その他大勢のひとり(1)
目が覚めた、そんな感覚がした。
泥のように重たく、凪の海のような静かな眠りだった気がする。
辺りは暗くて、狭い。
これはこれで居心地が悪いわけではないが、起きた以上は体を動かしたい。
思い切って腕を振るう。
なにやら違和感があったが、狭いところから出た開放感はこれはこれで達成感がある。
あたりは夜のようだ。
ぼんやりとした月明かりがいくつも・・・
いや、さすがに月がいくつもあるわけはない。
物語で複数の月が描かれることはあるが、それにしても数が多すぎる。
白い・・・乳白色の月に思えたそれは複数の動く髑髏たち。
俗に言う、スケルトンの集団だった。
普通であれば、私自身叫び声を上げて急ぎ逃げるところであるが、不思議とそのような焦燥感には駆られない。
しんと静まりかえる心には恐怖も焦りもない。
そもそも胸から鼓動が聞こえない。
胸に当てた自身の手を視て、ようやくその理由に気づいた。
自分も、そうであったのだ。
私は、スケルトンの一員であった。
鼓動を打つ心臓はない。
涙を流す眼もなければ、叫ぶ喉もない。
ただ、がしゃがしゃと賑やかに悲しげに骨がなるのみ。
そして目の前に広がる髑髏の群れは、同期のお仲間さんというわけで、
恐怖する必要も無いわけである。




