第百六話「芸術家の嘲笑」
螺旋階段を下り続け、石段に響く足音が次第に深い反響を帯びてくる。城の最深部は、まるで古代神殿の奥座敷のような荘厳さと神秘性を湛えていた。二人はついに聖火の間にたどり着いた。
扉を開けた瞬間、温かい光が二人を包み込んだ。そこは古い石造りの円形の部屋で、天井は高く、壁面には古代文字で書かれた祈りの言葉が刻まれている。中央には神々しい七色の光を放つ聖火が、黄金の台座に安置されていた。だが、長い年月の間に誰も手入れをしなかったのだろう。壁という壁には深緑の蔦が這い巡り、床の石畳の隙間には柔らかな苔が生えて、廃れた美しさを演出している。まるで自然が神殿を取り戻そうとしているかのようだった。
「ここです」セラフィナが安堵の息を吐きながら呟いた。「アンデッドの気配がないでしょう?」
確かに、ここまで城の中で常に感じていた不気味な死の匂い、腐敗した魂の澱みが、この部屋には全く漂っていなかった。代わりに、清浄で温かい生命の気配が満ち満ちている。まるで春の若葉のような、新緑の森のような、そんな生命力の奔流がゆったりと流れていた。
「生命力の奔流を嫌うアンデッドは、この場所に基本的に立ち入れません。ここは彼らにとって苦痛でしかないのです」
セラフィナ自身も、聖火の光を避けるようにフードを深く被り直した。額に薄っすらと汗が浮かび、その表情には明らかな疲労の色が滲んでいる。元は聖女だった身とはいえ、今の彼女にとって聖火の純粋なエネルギーは重荷なのだ。
「あなたも大丈夫?無理しないで」アザリアが心配そうに尋ねた。
「ええ、何とか持ちこたえています...急いでください。長居は禁物です」
アザリアは頷き、中央の祭壇に向かった。五つの聖火を既に体内に宿している彼女にとって、六つ目の聖火を取り込むのはそれほど困難ではない。しかし、それでも慎重さが必要だった。両手を祭壇にかざすと、聖火は美しい光の帯となって螺旋を描きながら彼女の胸の奥に吸い込まれていく。まるで天使の羽根のような光の流れが、部屋全体を幻想的に彩っていた。
セラフィナはその光景を、まるで生涯最後の芸術作品を鑑賞するかのような眼差しで見つめていた。瞳の奥に、深い憧憬と諦念が混じり合っている。
「これが聖女か...」
かつて自分が心の底から憧れていた姿がそこにあった。こうなりたかった。美しい炎のようなエネルギーと完全に調和し、世界に希望と慈愛をもたらす存在に。それが何よりも美しく、何よりも尊い夢だった。
光の舞踏が続く中、アザリアの髪が金色に輝き、肌が内側から聖なる光を放っているように見える。まさに絵画や彫刻で描かれる聖母のような、神々しい聖女の姿だった。彼女の周りには温かい光の輪が漂い、その表情は慈愛に満ちている。
「美しい...本当に美しい。こんな光景を見られるなんて」
セラフィナが感嘆の声を漏らした時、部屋の入り口から、ゆっくりとした拍手の音が響いた。その音は聖なる静寂を破るように、皮肉げに響いている。
「ああ、実に美しい光景だ。まるで古典絵画の傑作、いや、古代神話の一場面を見ているようだね」
振り返ると、そこには長身で優雅な立ち居振る舞いの男が立っていた。エクリス。元は王宮の画家だった男で、今も芸術への愛と美への執着を失っていない。絹のような銀髪を肩まで優雅に伸ばし、美しく仕立てられた深紅のビロードの衣装に身を包んでいる。その服装は貴族の正装にも劣らない豪華さで、彼の美への偏執を物語っていた。
「やっぱりそういうことだろうと思ったよ」エクリスは薄く、それでいて計算された美しい笑みを浮かべながら言った。「君の最近の様子がおかしいと思っていたんだ、セラフィナ」
セラフィナは身構えた。アザリアも聖火の取り込みを一時中断し、緊張した面持ちで振り返る。
「君は他のメンバーと違って、複雑で繊細な心理を持っている」エクリスは石段をゆっくりと、まるで舞台に登場する役者のように優雅に下りながら続けた。「ヴェクターのような単純な力への渇望でもなく、イザベラのような知識への狂気でもない。もっと深い、もっと人間的な絶望と愛情の機微を理解している。それが僕は気に入っていたんだ」
「何が言いたいの?」セラフィナが警戒心を込めて尋ねた。
「君の心の動きを観察するのは、まるで古典文学の傑作を読むような、いや、複雑な心理劇を鑑賞するような楽しさがあった」エクリスの目が知的な光を宿して妖しく輝いた。「特に、君があの巫女の話を聞いている時の表情の変化といったら...まさに芸術的だった」
エクリスは足を止め、セラフィナをじっと見つめた。
「君はその女の話を通じて、自分自身を悲劇のヒロインに仕立て上げていた。なんと興味深い心理的機制だろう。君は生まれの良い箱入り娘として育ち、表面的には何不自由ない幸せな人生を歩んでいた。両親の愛情に包まれ、周囲の期待を一身に受けて、将来を嘱望される優秀な巫女として...」
セラフィナの顔が青ざめていく。
「だが、それは全て偽りの信頼関係の上に成り立っていた。君のガードは君を愛していたのではなく、君の地位と美貌、そして君の家の財産を愛していたに過ぎない。いざ命の危険が迫った時、彼は君を見捨てて逃げた。君の信じていた全てが、一瞬で崩れ去った」
エクリスの声は次第に残酷さを増していく。
「そんな君が、あの女の物語を聞いてどう思ったか。ああ、なんて羨ましい。なんて美しい。自分もあんな風に愛されたかった。あんな風に信頼され、守られたかった。そして最終的には...あんな風に、真の愛を持つ男に抱かれたかった」
「やめなさい...」セラフィナの声が震えた。
「君は自分の惨めな現実を、あの女の美談の中に投影して慰めを得ようとしている。自分もいつかは...いつかはあの物語の一部になれるのではないかと。哀れなほどに美しい妄想だ」
エクリスは腰の細剣に手をかけた。その剣は芸術品のように美しく装飾されているが、刃は冷酷に光っている。
「だが、現実を見るがいい、セラフィナ。その女は君とは根本的に違うのだよ。君が生まれの良い箱入り娘として甘やかされて育ったのに対し、あの女は没落貴族の娘として這い上がってきた。君が偽りの愛に騙されたのに対し、あの女は真の愛を掴んだ。そして何より...」
エクリスの笑みが一層残酷になった。
「あの女は君とは違って、天が与えた豪運の持ち主なのだよ。君のように、愛する人に裏切られて絶望の底に突き落とされることなど、決してない」
「前から君のことはモノにしたかったからね」エクリスは細剣を半分ほど鞘から抜いた。「ここで一つ、現実というものを教えてやろう」
セラフィナは腰に帯びていた錫杖型の武器を構えた。かつて巫女だった頃に慣れ親しんだ武器だ。
「あいにくだけど、お前のような線の細い男には興味がないわ」
エクリスは優雅に、まるで貴族のサロンでの会話を楽しむかのように笑った。
「ほう、では君が聞かせてくれた物語の中の、あのたくましい戦士に抱かれたいのかな?その幸運な巫女と一緒に、愛の巣で甘い時を過ごしたいと?」
下品な嘲笑が聖なる部屋に響いた。セラフィナの頬が屈辱と怒りで真っ赤に染まる。
「その汚らわしい口を慎みなさい」
「君はあの美談に酔いしれて、自分もその物語の一部になったつもりでいる」エクリスの声に深い軽蔑が込められた。「なんと哀れなことだ。結局君も、手に入らない愛に憧れる惨めな女に過ぎない。自分の人生の失敗を、他人の成功物語で慰めようとする、みじめな敗者よ」
「黙れ!」
「僕が器用なだけの優男だと思うなよ」エクリスは細剣を完全に抜き放った。刃が聖火の光を受けて美しく煌めく。「芸術は時として、暴力よりもはるかに残酷で、はるかに美しいものだからね」
刃と刃がぶつかり合う金属音が、聖なる空間に鋭く響き渡った。聖火の光が二人の戦いを幻想的に照らし出し、まるで古典悲劇の決闘場面のような、美しくも残酷な光景を作り出している。
アザリアは急いで聖火の取り込みを再開した。




