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醒めない夢を見る
なんだか遠い遠い。
そんな夢を見ていた。
ふわふわとした朦朧とした意識の水槽。
もがくように泳ぎ、溺れてゆく。
もう、あがかない方がきっと楽に、静かに沈んでゆける。
でも、どうしても手を伸ばしたかった。
私の大切なものはそこにあったのだから。
視界が狭まってゆくのがぼんやりとわかる。
ああ、自分はもうダメなのだということが朧気ながらに
なぜだかはっきりとわかるのだ。
赤がにじんでゆく。
赤から黒に、時に白に。
耳に届くのは甲高いソプラノと絶叫に近い泣き声。
ごめん、私は先に逝く。
後悔するのはあの子の涙を止められずに終えることぐらいだ。
これが私の人としての最後の記憶だった。