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第二十一話「救援の到着」



アンデッドの包囲網が次第に狭まりつつあった時、街道の向こうに土煙が立ち上がった。


猛然とした勢いで駆けてくる人影。それは抜き身の剣を持ったメルベルだった。彼は走りながら最も近いアンデッドに斬りかかり、炎を纏った刃で一撃のもとに両断した。続けざまに次の標的へと向かい、流れるような動作で二体目も切り伏せた。


「メルベル」


アザリアの額には冷や汗が浮かんでいたが、彼の姿を認めた瞬間、緊張で強張っていた体から力が抜けるのを感じた。絶望の淵に差し込んだ一筋の光のような安堵感だった。


メルベルは走るのを止めることなく、アザリアに襲いかかろうとしていたアンデッドを荒々しく蹴散らし、続けざまに二、三体を次々と切り倒した。その剣技には無駄がなく、長年の実戦経験が如実に現れている。


神殿戦士もメルベルの到着に勇気を得たのか、法石銃を構え直して射撃を再開した。古典と近代、二つの戦術が組み合わさって、残りのアンデッドも程なく片付いた。


戦いが終わると、一同は深い溜息を漏らした。職員は震える手で額の汗を拭い、神殿戦士も張り詰めていた緊張から解放されたように肩を落とした。


メルベルは剣を鞘に収めながら、明らかに不機嫌そうな表情を浮かべた。


「ちっ」


舌打ちの後、彼は容赦のない現実を口にした。


「もう二、三人連れて来れば、こんな苦労はしなかっただろうな」


その率直な指摘に、アザリアと職員の顔色が変わった。事実だけに、反論の余地がない。


神殿戦士は恥ずかしそうに俯いてから、メルベルに向かって深く頭を下げた。


「ありがとうございました。あなたのおかげで助かりました」


「別に礼を言われる筋合いはない」


メルベルは素っ気なく答えた。


激しく走ってきた後で息を弾ませながら、彼は周囲を見回した。


「走ってきて喉が渇いた。誰か飲み物を持っていないか」


職員が慌てて水筒を差し出すと、メルベルはそれを受け取り、一気に半分ほど飲み干した。


「それで、仕事の方はどの程度進んでいるんだ」


アザリアに向かって問う。


「まだ始めたばかりです。これから本格的な浄化作業に取りかかろうというところでした」


「そうか」


メルベルは近くの岩に腰を下ろした。


「それなら俺はここで見張りをしている。さっさと仕事を片付けてくれ」


そして神殿戦士に向かって言った。


「俺も警戒するが、あんたも一応見回りを頼む」


「はい、承知しました」


神殿戦士は素直に応じた。先ほどの戦闘で、メルベルの真の実力を目の当たりにしたのである。


メルベルは汗を拭きながら、沼地全体を見渡していた。まだ浄化すべき箇所は少なくない。アザリアの本格的な仕事は、これからが正念場となるだろう。


(やはり来て正解だった)


心の中で呟く。夢で見た光景は、まさに現実のものとなる寸前だったのだ。


一方のアザリアは、複雑な心境に陥っていた。メルベルの助けがなければ危険な状況だったことは明らかだが、それ以上に、自分の判断の甘さを痛感させられたのである。


(やはり、彼がいなければ何もできない)


神殿戦士の限界と、メルベルの圧倒的な実力の差を目の当たりにして、アザリアは改めて現実の厳しさを思い知らされた。


そして、それにも増して恥ずかしかったのは、つい先ほどまでの自分の浅はかな考えだった。神殿戦士がいればメルベルは不要、格上の戦士が雇える、体裁も整う、そんな軽薄な思いを真剣に巡らせていた自分。


(なんという浅はかさだったのでしょう)


とても先ほどの契約の話など口にできるものではない。穴があれば入りたい心境だった。


この先に待ち受ける聖地巡礼は、今日以上の危険に満ちているだろう。今回の一件を考えれば、メルベルなしには到底成し遂げられないことは明白である。


浄化の作業を進めながらも、アザリアは重い羞恥心と、自らの愚かさに押し潰されそうになっていた。


(私という人間は、なんと浅はかで愚かなのだろう)


アザリアは 少し肩を落としながら 自分の内面を悟られないように口元をゆがませて 自己嫌悪に耐えていた。

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