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雷の音

掲載日:2026/05/14

ドゴオーン。

トタンの屋根を叩く雨音を押しのけるように、おおきな音がしました。

巣にいる二羽の雛は驚きました。

「すごい音がしたね。」

「すごい音がしたね。」

二羽の雛は繰り返し言いました。

二羽は双子の兄弟なのです。

食べるごはんも、胸のシマ模様も、寝ぐせだって同じなのです。

「大きな木が倒れるような音だったね。」

「いや、貝殻を踏み砕いたような音だったね。」

初めて二羽の意見が割れました。

「大きな木が倒れるなんて、見たことあるの?」

弟の雛が言いました。

「木なんて倒れないようにできてるんだ。大きい木ならなおさらだ。」

「見たことあるよ。」

兄の雛は初めて嘘をつきました。

思わず、顔が熱くなって、羽根が逆立ちました。

兄の雛は巣から出たことがありませんから、大きな木が倒れるところなんて見たこともありません。

でも、双子の兄ですから弟に見下されるは耐えられません。

「おい、貝殻なんて踏んだことがあるのか?」

兄の雛が言いました。

「お前のその小さな足でどうやって硬い貝殻を割るんだ?」

「割ったことあるさ。」

弟の雛は初めて嘘をつきました。

思わず、顔がこわばって、背中が寒くなりました。

もちろん、弟の雛も巣から出たことがありませんから、貝殻なんて見たこともありません。

でも、双子の弟ですから兄に見下されるのは耐えられません。


二羽は嘘をつきました。

でも、二羽とも本当は相手が嘘をついているって知っています。

なぜなら、二羽は生まれてからずっと一緒だからです。


雨の中、親鳥が低く飛びながら雛の待つ巣に戻ってきました。

くちばしには芋虫が咥えられています。

「お帰りなさい。」

「お帰りなさい。」

二羽の雛は言いました。

親鳥は体をブンブン震わせて、羽根についた雨の雫を飛ばしました。

俄かに灰色の空がぴかっと光ると、さっきのようにドゴオーンと音がしました。

「やっぱり大きな木の倒れる音だ。」

「いや、貝殻を砕いた音だ。」

二羽の兄弟はまた、言い争いを始めました。

普段はケンカのしない仲の良い兄弟ですから、親鳥は驚いて言いました。

「どうしてケンカしているの?」

「雷の音がどんな音かって言ってるの。」

「雷の音がどんな音かって言ってるの。」

兄弟は言いました。

親鳥は不思議そうに頭をひねると言いました。

「大きな木が倒れるようにも聞こえるし、貝殻を砕いた音にも聞こえるよ。」

三羽の鳥を知らないで、雷はまた鳴ります。

ゴロゴロゴロ……ドゴオーン。

まだまだ、雨は止みそうにありません。

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