小太郎・・・1
ペットを捨てる理由で「凶暴だから」「病気で気持ち悪いから」という人がいるそうです。「じゃあ、うちの犬はどうなるの?」と思い書き始めました。でも、書いていくうちに「そんなに悪い犬じゃないかも」に変わり、あげくの果てに「他人の記憶の中にも二匹が生きて生きていければなぁ……」なんて思う始末。全くバカな飼い主です。……当時、あとがきの引用
私はよく家族から犬を飼えない性格だと言われる。私自身、あんなに大変なしつけや、世話を一人でなんてできるわけがないと思っているので否定はしない。それに、こんな犬を好き好んで飼いたいと思う人なんているのだろうかと、疑問に思うことさえある。
「こら!」半分何を喋っているのかわからない発音をするのが父。
「ハウス!」低い声で、威厳たっぷりのこの一言で、すべてにカタをつけることができるのが母。
「何してんねん」低い声で睨み、ジッと見つめるのが私。
「いいんか?」低い姿勢で首輪を引っ張るのが弟。
「小太郎なんて嫌いや!」そう言って無視を続けるのが妹だ。
これらは飼い犬の小太郎に向けて発せられる言葉である。しかし、これは小太郎が特別に悪いことをしたひのみに発せられ言葉ではない。毎日というと、少し多すぎるが、一週間に一度は誰かが小太郎と真剣に勝負して、これらの言葉を発している。
そして、たいていは、食べ物が関係している。こんな時の彼は真剣だ。いつもは、「アホっぽい顔」をしている小太郎なのだが、こんな時の顔はハンターそのものになる。たとえそれが飼い主であっても、容赦はしない。そして、隙あらばテーブルに載っている人間の食べ物を盗もうと目を光らせている。
小太郎は、何度もモグラたたきのモグラのように、ひょこっと顔を出し、人間の顔色をうかがい、今日のメニューを確かめる。
「今日はなにがあるのかなぁ。美味しいものはないのかなぁ……」
物色した後、彼は少ない知能で、必死に考える。最近はみんなの目が厳しいので、なかなか食べられないのだ。食べ物を手に入れた小太郎は、誰も手がつけられないくらいに凶暴になるのだが、そうでない時はいつまでも情けない犬なのだ。だから、彼は少なくともみんなの目を逸らさなければならない。椅子に乗って食べ物を盗るにしても、飛び乗る時間が必要だ。どうすれば、みんながいなくなるだろうか……?そして、彼は名案を思いついた。
現在はペットの飼い方なども見直されており、ここでの表現が現状に合わないこともあると思います。また、画面上で読みやすいようときどき更新していく予定です。