せんぞ!


嫉妬の目線を理沙に飛ばすが、本人はどこ吹く風。

くそぅ、負けを認めてやるものか。

俺だって斉藤さん攻略してみたい。


「さ、沢良木君!」


俺が脳内で減らず口を叩いていると、斉藤さんに声をかけられた。


「お? どうかした?」


「あの、今日はありがとう! 沢良木君のおかげで助かりました!」


斉藤さんは照れながらもお礼を言ってくれた。

相変わらず良い子や。天使や。


「どういたしまして。でもね、さっきも言ったけど当然のことだからね?」


「うん……、ありがとう」


噛みしめるようにもう一度お礼を口にしたのだった。

当然だか、その笑顔はパーフェクトだったぜ。





「それじゃ」


「うん、また学校で……」


別れを告げると少し名残惜しそうに、そう返してくれた。

その姿にキュンとしちゃうじゃないの。


しかしいつまでもぐだぐたしている訳にもいかないからな。

心を鬼にしてさようならだ。




っと、一つ忘れてた。


遠ざかる斉藤さんに声をかける。


「斉藤さん!」


「え?」


俺の声に斉藤さんが振り向く。声をかけられた事に少し驚いた様子だったが。

俺は斉藤さんに伝えたかった事を言葉にする。


「後で連絡するね」


俺の手には新品のスマートフォン。

それを掲げ、斉藤さんに見えるように振った。


こちらを見ていた斉藤さんは俺の言葉を聞くと満面の笑みを浮かべた。


「うんっ、待ってるね!」


手を振る斉藤さんに満足し、モールを後にしたのだった。





「……本当に胸焼けするわ」


「なんか言った?」


「いいえー、何でも無いですよーだっ!!」


突然子供っぽくなる理沙に疑問符を浮かべる俺だった。




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