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第172話 機材運搬であれこれ

一週間空いてしまった(^o^;)

よろしくお願いします。










 準備も大詰め、今日は文化祭準備に充てられた6時限目を、機材運搬の時間に使っていた。

 各クラスへと割り振られたパーテーションや机等、運び方をしていた。

 重量物の運搬は当然、男子の仕事である。俺も例に漏れずせかせかと働いていた。


 俺達男子は体育館に来ていた。と言うのも、文化祭の時クラスで使える機材はこの体育館に保管されている為だった。機材の使用予定が文化祭開催まで無い為、運搬の許可が出たのだ。


 ウチのクラスは完全分業ってことで、この場には男子が、教室や多目的室側には女子が詰めているため、この場には斉藤さん達の姿は無い。


 他のクラスはそうでも無い様で、女子も運び出しに参加しているようだ。若干危なっかしく感じてしまうのは余計なお世話だろうか。


「佐々木と大谷、田中と鎌田はそのパーテーション。パーテーションは一つずつな。重いから。山崎、高橋、早坂、加藤、佐藤、岡崎はそっちのテーブルだ。テーブルなら2つ重ねてもさほど重くないから問題無い。取り敢えず転ばないように気を付けてな。急がなくていいぞー」


 俺は周りの男子に指示を出していく。そして、俺の指示に口々に返事をする男子達。


 何で俺がこんなことをやっているのかと言うと、単純に運営委員である佐伯さんのご指名だからである。男の運営委員である横山は他の作業があると教室に残らせられていたから、現場の責任者に任命された次第である。


『なんとなく指示出すのとか慣れてそうだし、多分誰も文句言わないわよ』


 と言う佐伯さんの言葉に他の男子が頷いていた。


 何を根拠に、とは思ったが別に断る理由もなかったので、二つ返事で頷いた。

 実際、バイトの現場では指示を出す側にもなるので、慣れていると言えば慣れているのだ。


 安全最優先に、労災ダメ絶対。


 仕事じゃないけけど!


「よし藤島、俺らもいくかー」


「おう」


 藤島と二人、大型のパーテーションを持ち上げる。

 長身で立端の良い俺らは、もっぱら大型、重量物専門である。まあ、しゃーないね。


 えっさ、ほいさ、と体育館の出口へと向かっていく。


 ……勿論そんな掛け声は掛けていないが。


 そんな時、俺の視界に気になる光景が映った。


「……わりぃ、藤島。少し待っててくれねぇか」


「ん? ああ、ここで良いか?」


「ああ」


 俺はそれだけ藤島に伝えると、持ち場を離れて"気になる所"に向かった。


「うわ、やべっ……!」


 向かう俺は次の瞬間に全力疾走に切り替える。


 俺の視界の先にあったのは"ゆっくりと傾き始めたパーテーション"。


「間に合えよ!」


 そのパーテーションを支えていたのは二人の女生徒。可動式の足が災いし支えを失ったパーテーションはその二人へとゆっくりと倒れていったのだ。


「「……きゃ!?」」


 遅れて気付いた女生徒は驚愕を顔に浮かべるが、咄嗟の行動が出来ずに固まっていた。


「っとおぉっ!?」


 二人が下敷きになる、その直前に俺の身体が間に合った。俺はパーテーションの下に身体を滑り込ませ支えた。


「はぁ……セーフ」


 視線を巡らせ、二人の女生徒に怪我が無さそうな事を確認し、安堵のため息を吐いた。

 俺はパーテーションを立て直し、支えると二人に声を掛けた。


「大丈夫か?」


「は、はい……大丈夫です」


「あ、ありがとうございます」


「良かった」


 二人の返事を聞いた俺は安堵から近くに居た娘の方へ微笑みを向けた。


「っ……!」


 何か恥ずかしかったのか視線を逸らされたのは、パーテーションの後方を支えていたメガネを掛けた地味目な娘だった。


「取り敢えず、これはキャスティングミスだな。女の子が持つような代物じゃあねぇだろ」


「あ、あはは、そうですよね……」


「いや、笑い事じゃないんだが」


 苦笑いを浮かべるのは前方を持っていた娘だ。


「あれよあれよと、気付いたらコレ持たせれてて、あはは……」


「それで怪我がしちゃ世話無いだろ……」


 俺は周りに視線を巡らせて二人に問いかける。


「クラスメイトは? 男子だと良いんだが」


「あ、その辺りです」


 その娘が指す方を見れば、パイプ椅子を台車から運び出している男子達が居た。


 重量物を女子に任せて自分等が軽いの、ってアホじゃねぇの? いや、そもそもこう言う運搬系は男子に……って他のクラスの事にとやかく言う資格は無いか。


 口には出さないが、内心そんな言葉が巡っていた。


「おい! そこのパイプ椅子運んでる男子!」


 俺は件の男子達に向かって声を張り上げる。つい、采配の不甲斐なさに対する棘が声に含まれていたかもしれない。


 俺の声に気付いたらしい男子が二人、こちらに向かってきた。そのうち一人は俺の脇に居る、地味っ娘に少し驚いているようだった。


「彩、どうかしたのか?」


 地味っ娘の名前は彩らしい。彩ちゃんに質問を投げ掛けたあと、俺に訝しげな視線が刺さった。


「あ、孝ちゃん……えっと」


 この男子は孝ちゃんらしい。どうでも良いけど。


「今、この人に助けて貰っちゃったんだよ。パーテーション倒れる所でさー」


 前の娘がフォローしてくれたことで、話が通じたようだ。


「そんなわけなんだわ。女子じゃあパーテーションはちょっと無理があるだろうから、男子変わってあげてよ」


 事を荒らげたい訳でも無い俺は、当たり障りの無い口調で話しかけた。


「ああ、そう言うことか。申し訳なかった、助けてくれてありがとう。こっからは俺らが変わるよ」


 俺の話に快く応じてくれた彼。案外孝ちゃんは好青年のようだ。


「それじゃ、よろしく頼むよ」


 俺は男子達に支えを引き継ぐと、一人待つ藤島の方へと戻った。


「おう、大丈夫だったか?」


 一部始終を見ていたらしい藤島が聞いてくる。


「ああ、怪我が無くて良かったよ」


「そうか。でもパーテーションは女子には無理だろ」


「ホントな」


 藤島も俺と同じ事を考えたらしい。


「二年生だったな。どこのクラスかな」


 どうでも良さげな口調で口にする藤島。適当な話題なのだろう。


「って、二年生?」


「ああ。気付かなかったのか? タイの色が違ってただろ?」


「あーそういう。普通にタメ口きいてたわ」


「色々とお前らしいな」


 面倒だから一言で済ましたな藤島くん。





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





「……っと」


 俺は彩からパーテーションを受け取り、クラスメイトと運ぼうと持ち上げた。


「悪かったな彩、気付かなくて」


「……あ、ううん……大丈夫」


 普段からハキハキと喋るタイプではなかった彩だが、いつもに増して歯切れが悪い。


「とうかした───」


 彩の様子に首を傾げる俺だったが、俺の言葉は彩の親友の麻美に遮られた。


「何あのすっごいイケメン! あんな人この学校に居たんだね! ねっ、彩!」


「う、うん、凄くカッコ良かった……」


 はっ!?


 あの彩から『凄くカッコ良かった』なんて言葉が!?


 昔から引っ込み思案で、そんな言葉を口にするなんて想像も出来ない。もしかしたら初めてかもしれない。俺にだってそんな言葉……って俺は良いんだ。

 未だにあの男子生徒が立ち去った方を見ている幼馴染みに、妙な胸騒ぎを覚える。


「やっぱり先輩かなぁ。颯爽と現れ助けてくれて、背高いし凄く大人っぽかったし、イケメンだし」


「い、イケメンは関係無いと思うよ。でもタイも着けて無かったから学年分からなかったね」


「そうそう。ラフな感じがまた良かったね!」


 俺もタイ外しているんだけど……いやいや、男子の殆どはこの暑い時期には外しているんだけど。


 くっ、これがイケメン補正だとでも言うのか!?


 確かにカッコ良かったよ!? 男の俺から見てもさ! 自然と助けに入れて、恩着せがましく無いし、去り際も爽やかで……チクショウ!!!


 これがこの世の理不尽ってヤツか! 


「ちゃんとお礼言えなかったな……また会えるかな」


「そだねー……え、何々!? 彩、そんなに気になっちゃったの!?」


「ええっ!? そんなんじゃ無いよ? ただ、ちゃんとお礼したいなってだけで……なんでそんな目で見るの!?」


「うんうん、分かってるってー!」


「絶対分かってない!」


 二人のやり取りを俺は呆然と聞いていた。お礼を言って離れる二人に俺は生返事しか返せなかった。


 チラチラと彩の視線が俺に向いていたことも分からなかった。





















フラグ回。

何のフラグとは言ってない

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