それがたとえ強者でも
部屋に戻り少しすると試合開始を合図するチャイムのようなものが鳴る。
「残り2回か」
「・・・」
俺らは戦闘場へ向かう。俺は密かに覚悟を決めていた。
相手の人数は8人。こちらは11人。
俺とルークと刹那で最初に仕掛けようと思ったがまさかの相手から来た。俺は飛んできた剣をかわす。
しかし相手の後衛の火の玉が鬱陶しい。単体の威力は弱いが熱いし何より量が尋常じゃない。普通に痛いしなにより気が散る。気を紛らわせたりするために撃っているのだろ。
「前衛のみんな!火の玉は私に任せて!」
エマがそう言って火の玉を魔法で打ち消してくれた。
だけど相手もかなりの実力者だった。相手の1人が戦闘場全体の足場を何かよくわからないぬるぬるした液体で埋め尽くした。
「うわっ!」
刹那がそう言って転んだ。
足元がぬるぬるで踏ん張ることもできない。
「うっ!」
俺は相手に蹴りを一発食らってしまった。
どうして相手は動けてるのだろうか。そんなことを考える意味もないか、相手の能力だろう。
するとエマが巨大な魔法陣を床全体に作り出した。
「ロックザロック!!」
エマが技名を唱えるとぬるぬるした液体が岩に変わっていく。そして相手の足を岩で固定した。
「なんだよこれ!」
相手は困惑していた。そりゃそうだ。だってエマが本気を出し始めたから。
「雷龍!!」
「うわ、すげーな」
エマの後ろから雷の龍が飛び出てきた。そして相手の方に向かっていく。エマが本気で力を込めたら龍の体の一部が相手に当たっただけで並の相手なら感電死するだろう。
「本当にチートだよ」
しかしチートというのは1人じゃない。相手にももちろん出てくる。相手が泥のような汚い物体でできた巨大な化け物を作り出した。もうこれエマ対相手の大将じゃん。龍が化け物に噛み付いて電気を流した。しかし泥の化け物は竜を掴んで食べようとした。それを阻止するために俺は化け物の手を切り落とした。そして本体を倒しに行こうとしたその瞬間。火の矢が俺の胸を貫いた。
「がはっ!」
俺はその場に倒れた。胸が焼けるように痛い。ジンジンする。でもなんだか体も軽いし心地良くなってきた。なんだろう、何かが聞こえる、でもわからないな、もう俺は死ぬから。
「バイバイ」
天草がやられた。もう息をしていない。私があんな化け物に手こずったから、でもどうしてあんなにあっさり死ぬのよ。天草らしくないわよ。
「うおおおおお!!!!」
私は雷龍をさらに巨大にして化け物を喰らう。そしてそのまま相手をめちゃくちゃにする。相手に向かって暴れさせる。雷龍は相手に向かって突進したり長い体で敵全体を囲って喰らったり。気づけば戦闘場はぐちゃぐちゃで、床は壊れて壁も所々崩れ落ちていて。
相手の姿は見当たらない。死んだのだろう。跡形もなく。私は無我夢中で天草を探した。周りの声なんて聞こえなかった。しかし天草はどこにもいなかった。
「どうして」
私が消してしまったのだろうか。いや、でも天草のことは攻撃しないようにしていた。だからありえない、ありえない、じゃあどこにいるのよ。あいつは本当に死んだの?ふざけんなよ!!一緒にここを出るって、私のことを見つけ出すって、笑顔が見たいって。
私は視界が濁っていた。前も見えない。目から涙が溢れるのを感じた。声は出なかった。出したくもなかった。誰とも会いたくない。そう思ったから私はすぐに部屋に戻った。私はベットに座った。なんで、どうして、本当に天草は死んだの?あんなに強かった天草があんな弱い火の矢で?
ありえない、おかしい、おかしいよ、そんな、、、、
「あまくさぁ、、、」
私は泣くのを我慢していたはずなのにズボンを力強く掴んでる手の甲には水滴が何粒も、そしてその水滴はどんどん増えていった。




