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名前呼びとか正直どうでもいい

「柾くん、先に行くね。」

本日、日直のあたしは柾くんに声を掛けた。

もちろん日直も出席番号順なので、柾くんと一緒だ。

まだ昼休みだけど、5時間目の科学は準備があるので日直は早めに行くことになっている。

もう時間なので、まだ行きそうにない柾くんは置いて行くことにした。

化学室に向かう途中、廊下の向こうから知ってる顔がやってくるのが見えた。

「海先輩!」

桐原くんだ。

こちらを見つけるが早いか呼び止められる。

「海先輩に会いに行こうと思ってたんです。」

いつのまにか呼び方が、水沢先輩から海先輩に変わった。

別にどちらでもいいけど。

「何か用事でもあった。」と聞けば、お願いがあってとかなんとか言っている。

「何かな。」とたずねると、

「おれのはちまきを作ってもらえませんか。」なんて言った。

「あ~はちまきか。あたしのは友達に縫ってもらうの。よかったら頼んであげるけど。」

優香ははちまきの生地を配ったその場で、はちまき製作依頼をいくつも受けていた。

10本分以上の布を持ってた気がする。この際あと1本増えたところでどうということもないだろう。

「でも、桐原くんだったら縫ってくれる人がたくさんいるんじゃないの。」

桐原くんは真っ直ぐあたしを見て言った。

「海先輩に作ってもらうから意味があるんです。」

「どんな…」意味があるんだ、と言いかけたところで声が割り込んできた。

「海、急がないと遅れる。」

柾くんがきっぱりした口調であたしの腕をとる。

あたしは腕時計を見て、ここで時間を取りすぎたことに気づいた。

「遅くなっちゃった。桐原くん悪いけどまた今度でいいかな。」

桐原くんの返事は待たずに、柾くんに引っ張られるように歩き出す。

早足で歩きながら「何の話。」柾くんが聞いて来た。

結局なんだったのかなと思いながら、

「優香にはちまきを作ってもらいたい、という話…かな。」そうだっけ?

自分で自分に突っ込んでみる。

「ふーん、ところでさ。あいつなんで海のことを名前で呼ぶんだ。」

そっちこそ、いつのまにか名前を呼びすてているのでは。

「なついてるとかじゃない。」正直どうでもいいので適当に答えておく。

「気安く呼ばせるなよ。」

いや、言っている意味がわかりません。

それよりも、引っ張るのやめて欲しい。

化学室でようやく離してくれたけど、最後に一言。

「おれのことは、大地って呼べよ。」

最近、意味がわからないことをよく言われる。




結局、桐原くんのはちまきはうやむやでどうなったのかは知らない。

ついでに言うなら、大地のは柊さんが作った。

生地を配ったその日に、

「大地くんのはちまきは任せて。」と、それは可愛らしい笑顔で、大地から生地を預かっていた。

言われた大地もまんざらでもなさそうだったので、よかったねという感じだ。

柊さんといえば、いつも忙しそうにしていて授業中以外はいないことも多く(いったいどんな用事があるというのか)ここぞという時以外はあまり目立つ行動はしないのだけど、体育祭の出場種目を決めた時はちょっと驚いた。

種目を記載したプリントを見た瞬間、「借り物競争がない。」と声を上げたのだ。

借り物競争って競技時間がかかるし出られる人数も限られるので、委員会で種目を決める時あたしは「今年はやめましょう。」とはっきりきっぱり発言したのだ。そのかわり、団体競技を増やしてくれるようにお願いした。クラス対抗リレーとか盛り上がるでしょう。

その案はあっさり通り、種目一覧から借り物競争は削除された。

柊さんは借り物競争にかなり思い入れがあるようで、ちょっぴり悪いことしたかなと思う。

でも、選抜リレーに選ばれていたし、見せ場はあると思うのよ、柊さん。













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