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The show must go on-09-

09


 木立の間を君影たちの乗った電気自動車が滑るように走って行く。

 行き先は行楽エリアの公園だ。

「今日は、ロケバスで着替えとメイクで、会場は野外設営だから、スタッフパスを持ち歩くようにってお達しだ、志智ダッシュボードの中の奴配ってくれ」

 君影に言われて、助手席の志智は自分の目の前のダッシュボードから取り出し、多喜とシュティに配った。

 君影は運転中なので、志智が君影の分も預かる。

 シュティにパスを手渡す時に、志智はふと思ったことをシュティに聞いてみた。

「なぁ、シュティ。さっきの打ち合わせって、ちゃんとマネージャー経由で来た仕事なん?」

 パスを受け取りながら、シュティの機嫌が一気に急降下したことが分かった、志智に笑顔を向けてきたからだ。

「えぇ、昨日の夜に、マネージャーがどうしても断れなくてって電話かけてきましたよ。その点が、不審といえば不審なんですけれども、気の弱いマネージャーのことですし、押しの強い人に負けてしまったんでしょうね」

 シュティは答えながら、車の窓の外を眺める。

「そっか、マネージャー経由ってことは、ちゃんと事務所通してんやな」

 志智は、独り言のように言いながら前に向き直った。

「この島の局内にいるってこと自体、ちゃんとした筋を通してるってことじゃねーの?」

 君影は、志智が何をそんなに気にしてるのか分からないといった風情で話に割り込んで来た。

「そうなんや、それが腑に落ちんのや。なんで、あんな奴をこの島に入れたんだろうって気になってな」

 この島は大きな転機を迎えようとしている。

 レジャー施設、研究施設などをクリーンエネルギーで運用し、その実際を、訪れた客が体験する。もちろん、もう何年も前から、研究所やテレビ放送のシステムは運用されている、だが、今日からはそこにレジャー施設の営業が始まる。島が目指した最終形態になるのだ。全国の注目を集めている中、問題を抱えている要因は少ない方が良い。そんな時期に、テレビ業界を追われたような人物を島に入れる愚を、誰が犯すというのだろう。

「事務所の承認がない打ち合わせはボクはしないですけれども」

 シュティが、話し始めた。

「今日の打ち合わせの内容は、とてもじゃないけど、打ち合わせと呼べるものじゃなかったですよ、企画自体の案を出す程度のものでした。しかし、撮影は来週からだそうです。多分、あの企画は撮影が実際に始めることができないでしょうね」

 意味がない、意味が分からなくて、振り回された徒労だけがシュティに残った。

 何でこういうことになったのかすら、自分に情報がないがために追求できず、膿みのように溜まったストレスが自然消滅するのをシュティの中で待っている。

「志智が言う通り、何か変なところはあるけど、情報がないものを気にしていても仕方ないからな、とりあえず、後でな」

 君影は電気自動車を停車させた。

「さ、行くぞ」

 君影は他の三人を促し、車をロックする。

「へいへーい」

「うす」

「仕方ないな~、あーあ」

 口々に返事をして、君影、志智、多喜、シュティの4人はロケバスへ向かった。

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