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聖女様ようこそソルドラへ  作者: miyon
聖女様降臨す

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3/5

2)王になってしまった Sideカイルレン

「陛下、もうそろそろ限界です!城に帰りましょう!」


俺の横で馬を走らせながら青筋を立てているソルスが、ほかの者には聞こえないようにしながら俺に怒号を浴びせてくる。

こいつの特技だ、美しい笑顔で微笑みながら暴言を吐くなど。

知っているものはごくごく少ないが。


「もう少しいいだろソル。それに今は魔獣の被害が多い時期だ。

視察次いでに討伐しておけばみなも喜ぶ。」


「討伐をする者たちは、陛下以外にも大勢おります!

我々の後ろをついてきている魔物討伐隊も、傭兵も、警備兵も!民の被害を最小限に抑えるためにと、陛下が作られた隊でしょう!

陛下が討伐までされてはあいつらの仕事がありません!」


今回は城を抜け出してすでに8日。

さすがに怒りが頂点に達しているのか、魔力があふれて炎がオーラのようにまわりにも見えてしまっている。


「ソル、魔力が出ているぞ。」


「うるさい誰のせいだボケナス!」


暴言を吐くだけにとどめているところをみると、まだ理性が働いているらしい。

城に残してきた側近たちとともに、俺がいないあいだの仕事の調整もすべて任せてしまっている。

最近は大臣たちも口うるさくなっていたし、さすがに負担が大きすぎたか。


「すまないとは思ってるんだぞ、これでも。

この峠を越えれば湖だ。そこで一休みしたら城に戻る。それならいいだろ?」


俺の妥協案に、ソルは友の顔で返事をする。


「お前の望みならかなえてやりたい。だが、できないこともある。」

「・・・わかってるさ。」


ソルの言葉は正しい。

あと少しの馬上を楽しむために、俺たちは話をそのまま打ち切った。


---


俺が王としておさめている国ソルドラは、このソルドラ大陸の中で一番大きな人間の国だ。

多くの利権がうごめき、みな自分の利益を追求する。

人の数だけ欲望がうごめいている、そうとしか思えない場所でもあった。


3年前、この国の王であった兄が突然亡くなった。

兄には息子がいたが、当時はまだ3歳。王位を継ぐ力はなく、誰かが中継ぎの王として立つ必要があった。


俺はこの国の王子ではあったが第三王子だったし、生まれてすぐから王都を離れて辺境の城壁都市カルボレで育っている。

それに、俺は”とある理由”から、人々から恐れられ怖がられていた。

だから当然第二王子の兄上が王となると思っていたのに。


その頃、隣国カーチェからの侵略を防ぎ、カルボレの被害を最小限に収めたこと、カルボレ周辺地域では俺の支持者が多いとのうわさが王都の連中の目に留まってしまった。

第二王子の兄は少し前に婚姻しており、それを機に王席から抜け、公爵家へ婿入りしたばかりだった。

そんな経緯もあり、俺の意志とは関係なく俺の戴冠が決まってしまった。


俺が王になっても、次代の王はすでに決まっている。

亡き兄王の息子アイロスだ。幼いながらも兄に似て優秀で、王子教育もとても頑張っているかわいい甥っ子だ。


王になることを避けることはできなかった。

それならばと、俺はいくつかの条件を提示して王になった。


王位継承をめぐってもめ事を起こさないために、俺は王位にはつくが妻帯はしない。

妻帯しないので俺の代では王の間は使用しない。

その為、最小限の側近、侍女とともに隣接の鷲の宮殿で暮らす。

アイロスが16になり成人を迎えたら、俺は王位から退き、一代公爵として辺境近くへうつる。


その後、俺は戴冠とともに兄王の妻、元王妃のロディス姉上と白い結婚をした。

姉上は兄王の死にショックを受け、言葉を発することができなくなったばかりか、夢の中で生きるようになってしまった。

アイロスの下にまだ生まれたばかりのロシャン王女もいるが、認識できない不安定な状態だった。


せっかく王城の主になったというのに一人を好んでいる。

そんな俺は『変わり者の王』として王城の人間たちに認識されていることも知っている。


俺を支えるためについてきてくれたカルボレでの側近たち、彼らだけが真実の俺を知っていた。


---


「陛下!大変です!王城より魔電が!」


王城のしるしの入った魔電報の封筒が、青い光と緊急音を放ちながら俺のほうへと飛んできていた。

それを受け取り内容を確認したソルが、俺をじっと見つめた。


「なんなんだよ、ソル。」


ソルはなかなか魔電の内容を言葉にしなかった。

「どうしたんだ?城で何か問題でもあったのか?」

「それが・・・」


血の気の引いた顔をしたソルは、俺に恭しく頭を下げながら告げた。


「果ての地の神殿より連絡が入り、このソルドラの地へ聖女降臨がなされるとの神言があったそうです。」


は・・・?

言葉にならない俺の後ろでは、200年ぶりの聖女降臨がソルドラにとの報にわきたつ討伐部隊の歓声が上がっていた。


「うそだろ・・・」

俺の嫌がる表情と言葉は、思わず頭を抱えた片手のひらにかくされて、誰にも気づかれることはなかった。

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