表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/244

第三十八話「危険地帯への道程」



下山の途中、メルベルは地図を広げてアザリアと今後の行程を相談していた。シッパルの聖火を手にした彼女の表情は明るく、次の挑戦への期待に満ちている。


「次はどこを目指すの?」


アザリアが尋ねた。


メルベルは地図上の一点を指差した。


「キシュだな」


「キシュ…」


アザリアが地図を覗き込んだ。そこには古い都市の廃墟が描かれ、周囲一帯に深い森の記号が広がっている。


「昔は栄えた都市だった。今は森ごとアンデッドに乗っ取られてる」


メルベルが簡潔に説明した。


「森全体が?」


「ああ。木の陰にゾロゾロいる。夜になりゃもっと増える」


アザリアの表情が引き締まった。


「でも、森の手前までなら巫女の往来もある。まあ、少ないがな」


「他の巫女たちも挑戦してるってこと?」


「してる。大抵帰ってこない」


メルベルの素っ気ない答えに、アザリアは息を呑んだ。


「キシュの後は?」


「バビロン、それからエリドゥ。この順番で回るのが無駄がない」


アザリアは地図を見つめながら考えていた。確かに地理的な配置を考えれば合理的だった。


「危険度はどう?」


「どれも死ねる」


メルベルが即答した。


「キシュは数が多い。バビロンは厄介なのがいる。エリドゥは…」


彼は言葉を切った。


「エリドゥはどうなの?」


「わからん」


「わからないって?」


「現役の聖女アジョラ以外、生きて戻ってきた巫女がいない」


アザリアの顔が青ざめた。


「一人も?」


「一人もだ。しかもアジョラのガードは全滅してる。本人も詳細を語らない」


「そんな…」


「だから今の上級巫女は、エリドゥには行かずに聖地巡礼終了って言い張ってる」


メルベルが苦い顔をした。


「本当にあるのかも怪しいしな。あんたも三つで終わりにしても、文句は言われんだろう」


アザリアは複雑な表情を浮かべていた。


「でも、それじゃ完全じゃない」


「死んだら元も子もない」


メルベルの言葉は現実的だった。


「それと」


彼が続けた。


「一つ聖火を手に入れたら、一度大都市に戻ろう」


「戻る?」


「装備を一新する。道すがらの地方都市で仕事をすれば、かなり稼げる。休養しながら旅を続けた方が賢い」


アザリアが考え込んだ。


「確かに、疲れ切った状態で危険地帯に入るのは愚かね」


「そういうことだ」


メルベルが頷いた。


「今までとは次元が違う。一瞬でも集中を切らしたら終わりだ」


「多くの巡礼者が死んでるって…」


「優秀な奴らもな。装備がいくら良くても関係ない」


メルベルの言葉は容赦がなかった。


「あのティアマトみたいな一行でも、どうなるかわからん」


「彼女たちはどこから始めるのかしら?」


「多分バビロンだろう。名誉欲しがりそうだからな」


「でも危険よね」


「当然だ」


二人は地図を見つめながら、しばらく沈黙していた。


「準備にどのくらいかける?」


アザリアが尋ねた。


「一週間は欲しい。装備の確認、補給、情報集め。手を抜くわけにはいかん」


「わかったわ」


アザリアが頷いた。


「それじゃあ、まずはキシュね」


「ああ」


メルベルも頷いたが、その表情は重かった。


彼の心の中では、予知夢の光景が蘇っていた。アザリアが強大な聖火を手にし、そして暗闇に飲み込まれていく恐ろしい未来。


(この先の聖地で、あの夢が現実になるのか)


そんな不安を抱きながら、メルベルは地図を畳んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ