表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/244

第六十八話「監視の発覚」



夕食の時間が近づく頃、メルベルは自室で首の金の鎖と格闘していた。


どんなに引っ張っても、捻っても、この細い鎖は外れない。それどころか、無理に取ろうとすると首が締まって痛みが走る。


*くそったれ...*


彼は机の上の工具を手に取った。細い鉄の棒で鎖を壊せば、取れるかもしれない。


しかし、手を止めた。


*もし壊したら、何か呪いのしっぺ返しがあるかもしれない*


古式の契約について、ナブから聞いた話が頭をよぎる。「命よりも重い契約」「絶対に解除できない」


メルベルは工具をそっと机に置いた。


*今夜はアザリアに聞いてみるか*


昨夜の記憶は曖昧だが、彼女なら何か知っているはずだ。


食堂に向かうと、既にフードを被ったアザリアが定位置に座っていた。


「お疲れ様」メルベルは向かいに腰を下ろした。


「ああ、本当に疲れたわ」アザリアはため息をついた。「今日は一日中、試験みたいなものを受けさせられて」


「試験?」


「色々よ」彼女は食事を注文しながら続けた。「炎の力をどの程度扱えるかとか、旅の工程の詳細を聞かれたり...」


「それだけか?」


「身体検査もあったわ。血を抜かれて、尿を提出して」アザリアは顔をしかめた。「口の中まで医者らしい人たちに洗いざらい調べられたの。本当に不愉快だった」


メルベルは相槌を打った。


*健康診断か*


聖女の体調管理は重要だろう。しかし、何か引っかかるものがあった。


その時、周囲の人の流れに不自然な動きを感じた。食堂の隅のテーブルに座った数人の男たちが、明らかにこちらを観察している。


メルベルは何気なく辺りを見回した。男たちは慌てて視線を逸らすが、時折こちらを盗み見ている。


*尾行か?*


耳を澄ませると、断片的に会話が聞こえてくる。


「...聖女の動向...」「...報告は...」「...明日も...」


メルベルの警戒心が高まった。


*誘拐?アンデッドの手下?それとも追っかけか?*


様々な可能性が頭をよぎる。


「ちょっとトイレに」


メルベルは席を立った。男たちの一人も同時に立ち上がる。


*やはりな*


彼は食堂の外に出ると、男の後をつけた。男は建物の陰で何かメモを取り始めている。


*いよいよ怪しい*


メルベルは音を立てずに近づくと、男の肩をぐいっと掴んだ。


「俺たちに何か用か?」


男は驚いて振り返った。三十代の痩せた男で、目つきが鋭い。


「な、何のことですか?人違いでは...」


「しらばっくれるな」


メルベルは男を壁に押し付けた。


「金を貸してくれよ」


チンピラのような口調で言いながら、素早く男の懐を探る。そして、折りたたまれた紙を見つけて引き抜いた。


「おい、それは...」


男が慌てたが、メルベルは既に紙を開いていた。


そこには、アザリアの身辺情報が簡潔にまとめられていた。食事の時間、移動経路、会話の内容...すべてが記録されている。


「こいつ、人攫いか?」


メルベルは男を締め上げようとした。しかし、男は素早く身を翻すと、夕闇の中に走り去っていく。


「待て!」


メルベルは追いかけたが、男は路地裏に消えてしまった。


*くそ...*


彼は手に残ったメモを見つめた。明らかに組織的な監視活動だった。しかも、かなり詳細な情報が記録されている。


*誰が、何のために?*


食堂に戻ると、アザリアが心配そうに見ていた。


「どうしたの?顔色が悪いわよ」


「...何でもない」


メルベルは席に座りながら考えた。アザリアに話すべきか?しかし、彼女を不安にさせるだけかもしれない。


*まずは様子を見よう*


彼は周囲を警戒しながら、食事を続けた。先ほどの男たちのテーブルは、既に空になっている。


しかし、新たな監視者がいないとは限らない。


首の金の鎖のことは、今夜は聞けそうになかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ