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第七十二話「模擬戦の洗礼」



基本的な身体測定が終わると、いよいよ実技試験となった。


「では、実戦形式の模擬戦を行います」年配の監督官が宣言する。


その時、運動場の入り口から見慣れた顔が現れた。エア・ナブだった。彼は模擬用の木刀を手に、軽やかに歩み寄ってくる。


「やあ、メルベル殿」ナブは軽く挨拶した。「実は前から、あなたと戦ってみたかったんです」


彼の目には闘志が宿っていた。


メルベルは内心でため息をついた。


*ああ、これは絶対勝てそうにないな*


ナブの体から既に法石のエネルギーが溢れ出している。神殿の中枢部での戦闘では、彼は無尽蔵の力を得ることができる。


観客席では、アザリアが鋭い視線を送ってきていた。その表情は明らかに「絶対に勝て。負けたら承知せんぞ」と言いたげだった。


「始め!」


監督官の合図と共に、ナブが動いた。


「うおおおっ!」


彼は法力を全開にして突進してくる。木刀が青白い光を纏い、空気を切り裂いて迫った。


メルベルは間一髪で剣を構えて受け止める。


「ガキィン!」


激しい金属音が響いた。しかし、ナブの攻撃は止まらない。


「やあっ!」「たあっ!」


連続攻撃が雨あられと降り注ぐ。メルベルは必死に防御に回った。


「くっ...」


彼も自分の法力を全開にして対抗する。炎を纏った剣がナブの攻撃を捌いていく。


「さすがですね!」ナブが戦いながら叫んだ。「この環境でも、これほど粘るとは!」


「うるさい!」


メルベルは反撃を試みたが、ナブの法石エネルギーは圧倒的だった。一撃を放つ間に、三撃が返ってくる。


「メルベル!頑張って!」


アザリアの声援が響いた。彼女は我を忘れて立ち上がり、拳を握りしめている。


「負けちゃだめよ!」


監督官たちは苦笑いを浮かべながら、アザリアの熱烈な応援を見ていた。


戦いは次第にメルベルの劣勢となった。ナブの攻撃はますます激しくなり、メルベルは防御に精一杯だった。


「はあ、はあ...」


息が上がってくる。一方、ナブはまだ余裕がありそうだった。


「やあああっ!」


ナブの渾身の一撃が、メルベルの剣を弾き飛ばした。


「くそっ...」


メルベルは膝をついた。もはや戦う余力が残っていない。


「...降参だ」


「ぐぬぬ...」


アザリアが悔しそうに唸った。


「もー!何してるのよ!」


彼女は思わず叫んでから、ハッとして慌てて口元を押さえた。


監督官たちは、まるで子供のような声援と悔しがりようを見せるアザリアに、苦笑いを浮かべながら軽い歓談を交わしていた。


「では、試験はこれまでです」年配の監督官が告げた。


ナブは勝敗が決すると、黙って一礼して引き下がった。その態度は実に礼儀正しく、勝者の驕りなど微塵も見せない。


アザリアはメルベルの側に駆け寄ると、軽く肘で小突いた。


「全然だめじゃない」


「すまん」メルベルは苦い顔をした。「予想通りの結果だ」


二人が部屋から出て行くと、監督官たちはナブに感想を求めた。


「お疲れ様でした。見事な勝利でしたね」


しかし、ナブは意外な反応を見せた。


「結果は見ての通りですが...これは当たり前です」


彼は汗を拭いながら続けた。


「こちらは都の中心、神殿内部での戦いですから。私は無尽蔵のエネルギー供給を受けられる。一方、メルベル殿は自前の法力だけで戦っているわけです」


監督官たちは興味深そうに聞いている。


「つまり?」


「むしろ彼は、自力で常に供給を受けられる上級の神殿戦士とほぼ互角ということになります」


ナブの言葉に、監督官たちは驚いた表情を見せた。


「それは...どういう意味ですか?」


「野外や遠征地では、立場が完全に逆転するでしょう」ナブは真剣な表情で答えた。「恐ろしい実力です」


監督官たちは顔を見合わせ、あれこれと相談を始めた。評価をどうするか、難しい判断を迫られているようだった。


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