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第六十七話「聖女の憂慮」



神殿の最奥にある聖女の私室で、アジョラは一人窓の外を見つめていた。


見た目は二十代半ばの美しい女性だが、実際の年齢はその倍以上になる。七つの聖火を宿した体には膨大な生命エネルギーが蓄えられており、老いることを知らない。


しかし、彼女の心は穏やかではなかった。


*また弱くなっている...*


朝の祈りの際、いつものように聖火のエネルギーを確認したところ、明らかに昨年よりも力が衰えていた。


*このままでは...*


アジョラは拳を握りしめた。夫であり、唯一のガードでもあったガレスとの約束が頭をよぎる。


「必ず国を守り抜く。必ず後継者を見つけて、この力を受け継がせる」


十年前に死んだ夫に誓った言葉が、重くのしかかっている。


*早く見つけなければ...*


彼女は机に向かい、最近の報告書を手に取った。五つの聖火を宿した新たな聖女の名前が記されている。


「アザリア・イシュタル」


美しい女性だという報告もある。そして、異教の戦士を護衛につけて聖地巡礼を成功させたという、風変わりな経歴の持ち主でもあった。


*しかし...*


アジョラは眉をひそめた。五つ以降の聖火を手に入れるには、二人だけでは危険すぎる。自分も先代聖女の軍隊と共に聖地を攻略した。一人や二人で挑めるような場所ではない。


*後継者と判断すれば、軍を動かさねばならない*


それは国家的な事業だった。そして、一度後継者と指名すれば、敵に傾倒している裏切り者たちの標的となる。慎重に、密かに調査しなければならない。


*人間性、体力、ガードとの絆...*


アジョラは選定基準を心の中で反芻した。政治的なバランスなど、くだらないことだ。敵の策略に乗せられるようなものでしかない。


重要なのは、真の強さと絆だった。


扉をノックする音が響いた。


「入れ」


部下の神殿戦士が入ってくる。アジョラの私兵部隊の隊長、カマエルだった。


「聖女様、お呼びでしょうか」


「ああ」アジョラは簡潔に答えた。「アザリア・イシュタルについて調べてもらいたい」


「承知いたしました。どの程度まで?」


「すべてだ。本人の性格、戦闘能力、そしてガードとの関係」


カマエルは頷いた。彼はアジョラの意図を理解している。後継者選定の調査だということを。


「密かに行え。誰にも気づかれてはならない」


「承知いたしました」


「それと...」アジョラは少し考えてから続けた。「ガードの男についても詳しく調べろ。戦闘能力、人間性、そして彼女への忠誠心」


「異教の戦士ですね」


「そうだ。変わった組み合わせだが...」


アジョラは窓の外を見つめた。ガレスとの記憶が蘇る。


*ガードと巫女は一心同体でなければならない*


現代の契約制度への不満が胸に込み上げた。いつでも解除できる契約など、真の絆ではない。命を賭けて支え合う関係でなければ、本当の強敵には勝てない。


「一週間で報告を」


「はい」


カマエルが退室すると、アジョラは再び一人になった。


*アザリア・イシュタル...*


彼女の名前を心の中で繰り返す。もしも彼女が後継者に相応しければ、国の未来は安泰だ。しかし、判断を誤れば...


*ガレス、私は正しい選択ができるだろうか?*


死んだ夫に心の中で問いかけながら、アジョラは夕闇に染まる都を見つめ続けた。


時間は残されていない。敵の勢力は日に日に強まっている。一刻も早く後継者を見つけ、この力を託さなければならない。


*頼む、この女が希望であってくれ*


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