4)聖女降臨 Sideカイルレン
明けましておめでとうございます(^^♪
2026年もよろしくお願いいたします★
伝承では、聖女降臨があるとその後100年は国が富み、大陸自体が平和になり安定するといわれている。まあ、例外もあるのだが。
俺が嫌なのは、聖女が降臨すると国の王として名が残るし、降臨した国の人間は聖女の儀式にも付き合わなければならないのだ。
王として国を治めるだけでも面倒だというのに、聖女の儀式に付き合うなど面倒この上ない。
だが、それを表立って言葉にすることはできない。許されない。
我が国ソルドラも聖女を信仰しているのだ、そんなことを言えるわけがない。
いらだちを心の中に抱えて、俺はソルと護衛騎士たちともに聖女が降臨したというスドラの森へと急いだ。
たまたまではあるが、俺たちはスドラの森近くの湖へいたから、そう遠くない距離ではあった。
だが、スドラの森へ近づくにつれ、異様な空気と魔力を感じずにはいられなかった。
「これは・・・すごい魔力を感じるな・・・聖女のせいか?」
感じたことのない魔力量におびえる馬を何とか走らせる。
「聖女様は、降臨される際にお持ちになられる魔力を内包できないとっ、うっ、伝承に記されていたはずです。」
聖女降臨については俺より知識のあるソルが青い顔をして教えてくれる。
強すぎる聖女の魔力を感じて、ついてきた馬たちも護衛騎士たちも、ソルまでもが青ざめて様子がおかしかった。
馬をとめると、馬から落ちるように皆が地面へと倒れこんだ。
「・・・陛下、申し訳ございません。我々の魔力量では、これ以上先に進むことはできないようです。あまりの魔力に息ができず・・・面目次第もございません。」
騎士たちは青ざめた顔をして息も荒い中頭を下げるが、ソルでさえすでに土色の顔色なのだ、無理もない。
「お前たちはここで待機しろ。俺だけで行ってくる。」
俺も子供のころに知識として聖所降臨について学んだが、うろ覚えにしか覚えていない。
それでも、『聖女降臨があった際の儀式』については、さすがに覚えていたし、それについてはこいつらは知らない。
代々王族のみが王子教育の際に学ぶものだからだ。
「・・・陛下、しかし、おひとりでは・・・」
「いや、俺だけでいい。こんな魔力を放出しているんだ、誰も近づけないさ。聖女が降臨した際に行う儀式もあるから、この先は俺だけで進む。儀式が終われば聖女を王城へ連れ帰る必要がある。馬車の用意をしてくれ。あとは、ソル、わかるな?」
「はい・・・陛下が儀式を終えられるまでに準備を済ませます。」
俺の側近となるために俺と一緒に王子教育を受けたソルは、やはり儀式について覚えていたらしい。
あとの手配をソルにまかせ、俺は単独で歩いて魔力の中心へと向かう。
今まで味わったことのない魔力の圧に、確かに息をするのもつらい。
防御壁のように風の魔力を体の周囲にまとったおかげで、息はだいぶしやすくなった。
少しずつ先に進むと、ある境界を越えた先から、この世のものとは思えない光景が広がっていた。
森は炎に包まれ、木々は燃えているというのに雪が降っている。
あちこちで小さな竜巻が起こり、大地はひび割れて水があふれるように噴出している。
このあたりに生えていたであろう草木は、枯れては新たに大地から生まれ変わっていて、天変地異というものがあればこれがそれだろうと思える光景だった。
いよいよ魔力の中心へと近づくと、かまいたちのような風や炎、吹雪く雪が俺を襲うように飛んでくる。
俺も魔力は強い自覚はあるが、そんなものがかわいく思えるくらいの魔力圧に、さすがに息が苦しく、あちこちが傷だらけになり、足が先へとなかなか進まなかった。
そんな中をなんとか先へ進むと、少し先の大岩の上が金色に光っていた。
ああ、伝承の通りの聖女降臨なのだと思いながら、一歩一歩何とか近づいていく。
岩にあがると、金色の魔力をオーラのようにまとった少女が苦しげな顔をして横たわっていた。
きっと今自分におこっていることもわかっていないのだろう。
運命に逆らうことはできず、聖女になってしまった彼女を見るに、今の自分と重なる気がした。
いや、まずは儀式だ。他の思考をやめて、聖女の額にそっと触れる。
「神よ、あなたの子へご加護を授けたまえ。”レアラン、センリース、エドラセル、メッロン”、っわっっ!」
儀式の呪文を唱えると、すごい勢いで周囲のすべてが彼女の中へと吸い込まれていき、俺は吹き飛ばされた。
周囲にあふれ出ていた彼女の魔力が彼女の中へと戻っていく瞬間は嵐のようで、目もあけていられなかった。
しばらくしておさまった様子を感じて目をあけるてみると、周囲は春の森のように生き生きとした木々と花たちで囲まれていた。
そっと聖女に近づくと、見たこともない服はあちこちが破れ、肌もところどころ見える姿となっている。
俺もたいがいぼろぼろだが、上着を脱いで彼女を包む。
彼女の顔をじっと見ながら、俺は心の中で絶望の声を上げていた。
『黒髪、とは・・・』
この聖女様は苦労するだろう、これからのことを考えて頭が痛かった。




