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第20話 親娘の会話

本日2回目の投稿です。

よろしくお願いいたします。





「この二人何してるの?」


「そうねぇ、男の子には男の子の仲良くなる方法があるのかもね? 男の子はいつまでも男の子だから」


「?」


未だに握手し続ける夫と娘の友達をわたし達は見ていた。

娘はそんな二人の様子をとても不思議そうに見ている。


ふふ、愛奈ちゃんが男の子連れてくるなんてね!

ママとしてはとっても嬉しいな。

あの子が沢良木宗君かぁ。

いつも愛奈ちゃんが話してくれる学校のお友達。

いつも助けて貰ってるって言ってたしね。

お礼もしないとなぁ。


男の子二人を尻目に愛奈ちゃんへ話しかける。


「ねえ、沢良木君さえ良ければ夕飯食べていって貰ったら?」


「あ! うん! そのつもりで来て貰ったんだ! ……良かったかな?」


わたしが言ったのに、少し心配そうな様子の娘に笑いかける。


「もちろん! 腕によりをかけて作らないとね!」


「うん!」


愛奈ちゃんは満面の笑みで頷いた。


「でも、ちゃんと沢良木君の用事聞いてね」


「あ、そうだった。聞いてみるね!」


ふふ、そそっかしいのは誰に似たんでしょうね?



所変わってキッチン。

沢良木君は問題無いと言うことで、わたしと愛奈ちゃんで夕飯の支度です。


愛奈ちゃんとキッチンに並んで料理するのはわたしの一番の楽しい時間。


昔は包丁の持ち方でさえ危うかったのが、今ではもう立派に一人前と言える。

日々料理の腕前が上達していく様子を間近で見ていられるのはこの上なく幸せだ。


特にここ最近は料理を張り切っているように見える。

毎日話を聞いていて、薄々は気づいていたけれど、今日の様子を見て確信する。


今も鼻歌混じりで料理をしているしね。

たまにチラリと男の子達がいる部屋の方へ視線を投げ掛けると、嬉しそうに微笑む。


もうっ、可愛いんだから!!!


料理中じゃなければ抱き締めているところだ。


「ふふ、愛奈ちゃんご機嫌ね?」


「え? そうかな?」


そう言うが、顔には笑みが浮かんでいる。


「沢良木君、美味しいって言ってくれるといいね?」


「うんっ! ………って、それはっ、その!」


顔を真っ赤にしてあたふたし出す愛奈ちゃん。


「ふふ、愛奈ちゃん可愛いんだから」


「そ、そんなんじゃ無いってば!!」


「そうなの?」


「そうなの!」


「あ、でも、ちゃんと胃袋掴まないと、誰かに取られちゃうわよ?」


「だーかーらー!」


真っ赤になって反論する愛奈ちゃんの姿に、ふと自分の昔を思い出す。


夫は今ではあんな見た目だけど、学生時代はイケメンと言っても過言でない様相をしていた。

背は高いし、優しいし中々モテていた。


夫は留学で日本を訪れていたわたしに優しく接してくれた。

右も左も分からず、あまつさえ日本語もあやふやだったわたし。

夫は日常会話程度の英語を話せたことで、わたしの世話役を買って出てくれた。

わたしが夫に惹かれるのはあっという間だった。


そんなあるとき、夫のお母さんから言われた言葉だった。

当時、お義母さんとお義父さんはこのお店を切り盛りしていた。そこにお邪魔したときだ。

今では気ままな隠居生活だけどね。


「おばあちゃん、パパのお母さんね。昔おばあちゃんにわたしもそう言われたのよ?」


「え、おばあちゃんが?」


きょとんとした顔で聞き返す愛奈ちゃん。


「ええ。パパの昔の写真見たことあるでしょ?」


「うん。あれは反則だよね」


その写真を思い出したのか、微妙な笑い方になっている。


「ふふふ、ね? パパ凄くモテてたから、わたしも大変だったんだよ?」


「そっかぁ……。今じゃ見る影も無いけどね?」


「そう? 今でもわたしは大好きよ?」


惚気るわたしに、相変わらずだなぁ、と愛奈ちゃんは言うと、よしっ、と気合いを入れた。


「それじゃ……わたしも頑張ろうかな」


「うん、その意気よ」


わたしはそう笑いかけると、愛奈ちゃんと二人で料理の仕上げにかかった。


後ろでは男の子達の声が聞こえていた。


店の厨房を片付けていた夫に、沢良木君が手伝いを買って出てくれた。

それが終わって居間に戻ってきたのだろう。


ガヤガヤと言い合う二人の声が聞こえた。


「ふふ、男の子は仲良くなるの早いわね?」


「え? あれは仲良いの……?」


愛奈ちゃんは心底不思議そうな表情だった。


「あ、でも沢良木君があんなに声張っているの初めて聞いたかも」


「パパも楽しそうよ?」


「あはは、それなら仲良いのかな?」


「ふふふ、かもね」


料理も佳境。

残すは盛り付けぐらいなものだ。


「沢良木君良い子ね?」


「う、うん。いつも助けて貰ってる。……正直に言うとね。沢良木君が居なかったらわたし学校がつまらなかったかも……」


愛奈ちゃんの言葉に胸の詰まってしまう。

愛奈ちゃんの様子から、少しは分かっていた。


この子が上手く馴染めていないかもしれないってことに。


家ではとても明るく振る舞ってくれるので、つい見逃してしまいそうになるけれど、ちゃんと愛奈ちゃんを見ればわかる。


「だから、わたしは沢良木君にお礼がしたかったんだ」


それがどうだろうか。

ここ1ヶ月の愛奈ちゃんは。

今まで以上に眩しい笑顔を振り撒いてくれる。

これが本当のこの子の魅力なのかと親バカながら思うのだ。


だから一層あの子、沢良木君には夫共々感謝している。

夫は恥ずかしがって言わないだろうけどね。


わたしは愛奈ちゃんの可愛い反応を見たくて、再び話題を掘り返してみる。


「そっか、沢良木君にママも感謝しなくちゃね。……それでー、愛奈ちゃんは沢良木君のどこが好きなの?」


「ふぇ? ……すすっ!? ……す、す、好きと言うか、宗君はお友達だし! いつも一方的にお世話になってるので、たまには恩返ししたいなーっていうか! なんていうか!」


顔を真っ赤にしてしどろもどろな愛奈ちゃん可愛いわぁ。

食べちゃいたい。


宗君、だってさ!

うん、満足満足!

可愛い我が子の照れる姿で充電完了ね!


「ふふふ、それじゃ、料理盛り付けちゃいましょうか? 運ぶわよー?」


「あうぅ……」


未だに真っ赤な愛奈ちゃんを尻目に料理を運ぶ。

愛奈ちゃんもすぐに盛り付けると追い付いてきた。


居間のテーブルに料理を並べていく。

並ぶ料理に男の子達は目を輝かせた。


「あれ? 斉藤さん顔赤いけど大丈夫?」


目敏く真っ赤な愛奈ちゃんを見つけてしまった沢良木君が問いかける。

女の子の様子に気が付く所は加点ね。

でも言うタイミングとかは頑張らないとねー。


「だ、大丈夫だよ!? 気にしないで!!」


尚も顔を真っ赤にさせる愛奈ちゃん。

それを不思議そうに眺める沢良木君。


若いって良いわね!!


自分も久しぶりに俊君に甘えたくなったのだった。








アイシャさんと愛奈ちゃんのお料理回でした。

また明日もお願いいたします。

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