その他大勢のひとり(5)
整列した我々の中を縫うように青ランタンをもった上司が部下になるであろう新入スケルトンたちを一体一体観察していく。
もとはそれぞれの人生を生きた人間であるから、ある程度の個体差はある。
だが、外見のバラエティーに関しては所詮骨であるからに、ある程度にすぎない。
肉はおろか、皮すらないのだから所どれだけ並べても、乳白色のなかに等しく、人間であった頃に必要だったくぼみがある程度である。
そういえば、眼球はないのだが、どうやって視力を得ているのだろうか?
そうして私の思考が脱線したところで、上司の歩みが一体のスケルトンの前でとまった。
それはカラスを仕留めたスケルトンであった。
ほかの個体とは違い、口を中心に顔面から胸元にかけて、そして両手が血で赤く染まっている。
上司がランタンを振るうと、カラスを仕留めたスケルトンは列から外れてどこかに行ってしまった。
つまみぐいにはなんらかの罰則があったのだろうか?
予測のできない出来事に心臓すらないが気持ちなんだかドキドキと音がしそうだ。
そのあとは上司の目にとまることなく、新人チェックは終わり、それぞれに配属先へと適当に振り分けられた。
私はどうやらトロッコ押しに回されたようだ。
上司のランタンの合図に合わせて同期たちはトロッコを押し始める。
私も不自然にならないように同様に行動する。
なんとなく命令らしきものは理解できるが、絶対ではないのは私のイレギュラー要素であろう。
会話が成立しないので何とも言えないが、同期たちはどうにも私のように生前の記憶を持っているようには見えない。どちらかというと命令を聞くだけの人形のようにすら思える。
命令は多少の違和感を感じるが無視することはできそうだ。
しかしながら、現状命令に逆らってもいいことはなさそうだ。
所詮私が知っているのは蘇った墓場からここまでの道のりと、同期のスケルトンたちと青ランタンの上司とその取り巻きの犬ぐらい。
情報が少なすぎる。
今は無駄に逆らうよりも情報をうまく手に入れられるようにこの現状になじんだ行動を取るのが良さそうに思える。
生きているとは言えないこの有様だが、蘇ってしまった以上はこの人生と言うべきか・・・むしろ生きていないので生とつけるのも何だが・・・とりあえず、過ごしやすく、かつ謳歌できるようにするためにいろいろと知らなければならない。




