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第16話 沢良木宗君

引き続きよろしくお願いします。

「え、沢良木が自分から喋ったぞ……?」


わたしはポカンと彼を見ていた。

あるいは羨望だろうか。

自身に満ちたその姿勢に。


「沢良木君?質問って?」


わたしはようやく知ることになる。


わたしを救ってくれた彼の名を。


さわらぎ、しゅう。

沢良木宗。

沢良木、宗君。


その名を胸の中で呼んだ。

すっと胸に染み込むようだった。


わたしは気を取り直して、沢良木宗君と先生とのやり取りに意識を向ける。


「先程、不正解と仰った最後の問題です」


「んー、斉藤さんが回答した問題かな?」


「ええ。どこが間違いなのか教えて頂きたく思いまして」


「あー、それね!んーと、ね」


先生はわたしの解答の横に書いていきます。


「…そこです」


が、宗君がそこで先生にストップを掛けました。


「え?」


「この問題なんですが、次章の解き方が組み込まれている応用問題のようです。なので、普通に解こうとしても恐らく間違うよな引っかけ問題なのでは無いでしょうか?」


宗君の言葉にわたしが驚きました。

え、これ次章の内容なの!?

……どうりでわたしには解けないわけだ。

そんな問題を指名した先生には少しだけ怒りが湧いた。


「あっ、ほんとだ!沢良木君の言う通りだよ!」


ぱっと顔を輝かせると、今度は申し訳なさそうな表情でわたしを見た。


「斉藤さんごめんなさい、彼の言う通りわたしの回答が間違っていたわ。正解だよ!」


「い、いえ、大丈夫です」


怒りが湧いたとしてもわたしがそれを伝えられる訳もありません。


「沢良木君も指摘してくれてありがとうね」


「いえ」


と言うよりも、今のわたしにはその感情をもってしても敵わない、そんな感情で胸が一杯です。


「ふぅ」


宗君は席に着くと、ひとつ息を吐いた。

その姿を見つめていたわたしに気付くと、こちらを向いてくれた。


わたしは嬉しいやら、恥ずかしいやら感情がごちゃごちゃになりながらも、笑みを浮かべていた。


最後に学校と言う場所で笑顔を浮かべたのは、一体いつだろう……。


そう考えると無意識に笑みは深くなっていた。


「……」


一方わたしを見ていた宗君はきょとんとしている。

心なしか顔が赤いような……?


「……?」


わたしが疑問に思っていると。


「……これは、癒しだな」


「え?」


宗君が何か呟くが、小さな声で聞き取れなかった。

宗君はかぶりを振ると少し頬を緩ませた。


「いや、正解して良かったね」


「うん!ありがとう!」


無意識にそんな言葉が出ていた。

それに笑みも。


……初めて、口でお礼が言えた。


それが、堪らなく嬉しかった。

でも、これは言わなくてはならない。


宗君が居たから答えられた。

宗君が居たから笑顔になれた。

宗君が………。


あ、でもこれは呼べないや……。




「でも、教えてくれたのは沢良木君ですから」



宗君。


この呼び方は胸の中だけ、だね!



とりあえず愛奈ちゃん編は終わりです。

次から本編に戻る予定です。


もし要望があれば、中庭の話しも書くかもしれません。入れられるのは先かもしれませんが。


明日の午前中には投稿を開始したいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。


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