雷の音
ドゴオーン。
トタンの屋根を叩く雨音を押しのけるように、おおきな音がしました。
巣にいる二羽の雛は驚きました。
「すごい音がしたね。」
「すごい音がしたね。」
二羽の雛は繰り返し言いました。
二羽は双子の兄弟なのです。
食べるごはんも、胸のシマ模様も、寝ぐせだって同じなのです。
「大きな木が倒れるような音だったね。」
「いや、貝殻を踏み砕いたような音だったね。」
初めて二羽の意見が割れました。
「大きな木が倒れるなんて、見たことあるの?」
弟の雛が言いました。
「木なんて倒れないようにできてるんだ。大きい木ならなおさらだ。」
「見たことあるよ。」
兄の雛は初めて嘘をつきました。
思わず、顔が熱くなって、羽根が逆立ちました。
兄の雛は巣から出たことがありませんから、大きな木が倒れるところなんて見たこともありません。
でも、双子の兄ですから弟に見下されるは耐えられません。
「おい、貝殻なんて踏んだことがあるのか?」
兄の雛が言いました。
「お前のその小さな足でどうやって硬い貝殻を割るんだ?」
「割ったことあるさ。」
弟の雛は初めて嘘をつきました。
思わず、顔がこわばって、背中が寒くなりました。
もちろん、弟の雛も巣から出たことがありませんから、貝殻なんて見たこともありません。
でも、双子の弟ですから兄に見下されるのは耐えられません。
二羽は嘘をつきました。
でも、二羽とも本当は相手が嘘をついているって知っています。
なぜなら、二羽は生まれてからずっと一緒だからです。
雨の中、親鳥が低く飛びながら雛の待つ巣に戻ってきました。
くちばしには芋虫が咥えられています。
「お帰りなさい。」
「お帰りなさい。」
二羽の雛は言いました。
親鳥は体をブンブン震わせて、羽根についた雨の雫を飛ばしました。
俄かに灰色の空がぴかっと光ると、さっきのようにドゴオーンと音がしました。
「やっぱり大きな木の倒れる音だ。」
「いや、貝殻を砕いた音だ。」
二羽の兄弟はまた、言い争いを始めました。
普段はケンカのしない仲の良い兄弟ですから、親鳥は驚いて言いました。
「どうしてケンカしているの?」
「雷の音がどんな音かって言ってるの。」
「雷の音がどんな音かって言ってるの。」
兄弟は言いました。
親鳥は不思議そうに頭をひねると言いました。
「大きな木が倒れるようにも聞こえるし、貝殻を砕いた音にも聞こえるよ。」
三羽の鳥を知らないで、雷はまた鳴ります。
ゴロゴロゴロ……ドゴオーン。
まだまだ、雨は止みそうにありません。




