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聖女様ようこそソルドラへ  作者: miyon
聖女様降臨す

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2/5

1)最悪の夏 Side凛子

もう夏の終わり。

それでも都心から離れた場所にある大病院にはたくさんの木が植えられていて、蝉の声がうるさいくらいだった。


私はその日、術後検診の為に病院を訪れていた。

経過は良好とのことで一安心したけれど、40手前で体力が落ちているからか、手術の後から少し疲れやすく以前ほどの元気がない気がしていて、再度の検診日を設定されてしまった。


それでも、私は満足していた。

生体肝移植をしたことは私の体に負担をかけたけれど、そのおかげで義妹は助かったのだから。


家族仲の良くなかった私に、父と義母、義妹の綾子がそろって頭を下げて、今まですまなかったと謝罪もしてくれた。

それから今までのあいだに家族仲にあったぎこちなさや嫌な雰囲気は少しずつなくなって、私は今までの人生の中で一番楽しく暮らしていた。


父の会社での仕事は相変わらず忙しい。

それでも、私が術後仕事を休むことも考慮して、社長の父は私の補佐をしてくれる事務員を増やして雇ってくれた。

若いけれどとてもいい人で、はじめて職場で仲良く話せる同僚ができたこともうれしかったし、仕事に行くのが楽しいとはじめて思えていた。


自宅はもともとお手伝いさんや秘書さん、運転手さん一家も一緒に暮らしているほどの豪邸なので、みんなでしょっちゅう顔を合わせるわけではない。


それでも、義母は外出したらお土産を買ってきてくれたり、何度か一緒にカフェでお茶もしたりして、今までにない関係性を築けている。


義母からは、私が子供のころは義理の娘ということもあって、気まずさや嫉妬、妬みのような気持ちがあったそうだ。

義母もまだ若かったからつらくあたってしまって、ずっと後悔していたんだと何度も頭を下げてくれた。


『神様がくれたチャンスだと思って。いい機会だからちゃんと謝罪をしようって皆で話し合ったのよ。』

義母のその言葉がとてもうれしかった。


うれしかったのだ、信じていたから。

人を疑ったことなど、今までの人生でなかったのだもの。

まさかそれらすべてが嘘だなんて、演技だなんて、思ってもいなかった。


術後検診がおわった後、術後の経過が悪くてまだ入院をしている義妹の綾子の病室にお見舞いに行こうと思っていた。

仕事のトラブルがあって、最近はお見舞いにこれていなかったから、綾子が好きだとおしえてくれたゼリーをもっていこうと買ってきていた。


数分後・・・

私は自分がどれだけ自分がバカだったのかを思い知らされていた。


お見舞いになど、きてはいけなかったのだ。

聞いてはいけなかったのだ、義母と義妹の話など。


聞いてしまった話の内容があまりにショッキングで、どうやってその場から立ち去ったのかも記憶になかった。

持っていたはずのお見舞いの紙袋はどこに行ったのか、もうもってもいなかった。


病院からは出たものの外の暑さのせいかさっきのショックのせいか、ひどいめまいと吐き気がして、道の端でひどく嘔吐してしまった。


気持ち悪い。気持ちが悪い、気持ちが悪い、気持ちが悪い!

あんな、あんな!


聞いてしまった真実は、あまりにもショックが大きかった。

子供のころから無視されていじわるだってされて、大事なんてされてこなかったのに、簡単に信じてしまった自分がバカみたいでくやしくて。


吐きながら涙が止まらなかった。


いったいどれだけのあいだそこで吐いて泣いていたのか。

暑さがひどくて、滝のように汗が全身を流れ落ちていた。


「水・・・」


ふらふらと立ち上がって探してみると、となりの公園の入り口に自販機があった。

けっこう距離があったけど、嘔吐と涙でひどい顔もそのままに、そのままふらふらと自販機へ向かった。


自販機までたどりついた時には、あまりのひどいめまいに頭痛がしていた。


あーこれって熱中症かなあ、そういえばもってきていた日傘ってどうしたんだろ、病院に忘れてきたのかな。

そんなことを考えながらようやく冷たい水にありつけて、体が気持ちいいくらいだった。


「あ、れ・・・あ・・・」


立っていられたのはそこまでだった。

あふれる汗をぬぐうこともできないまま、昼日中のアスファルトへそのまま倒れてしまった。


熱い!痛い!誰か、だれか・・・

それが私が最後に思ったことで、そのまま私は意識をなくしたのか、真っ白になった。


『我がもとへ生まれし子よ。よく頑張りましたね。

あなたには新たな機会を差し上げます。

今度は幸せにお生きなさい。・・・頑張るのですよ。』


何も見えないし何も感じないけれど、遠い意識のはしっこで子供のような声がどこからともなく聞こえた。

はじめて聞く、とても温かみのある優しい声だった。


その声を聞いた瞬間、体がすごい勢いでどこかへと引っ張られていく。

目を開けることもできない、体を動かすこともできない。

自分に何が起きているのかもわからなかったけれど、体が引きちぎられそうな勢いで全身が痛くてたまらない。


何?何なの?何かおきてるのよ!これどうなってんの!!!


わけがわからないまま体はどこかへ引っ張られていく。

あまりの痛みに私はまた意識を飛ばした。


ああ、これが死ぬってことなのか。

私ってさっきあそこで死んだのかも。


死んだからどっかにいくってことなのかな、これって。

そんなことを考えていたような気がする。


次に目が覚めることがあるなんて、”次”があるなんてことは考えてもいなかった。

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