第143話 通学路のお話し
短いです(ヽ´ω`)
「ううう、あたしだけ仲間ハズレ……」
その後、藤島とも合流した俺達は4人で教室と入った。そんな俺達に投げ掛けられた恨めしそうな言葉は真澄さんのモノ。
「ま、まぁまぁ真澄ちゃん……」
珍しくどんよりとした真澄の様子に、ポンコツ少女もたじたじだ。
日直の関係で俺の1本早い電車に乗ったらしい真澄は、そのまま早く学校に着いたようだ。電車で一緒になったクラスメイトとお喋りしながら来たようだったが、とりわけ仲の良い斉藤さん達"いつものメンバー"と一人だけ一緒じゃなかった事が悔しいらしい。
「ってのは置いておいて……。おはよ! 美里!」
切り替えた様に笑顔を弾けさせると真澄は言った。流石は元アイドル。スイッチの切り替えが素晴らしい。
「う、うん、おはよう真澄」
「やっと登校ね! 待ちくたびれたわよ?」
「ふふ、ごめんなさい。……皆も、これからよろしくお願いします」
改めて皆を見回し頭を下げる松井に、それぞれが笑顔で頷いたのだった。
先程の話に戻る真澄。
切り替えて無いんかい。
「まあ、普段一緒にならない子達とお喋りしながら来れたのは良かったんだけどさー」
いつものメンバーが勢揃いの中、一人だけ仲間ハズレだったのがよっぽど不満だったらしい。俺は唇を尖らす真澄の様子に思わず笑ってしまう。
「あー、何笑ってるの宗君!?」
可愛げがあって、と言う意味だぞ? 不幸を笑っている訳じゃねえよ。そこまで腐ってねぇわ。
「いや、なんでも?」
まあ、素直に白状するのも癪なので、適当にはぐらかす。
「むー」
「あはは。んー、わたしのお家商店街だから、真澄とは坂の入口でしか合流出来ないもんねー」
頬を膨らましてむくれる真澄に、笑いながら斉藤さんがフォローを入れた。うん、良い子。
「そうなのよー」
「私とダーリンも坂の入口合流組みだしなぁ」
高畠さんが腕を組みながら会話に参加する。
「だからダーリンって……はぁ、もういいや。……俺達は斉藤とも沢良木とも方向が違うからな」
「そうそう諦めが肝心だぞ、ダーリン!」
「……はぁ」
見慣れた掛け合いに生暖かい視線が集中する中、斉藤さんがポン、と手を叩いた。
「それなら、真澄が坂の入口に着く時間にわたしも着く様に家を出発するよ!」
「ホントっ!? 愛奈優しい! ありがとう! どこかの冷たいイケメンとは違うなー」
「なんで俺を見るんだよ?」
ジト目の真澄が、先程のやり取りの事を言っているのは分かっているが、俺はとぼける。特に意味は無いけどさ。
「べつにー?」
「ぁ、あはは……。でも、わたしもお友達と一緒に通学したいからね!」
再びフォローに入る天使さま。うん、良い子だわぁ。
「よし! 明日から、だよ!」
「うんっ」
「わっ、私も、良いかしら……?」
「美里?」
「うんっ、もちろんだよ!」
「そ、そう、ありがとう……」
どこかホッとした様子の松井。自ら歩み寄ろうと言う気持ちが、たどたどしいながらも見て取れる。
「あー! それなら私もだ! 私も! 私も合わせるぞ! 今度は私が仲間ハズレじゃないか! 私が寂しいぞ!?」
高畠さんの言葉に皆から笑い声が漏れる。
高畠さんも名乗りを上げた事で、女子は皆仲良く登校する約束を交わしたようだ。
「さ、沢良木君は……?」
「俺?」
話が纏まりかけたと思ったが、斉藤さんからの疑問が俺に投げ掛けられた。
「あー、そうだよー。そう言えば電車で宗君に全然遭遇出来ないんだけどー?」
俺は珍獣か何かか?
「遭遇ってお前な……。電車で会えないのなんてたまたまだろ? 何両もあるし、乗る駅も違ければ同じ車両に乗らなきゃ会えないだろうさ。何より、通学中の生徒で一杯だ」
「そりゃあ正論だけどさー! ぶーぶー! やっぱり宗君冷たいよー!」
「ふむ……。そんなに言うなら乗る車両を合わせるか? そうすれば一緒に通学出来るだろ。朝連絡するからさ」
RAINで連絡すれば簡単だしな。先程からかった事へのちょっとした詫びだ。
「「「えっ」」」
「ん?」
軽く放った言葉だったが、その言葉に対する反応が思いの外大きかった。
そんなに反応する話だったか?
そして、何故か松井まで身を乗り出していた。
「ホント!? やったー! 宗君と朝一緒に――――ふぎゃっ!?」
喜び跳ねる真澄だったが次の瞬間には、元アイドルとは思えない声を出しで引っ張られ連れ去られた。斉藤さんに。
……斉藤さん、結構アグレッシブだなぁ。
「ま、真澄ズルいズルい! わたしだって宗くんと電車通学したいもん!(コソコソ)」
「そ、そんなこと無いしー? だってしょうが無いでしょ? 愛奈は電車通学じゃないし(コソコソ)」
「むぅぅぅー! わ、わたしも電車通学する!(コソコソ)」
「んな無茶なぁ……(コソコソ)」
少し離れ何やらコソコソと話し始めた二人だったが、高畠さんは何食わぬ顔で藤島と喋っていた。
スルーで良いのかよ? と思ったが。
「さ、沢良木は電車通学なのよね?」
松井に話しかけられた。
「ん? そうだけど?」
「沢良木の家って、私の家と近かったわよね?」
「ああ、そうだな?」
「そ、それなら、乗る駅も一緒だと思うの!」
「まあ、そうだろうな」
少し力んだ様子で語る松井。何が言いたいのかよく分からない。
「あ、朝、同じ電車になるかもね?」
「そう言う事もあるだろうな」
「だったら、学校までいっしょ――――ぎゃっ!?」
何か言いかけた松井は、先程の真澄と同じ様に引っ張られていった。
「「美里ちゃん? ちょっとお話ししようね?」」
斉藤さんと真澄に。
一体何なんだか?
「ち、ちょっとした冗談じゃない。冗談よ!」
「「へぇ?」」
「ひっ!?」
「「この間の言葉は?」」
「ほ、本当ですっ!」
「「なら良いよ?」」
「「は、はいぃぃ!」」
こと、宗に関して序列が決まった瞬間だった。
「で、でも、たまたま電車で一緒になったらしょうが無いのかなー、なんて……あはは……」
「「ん?」」
「う、ううう嘘ですっ! はい! なんでもありません!」




