その他大勢のひとり(2)
辺り一面から聞こえるのは私のそれと同じ、乾いた賑やかしい骨の音ばかり。
話すものは今のところいない。
同様に私の喉も鳴らす音を忘れたかのように、自身の意識を裏切って一切の音が出ない。
発語でのやり取りは無理のようだ。
暫く同期たちを観察していたが、どうにも今のところ、意味のある行動を取っているものはいないようである。
無意味にうろつき、ふらついて自分の墓石らしきものに当たって砕けそうになっているものすらいる。
墓石・・・
そういえば、自分は何という名前であっただろうか。
思い出そうとしても、自分が何者であったか、どのように暮らしてきたかなど生前の記憶がはっきりしない。
覚えていることと言えば、先ほど目覚める直前のあまりに抽象的で曖昧な記憶のみである。
誰かが泣くのがとてもつらかったことだけは覚えているが、それがどこの誰であるかすらわからない。
墓石には名前が刻まれているはずと、慣れない体を墓石に傾けて刻まれているだろう名前をみる。
苔生して、雨風にさらされた表面にはたしかにな名前らしきものが刻まれていたのだろう。
掘った跡らしきものはあるが、残念ながら読めるほど状態のいいものではなかった。
手がかりとなるものがなくなってしまったな。
すこしでも情報が欲しくて、同期のもののそばに寄ってみた。
軽く手を上げて挨拶を試みてみる。
反応があれば・・・無視とかされていなければ、だが・・・何かしらの反応が返ってくるかかもしれないという、非常に淡い期待を寄せての行動だが、案の定虚しい空振りになる。
誰か一人ぐらいは反応してくれるかなっと期待したが、どうにも伝わっている様子がない。
そこにワンテンポもツーテンポも遅れて、一人のスケルトンが私に向かって歩んできた。
正直、絶望から引き上げられたそんな期待をして思わず、両手を広げて彼を歓迎した。
同志がいた!
しかし、それも幻想。
残念ながら一瞬でも同志かもしれないと期待を寄せた相手は・・・
墓石にとまるカラスに襲いかかるように飛び込み、無残にも墓石に勢いよく衝突して砕け散った。
どうやらアンデット特有の生きているものに対する執着心ゆえの行動だったようである。
期待した私が馬鹿だったのかもしれない。




