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世界は「線」によって織り成されている。


少年は歯を食いしばった。指先を走る灼熱の感覚に耐えながら、一歩を踏み出す。鼓動を失った胸の奥で代わりに鳴り響く太鼓の音が、耳をつんざかんばかりだ。

「……ちょっと待ってくれ……」

氷のように冷たい言葉が唇から零れた。空気が眼球を焼くが、少年は痛みに耐え、もう一度だけ会いたい少女の顔を探した。視界が慣れると、周囲の崩れゆく壁が見える。

石壁が軋み、砕け、何もかもを飲み込む虚無へと漂っていく。周囲を覆う純粋な魔力の奔流は理不尽で、立っていることすら不可能に思えた。身体の全てがやめろと悲鳴をあげる。でも、それでも構わない。彼女の瞳を見て、本当の気持ちを聞けさえすればいい。

彼女の瞳は嘘をつかない。


少女の肌には、細いワイヤーのような真紅の線が無数に走っていた。それらの線は彼女を世界に繋ぎ止める凧糸でありながら、二人の間の空間を無限に引き裂く壁でもあった。それらの線は、大地と人を隔てるものと同じだが、それ以上に強大な何かを分断していた。

人の「心」と「心」を。


「来ないで!」

少女の声は見えざる刃となって空気を斬り裂いた。

少年は焼けるような斬撃に顔をしかめ、頬を伝う血の感触を覚えた。だが、その一撃に何の重みも感じていないかのように、歩みを止めなかった。たとえそれらの線が本当に存在するとしても、それが「見える」なら意味はない。子供の頃、噂で聞いた。線の力を理解し、己自身の線を描けるようになれば、どんな願いも叶うのだと。

少年も他の多くの者同様、それを成し遂げた。だが彼の願いは彼らのものと比べ、子供じみていた――特にこんな状況では。

それでも――子供じみているなど、どうでもよかった。

サヨは、友達の手をもう一度握りたかっただけだ。

少女は視線を背けたままで、魔力を爆ぜさせ、空気を斬り裂き、サヨを攻撃する。上着が切り裂かれ、一撃ごとの焼けるような痛みを感じる。斬撃の度に、少女の想いが伝わってきた。

離れろ、と。

ついに彼女の思いが通じたと少女が信じた時、サヨの足音は止まった。彼を遠ざけるのが正しいはずだ。

そうすれば物事は良い方向に、楽な方向に向かう。

「……もう、ほっといて……どうしてみんなと同じように、私を置いていかないの?」

「そんなの決まってるだろ、マイア!」

その声は鋭く、彼女の耳を刺す。だがマイアは思った――彼は本当に全てを乗り越えてきたのか? そして、ほんの一瞬だけ、彼女はうつむいた視線を上げた。真紅の線は視界から消え、身体の痛みももう感じない。

彼女の目に映る唯一のもの。

彼女が見たいと願った唯一のもの。

サヨの顔。

その金色の瞳には涙が浮かんでいた。痛みや怒りではなく、でもマイアにはサヨがなぜ泣いているのかわからなかった。彼女はこれらの線の力を理解している。なのにマイアの願いは、一度も叶ったことがない。

それが彼女とサヨの共通点だった。

「わからない! だからなぜ…なぜ、ほっといてくれないの!?」と彼女は問いかけた。


「だって……君は、俺の友達だ!」


その言葉が空気に残った。サヨは身体の全ての繊維でそう信じている。そう信じなければならなかった。そしてマイアにはそれがわかった。二人の視線が合った時、どちらも嘘はついていないと知った。

人々は言う。魂は盲目だと。

エゴを通して、我儘になることによってのみ、人は見ることができる。

それこそが線を理解する唯一の方法なのだ。己の魂の形のように線を描けば、願いは叶う。全てが真実だとしても、マイアとサヨには、より強く信じたいものがある。

神話に近い、もう一つの噂。

強大な魂を持つ者は、これらの線の彼方にある世界へ入ることができるという。

つまり…

強大な魂を持つ者は、誰とでも心を繋げることができる。

やっほー!読んでくれてありがとう!

外国人だから、ところどころ変なところがあるかもだけど、

それでも気持ちがみんなに伝わったら嬉しいな。


タイトルについてちょっと説明!

タイトルの「魂」はフランス語の Âmeアーム って読んでほしいんだ。

ナレーションでもちょっと触れてるけど、

この物語は「魂」と「心」をつなぐお話なんだよ。


最後まで読んでくれて本当にありがとう!!

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