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第二十二話「不和の帰路」


数時間に及ぶ浄化作業の末、沼地の環境はほぼ完璧に改善されていた。


かつて悪臭を放っていた黒い泥は清浄な土へと変わり、毒々しい色をしていた水面も透明度を取り戻している。腐敗したアンデッドの残骸も跡形もなく消え去り、辺り一帯に生命の息吹が戻りつつあった。


「終わりました」


アザリアが疲労の色を浮かべながら全員に告げた。額には汗が浮かび、聖火の力を長時間使い続けた疲れが全身に現れている。


「お疲れ様でした」


職員が感謝を込めて頭を下げた。


「それでは、街に戻りましょうか」


一行は沼地を後にして、アクカドへの帰路についた。


道中、神殿戦士は先ほどの戦闘でのメルベルの圧倒的な技量が気になって仕方がなかった。確かに異郷の戦士であることは一目で分かるが、あれほどの実力を持つ者がなぜこのような辺境にいるのか、どのような来歴を持つのか、興味は尽きない。


「失礼ですが」


神殿戦士が遠慮がちに声をかけた。


「あなたの剣技は、どちらでお学びになったのですか?」


メルベルは振り返りもせずに答えた。


「聞いてどうする」


その冷たい返答に、神殿戦士は戸惑いを隠せなかった。それでも、職業的な関心から質問を続けようとする。


「いえ、ただ、あれほど見事な技を」


「関係はないだろう」


メルベルの声には明らかな拒絶が込められていた。神殿戦士は口ごもり、職員も気まずそうに視線を逸らした。一行の間に重苦しい沈黙が流れる。


しばらく歩いてから、メルベルが突然口を開いた。


「その法石銃は人殺しには便利だが、アンデッド退治には向いていない」


神殿戦士は驚いて彼を見た。


「俺は見ての通りだから、そういうのが嫌いなんだ」


メルベルはあからさまにそっぽを向いた。その態度には、法石技術そのものに対する根深い嫌悪感が表れている。


神殿戦士の顔が赤くなった。自分の装備と戦闘能力を全面的に否定されたのである。しかし、先ほどの戦闘を思い返せば、反論の言葉も見つからない。


アザリアは流石にこの雰囲気の悪さを見かねて、メルベルを嗜めようとした。


「メルベル、そのような言い方は」


しかし、メルベルは鼻を鳴らして嘲笑うような音を立てた。


「ふん」


まるで、アザリアの言葉など聞く価値もないとでも言うような態度である。


一行の空気は最悪になった。職員は困惑し、神殿戦士は屈辱に顔を歪め、アザリアは自分の立場の微妙さに居心地の悪さを感じている。


メルベルだけが、まるで何事もないかのように黙々と歩き続けていた。


(なぜ、こんなに攻撃的になるのだろう)


アザリアは困惑していた。確かに神殿戦士の実力不足は明らかだったが、それにしてもメルベルの態度は度を越している。


実際のところ、メルベル自身にも自分の感情を持て余している部分があった。法石技術への嫌悪、神殿戦士への軽蔑、そして何より、自分がこのような場面に立たされることへの苛立ち。


古い価値観を持つ法力使いとして、近代化された戦士たちと肩を並べることの違和感。それが、彼をより一層頑なにさせていた。


街が見えてくるまで、一行の間には気まずい沈黙が続いた。時折 舌打ちのような音が聞こえてそのたびにアザリアはむかっ腹が立つような、自分への言い訳を繰り返し考えている。私が悪いわけじゃないのに。

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