「みんな違ってみんないい」という言質について
「みんな違ってみんないい……って、んな訳ないでしょ」と、常々私はそう思っていました。
みんながみんなそれぞれ違う人間なのはごく当たり前の話です。同じ人間は二人といません。
そこはいいも悪いも関係のない、ただの事実なので一向に構いませんけれど、みんなが違うという一面的な事実を盾に「みんないい」と言い切ってしまうところ。そこにこの言質に潜む大きな飛躍と妄想が見受けられます。
確かに人間は一人一人違いますけれども、見方を変えれば人間の基本設計はだいたい「みんなおなじ」ように出来ています。
人間の目は二つあって、鼻の穴も二つ。手足の指は左右に五本ずつの計二十本。あと遺伝子関係とか云々、等々。
それでも先天的に指の数が一本多かったり少なかったりとか、それぞれのパーツの大きさや色、形、配置などに少々の個体差は認められますけれど、やはり人間の肉体面はみんなだいたい同じように出来ています。
実は心臓が胃の働きをしていたり、脳が足のつま先に位置している人間は(ほとんど)いません。
以上の事実から人間の肉体面における些細な違いだけに限って言えば「みんな違ってみんないい」という言質にもそこそこの妥当性は認められます。
しかし私が「(んな訳ねーだろ)」と問題視しているのは、こと人間の「心」についてです。
こと精神面において「みんないい」と安易に全肯定することは、絶対的に間違えていると私は結論しているからなのです。
ここまでで察しのいい方々ならば、すでに私が何を言いたいのかを察して頂けていると期待しますが、もう少しくどくどと説明を続けます。
「みんな違ってみんないい」という言と同じベクトルでもう一つ、「ありのままの自分でいい」という言質にも私は同様に「否」と答えます。
現在、私たちの誰もがもつとされる人間の心という現象は、質量的にも光学的にも科学的、客観的な観測は出来ていません。
だから私たち人間は基本的に他人の心や自分の心というものの、本当のところがまるで分かっていません。
ですが、本当は分かっていないけれど分かったような顔をして、普段の私たちは図々しくも誤魔化しながらのうのうと生きています。無論、私にもそういう唾棄すべき卑怯なところが多々あります。
しかしだからと言ってこうした悪癖をそのまま放置していてはこれ以上お話になりませんので、分からないのなら分からないなりに何とかしなければならないと私は考えるのです。
そして私たちが「心」というものを本当に理解したいと欲するならば、やはり自分の心を使って調べる他ありません。
その心の一機能である自らの「主観」を使うしかありません。と考えます。
そして問題はこの主観(性格や人格という言葉に置き換えても可)だと、私は考えました。
主観とはあまり当てにならないものとの意見が世間では大勢を占めています。私もそれはそうだと身に染みて同意するものです。
しかし私が今現在把握しているこの世間では、この当てにならない主観というものを一体どうすれば少しでも良く出来るのか? そういうところにまでは全く踏み込めていません。
それでは私が困るので、私は私なりに踏み込みます。
まずは何故、主観とは当てにならないのか。
それは個人がもつとされる心。すなわち主観の熟練度や成熟度によって、とてもとても大きな性能差が存在するからだと考えました。
そして私を含む世間一般の平均的な主観の傾向とは……好き嫌いばかりで、わがままで、嘘吐きで、自分勝手で、弱虫で、卑怯者で、臆病者というバイアスのかかった大変愚かなものが大半を占めています。
それ故に凡そ著しく正確性や客観性が欠けている為に、往々にして主観というものは的外れで当てにならないという不名誉な評価を得ています。
だったら、だからこそ私は、私たち自身の未熟な主観(心)を少しでも善くしなければならないと考える立場の者です。
しかしあまりにも未熟な心の持ち主は、自身の悪癖はそのまま棚上げにして、もっともっとと甘やかされることを痛烈に、ヒステリックに望みます。
むしろ世間や他者が己を甘やかすことは当然の義務だ! 権利だ! などと見苦しいまでに増長する事例が枚挙に暇ありません。
そんな未熟な心しか持てない方々をも含めて「みんないい」とか「そのままでいい」とは果たして、一体何のつもりかと私は思うのです。
こんなにもド厚かましい未熟者達を十把一絡げに捕まえて「いい」などと、これ以上屑を無責任に甘やかしてどうするつもりか!と、私などは愚考します。
「いい、ワケがないでしょう」と。
結びに
人間はみな同じような精神的欠点や弱点を抱えて生きていると、私は自身の人生経験上から確信しています。
だからこそ
「いいワケないだろ だからちょっとでも自分のことは自分で何とかしようぜ」
と、言いたいのです。
と、まあ今回はこんな感じで私なりにいろいろと感じて考えた事柄を投稿させて頂きました。