第10話 中庭
引き続き10話目です
少し短いです
一度一階へ降り、外履に替え中庭に到着した。
教室棟に左右を挟まれ見上げれば学食棟も見える。
しかし、庭と呼称が付くのも頷ける。
テニスコート程の面積一面を芝で覆われ、外周には植木が並ぶ。
芝生の中央には東屋があり休めるようだ。
「へぇ、確かにここは良いね。緑は多いし、リラックス出来そうだね」
「えへへ、良かった」
斉藤さんはお気に入りの場所を誉められてか嬉しそうだ。
たまに斉藤さんが昼を過ごす場所だという。
「じゃあ行こうか」
俺はそう言って東屋へ向かって歩き出すが、すぐさま斉藤さんに止められてしまった。
「あ、その、こ、こっちなんです。東屋は真ん中で目立っちゃうので……」
なるほど……。
そうだよな。あんまり目立ちたくないもんな。
教室の居心地が悪くてこういう所に来ているのかもしれない。
そこまで頭が回らなかったな。
「この外側の植木の間にベンチがあるんですよ。……ほら」
斉藤さんの後に続き芝生の外側にある植木に近付く。
すると確かにベンチがあった。
植木と植木の間にはこのようなベンチが等間隔で置いてあるらしい。
「ここ、他のベンチと違って校舎の窓がほとんど見えないんです。なので、気兼ねなくご飯が食べれます」
えへへ、と可愛らしい笑みを浮かべるが、どこか陰りがある笑みだった。
俺はそんな斉藤さんの姿に思わず拳を握っていた。
それを悟られないよう俺は平静を装い会話を続ける。
「あ、本当だ。昼寝なんかには持ってこいじゃないか?」
俺はベンチに座ると悪戯っぽい笑みを意識しながら斉藤さんへ話しかける。
「ふふ、確かにお昼寝してても見つからないかも」
でも、サボりはダメだよ?と陰りの消えた笑みを見せてくれた。
「でも本当にここで休めたら気持ち良さそうだね。最近暑くなってきたし」
「そうですね。寒くなったら来れませんけど、今はわたしのお気に入りです」
ニコリと微笑む斉藤さんに俺は隣を勧める。
「お、お邪魔します……」
斉藤さんは少し顔を赤らめて俺の隣に腰を下ろした。
俺達はベンチに座ると揃って昼食を広げた。
まあ俺はビニールに入ったおにぎりだけど。
「斉藤さんはいつもお弁当?」
自分のおにぎりを食べながらお隣さんの弁当を見た。色とりどりでとてもキレイな出来映えだった。
普通に旨そうだ。
「はい、基本的には。……これでも自分で作るんですよ?」
「え!それ自分で?凄い上手だな……」
えへへ、と恥ずかしそうに、だけれどどこか誇らしげに笑った。
「さ、沢良木君はいつも購買、なんですか?」
自分から問いかけてくれることが地味に嬉しい。
「まあ、いつも買ってるね。購買とかコンビニとか」
「そうなんだ……」
「だけどコンビニだと高いから購買の方が助かるかな。あの通り安いしね」
手に持っているおにぎりを掲げる。
「ふふ、確かに安かったですね」
斉藤さんの自然な笑みに癒された。




