The show must go on-04-
04
案の定、多喜は寝ていた。
多喜の携帯電話が鳴っている。
…ような気がする、と多喜はうっすらと思った。
着信音は何かくぐもった感じに聞こえる、そしてとても小さい。
身体に触れている訳ではないのだがかすかに振動を感じる。
「…………」
なんでだろう。
覚醒しきっていない脳みそは積極的に情報を仕入れにはいかないらしい。
なんでだろう。
二回目にそう思ったとき。
また、くぐもった音で遠くの方から鉄扉を開閉する音が聞こえた。
…ような気がする。
「なんや、合鍵持ってんなら最初から言えっちゅーの! 十五分損したわ!」
「自力で起きれるならそれにこしたことはねーだろ! いちいちうっせーな!」
どすどすぎゃぁぎゃぁと賑やかな声が近づいて来た。
お迎えの時間か…と多喜は理解した。
「多喜~! どこだ~?」
「いないんか~?」
(あ、そうか、今日は式典の日だっけ…)
多喜はなんとなく状況を理解した。
がちゃっと部屋のドアが開かれる。
「うわっ、地震か?」
「雪崩れとる…本が…」
口々に君影と志智が叫んだのを聞いて本格的に自分の置かれている状況を理解した多喜は、身体を動かした。
「あ! 多喜」
「ちょ、どうしたん!?」
多喜は本の山に埋もれていたのだった。
身体を少し動かしたことによって、自分の身体の上の本が滑り落ちてあらわになったのを感じた。
その瞬間、襟首を掴まれた。
「よっす寝坊助、行くぞ~」
至近距離から君影が言う。
こくりと多喜は頷いた。
「ちょ、君くんそのまま引きずってく気!?」
慌てたような志智の声がした。
楽でいいかな、と多喜は思っていた。