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第六十九話「旅路の終焉」



メルベルは改めて食堂を見回しながら思った。


*そういえば、アザリアはもう有名人だったな*


五つの聖火を宿した聖女が、こんな大衆食堂で食事をしているのは確かに不自然だった。本来なら神殿の特別室で、最高の料理を食べていてもおかしくない身分である。


しかし、理由は分かっている。アザリアが神殿の食堂を嫌がっているのではない。メルベルが神殿に入るのを嫌がるから、結果的に「じゃあこっちで一緒に食事して、今後の話でもしよう」という流れが定着しているだけのことだ。


「そうそう」アザリアが口を開いた。「残り二つの聖火の回収について、色々調べてきたの」


彼女は興味深そうに身を乗り出した。


「実質的に、二人一組で行動できる範囲のことはもう終わってるのよ」


「どういう意味だ?」


「アンデッドの本拠地に行った例を調べたんだけど、国の事業としての例が圧倒的に多いの」


メルベルは眉をひそめた。


「国の事業?」


「そう。五つ以上の聖火を得る場合は、基本的に必要と判断された上級巫女のために軍隊を編成するのよ」


アザリアは調べてきた資料を思い出しながら説明した。


「アジョラの時は、神殿戦士五百人と兵士一万人が参加する大移動が行われたって記録があるわ」


「それだと護衛というより戦争だな」


メルベルは率直な感想を述べた。


「でも、それだけの大軍団を編成しても、前の遠征は全滅して生き残りは聖女以外にはいなかったんだろう?」


「そうなのよ!」アザリアは少し興奮した様子で答えた。「やばいわよね。想像を絶する危険度よ」


彼女は手をひらひらと振りながら続けた。


「まあ、正確には相手の本城に乗り込んで撤退してきた内容が脚色されてるらしいけど。生き残ってる人はたくさんいるって話もあるし」


「なるほど」


アザリアは少し考え込んでから言った。


「大昔は、巫女とガード二人一組で乗り込んで行って敵を倒して戻ってきたなんて逸話が残ってるけど...昔話だし、まあ嘘なんでしょうけど」


メルベルは杯を置いた。


「じゃあ、俺たちの旅はもう終わっていたってことか?」


アザリアは少し渋い顔をして黙り込んだ。


「きっと今受けている検査は、お前の資質を調べてるんだろうな」メルベルは予想を口にした。「もし検査に合格すれば大軍団で移動するし、ダメならここで旅は終わりってことか」


アザリアは困ったような表情を見せた。


「でも...私、ダメでもその場所に行ってみたいの」


「何?」


「だって、せっかくここまで来たのよ?」彼女の目に熱が宿った。「前のティアマトのこともあるし、こっそり二人で行って移動すれば、敵に見つからないで移動できるんじゃないかしら」


アザリアは想像を膨らませながら続けた。


「大軍団だと目立つから狙われるけど、私たちなら隠密行動ができるわ。今まで通りに」


「そんな大軍団で移動して苦戦するのに、二人だと死ぬだろう」


メルベルは現実的に答えたが、アザリアの熱は冷めない。


「でも可能性はあるでしょう?私たち、今まで不可能を可能にしてきたじゃない」


彼女の声には、旅を終わらせたくない強い願いが込められていた。


「それに、こんな曖昧な終わり方は嫌なの。自分の限界を確かめたいわ」


メルベルは深いため息をついた。


「まあ、その結果次第だな。今から想像でものを言ってもしょうがない」


彼は酒を注ぎながら続けた。


「検査の結果を待ってからだ」


アザリアは少し不満そうな表情を見せた。


「あなたって、いつも現実的すぎるのよ」


「現実を見ないと死ぬからな」


「でも、夢がないじゃない」


彼女はちびちびと酒を飲み始めたが、明らかに納得していない様子だった。



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