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そして、みんなで天文部員

初めての天文部は、楽しかった。

部長と佐藤さんの星の話も興味深くて、9時に解散の時には、入部してみようかと思い始めていた。

さっそく優香に話してみようと思う。

昇降口を出て3人で歩いていると、自転車があたし達のそばをすり抜けて行く。

校内で自転車に乗っちゃダメなんだよ。

一瞬でそれが誰かわかったあたしは名前を呼んでみる。

「大地。」

自転車は急停止して、大地が振り返った。

「なっ、海。何してるんだ。」

あたしは部長と佐藤さんにお礼を言ってから、2人で先に帰ってくれるよううながした。

心配そうな2人に「これ」がいるから大丈夫です。と大地の方を指し示すと、納得して2人で帰って行った。

「こんな時間に何してんの。」

「天文部に体験入部してみたの。」

「入部してみたのって、なんで。」

あたしは簡単に理由を話す。

そのあたりで校門に到着。ここから大地とは方向が違う

「じゃあね。」

「どこいくんだよ。」

大地に呼び止められる。

「帰るの。」

「送る。」大地が自転車の向きをかえてそばに来た。

「えっ、いいよ。大地、遠回りになっちゃう。」あたしは驚く。

「かまわない。送る。」

「だめよ。こんな時間だし、早く帰ったほうがいいよ。」

断わるあたしに

「一人で帰せるわけないだろ。心配してるより送ったほうがいい。」

えー、となおも渋るあたしにかまわず、

「こっちか。」なんて言いながら自転車を押して歩き出す。

あたしは小走りに追いつくと

「ありがとう。」隣を歩き始めた。


「入部するのか。」

「たぶん。」

「毎回この時間なのか。」

「たぶん。」

大地は考えにふけってから、

「次から俺も参加する。水泳部の後だから短い時間だけど、部長に頼んでおいて。」

えー、びっくりして隣を歩く大地を見る。

「もし、必要だったら入部するし。」

「水泳は。」

「掛け持ち。西原もそうなら、何とかなるだろ。」

えーー。

今日何回目の「えー」だろう。

「天文に興味あるとか。」あたしの質問に

「それはどうかな。やってみないと。」

じゃあなんで。

「人助けも悪くないだろ。ついでに送ってやるよ。」

よくわからないけど、大地の親切スイッチが入ったってことかな。

でも、天文部が5人になる。確かに助かるよね。


あっという間に天文部は5人になった。

付け焼刃な感じだけど、部長と佐藤さんは喜んでくれたのでいいのかな。

もう去年との違いを探すどころじゃなくて、前回と同じところを探すのが難しくなっている。

最近では、図書室で杉宮くんとよく話すようになったし。

「なんでいつも、この席なの。」いつかまた杉宮くんが聞いたけど、

「なんとなく。かな。」適当にごまかす。

「おれさ。」言いにくそうに言葉を切る。

あたしは目で先をうながす。

「まりあがよく分からないんだ。」

「分からないって。」

「嫌われてはいないと思うんだ。むしろ好意すら感じる。けど・・・」

不安そうに杉宮くんはつぶやく。

あたしと柊さんは普通のクラスメイトで仲がよくも悪くもない。

だけど、杉宮くんとか大地が彼女と仲がいいので自然と視線が行くようになっていた。

そして感じることは、けっこう思わせぶりなんじゃないかということ。

こと、恋愛に関して。

杉宮くんと大地には言わないけれど、最近は3年の梅沢先輩によく会いにいっている。

梅沢先輩は美術、特に絵で将来有望な生徒だ。容姿の美しさと神秘的な雰囲気とで人気も高い。

ただ、人嫌いで有名で恋愛目的の女子は近づけないでいた。

にも関わらず、放課後の美術室に柊さんは通っている。

大地が日直の仕事をさぼるから、偶然その事の気付いてしまったのよ。

二人の会話を耳にしてから、柊さんが梅沢先輩を恋愛対象として追っている、という感じがぬぐえなくなった。

さて、柊さんが好きな人はだれ?

今は桜井先輩が恋人なんだよね。

あたしは体育祭のキスを目撃している。

でも、気もちが変わった?

杉宮くんに?梅沢先輩に?はたまたは、大地に。

「あきらめられないなら、行くしかないんじゃないかな。」あたしがぽそっと言うと

杉宮くんは驚いたようにこっちをみた

「意外だな。」

好きなんでしょう。で、好意を寄せられているんでしょう。

ならあきらめられるわけないじゃない。

杉宮くんだし。

けっこう恋愛に熱いよね。しかも行動力有りと見た。

「納得いくまでやってみる、しか無いんじゃない。」

あ、ちょっと真剣にいいすぎた。

「もしもの時には、なぐさめてあげるわ。」おどけたように言ってみる。

何か役に立つとも思えないけど、一服の清涼剤になりましょう。


杉宮くんの恋愛事情の聞き役までやっている、あたしなのだった。











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