Critical condition-03-
6/9更新
キャラクターの設定書を見ていたら、今日(6/9)は君影の誕生日でした。
さてなぞなぞです、なぜ今日が君影の誕生日に設定されたのでしょうか?
ヒントは「ミュージシャン」答えは後書きにて!
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(何なんだよ、あのパンダの着ぐるみと、中国服の女はよ! 畜生、畜生!)
騒ぎの中で目に焼き付いた光景に君影は奥歯をぎりっと噛み締める。
本番が終わるまでの間に何かが起こるかもしれないと予測はしていたのに、捕まえられなかったのが悔しくてしょうがないのだ。
「君くん襲われたんやってぇ? アホみたいに運が良かったらしいやん。一歩間違ったらあの世行きって、馬鹿は運がいいってホントなんやなぁ」
けたたましい声が会議室のドアからやってきた。本人を確認するまでもなく志智だと君影は思った。
「『馬鹿は風邪ひかない』だろうが! 運と馬鹿は関係ねーよ。つか、高学歴様は馬鹿じゃないからこんな時はあっさりあの世行きっつーことだな御愁傷様! 残念賞またどうぞ!」
志智の言う通り「アホみたいに運が良かった」というのは本当で、あの時鼻にツンとくるような臭いに気がつかなかったらどうなっていたか分からない。良くて全身火傷、悪くて死…。どのみち人前には出られないことになっていたはずだ。
しかし、何かが起こるかもしれないと予測していたからこそ、「何か変だな」と思った時に安全側に身体が動いた。
「高学歴で爽やかなおれはね、佳人薄命って言葉が似合っちゃうようなイケメンなの、人生ケ・セラセラなの」
「意味わかんねぇよ! 佳人薄命とケ・セラセラになんの関係があるのか10文字以内で答えろよ! あぁ?高学歴さんよぉ」
「『なんにもかんけいない』! 丁度10文字や、アホめ!」
「アホはどっちだ馬鹿め、それだと句読点の『。』が入ってねぇだろうがよ、馬鹿が!」
「問題文に句読点含むって書いてなかったやないか。やっぱりまだまだ頭足りないちゃんなんやね君くんは!」
「お前こそ、全部ひらがなで答えちゃうあたり小学生かっつーの」
「きぃ~っ、なんやごっつむかつくわねこの子!」
「あ、あ、あ、あの二人とも落ち着いて・・・ケンカはやめて・・・」
マネージャーがおろおろと割って入ろうとするが、けんか腰の君影と志智の勢いに負けてしまう。
「現場を見せて貰いましたけど」
そこにシュティが会議室へ到着した。ルイと多喜も一緒だ。
マネージャーは茶を用意するためという口実でそそくさと付属のパントリーへ引っ込んだ。
シュティは君影と志智の険悪な雰囲気には慣れっこになっていたので構わず続ける。
「本来ならモニターの下にないはずのナイロンとアセテートがあったので何か仕掛けが施されていたようです」
「仕掛けって?」
君影はおうむ返しに尋ねる。
「さぁ、詳しいことは分かりません。君影がツンとした臭いと言っていたのは多分アセテートが燃えた臭いじゃないかと思われます」
シュティは首を傾けて答えた。
「そうなのか、ツンときてなんか臭い感じだった」
丁度、お茶の用意が出来たのか、マネージャーがそれぞれのお茶を用意して配る。その様子をシュティは目で追っているのを感じて君影もつられてマネージャーの黒いスタッフジャンパーの背中を見守った。
「ナイロンが燃えても異臭がしますから、臭かったのはそのせいかも知れませんね」
「そのおかげでオレ助かったのか…」
マネージャーは君影のライブのゲネプロを見ていたので、そのスタッフジャンパーをずっと着たままだったようだ。
各自お茶が配られると無言で口をつけた。
シュティはお茶に手を付けずにマネージャーに声を掛けた。
「マネージャー、ジャンパーの下なんか黒いですけれどもどうしたんですか?」
突然声をかけられてビクっとなったマネージャーは「そ、そうなんですか!?」とあたふたパントリーへ駆け込む。
「あはは、マネージャーおっちょこちょいやな」
マネージャーのいつものオドオドとした態度にその場が和んだ。
「でもさ、手口は分かんなくてもさ、犯人は分かったぜ?」
「誰だれ?」
マネージャーのおかげで場の空気が変わったので、君影は落ち着いて切り出した。
「パンダの着ぐるみ、それから中国服の女がいたんだ」
「パンダの着ぐるみ…また出たんだ」
多喜がパンダの着ぐるみに反応した。
「おうよ、箱持ってウロウロしてたんだぜ、あっやしーのな」
君影は爆発が起こった後のことを手短に語って聞かせた。
「しっかしそれだと中国服の人、火ぃつけたのに消火活動してるやんな、ウケるけど」
「燃えた現場の近くには、消火器が何本かと、ドライアイスの箱が残されていましたので。君影が見たことと痕跡は一致しています」
なので、何かしらの理由で消火活動をしていたというのは間違いがないようです。
「パンダの持ってた箱がドライアイスの箱だったんかな?」
「君影の証言通りなら、おそらくは」
「ドライアイスをぶちまけて火ぃ消したかったんやな」
「おそらくは…」
「ドライアイスの箱を探すより消火器を探した方が早いと思いますけどね」
ルイが珍しく苦笑した顔をした。
「どうしたんやルイ」
「犯人なのかも知れないですが、その慌てふためいている様に一種の愛らしさを感じてしまって…。爆発の規模から感じられる確実に殺そうという冷徹な意思とはそぐあわない気がしたんです。それに、変装とはいえそんなに目立つ格好をしているのなら、監視カメラの映像からすぐにどこの誰だか分かりそうな気がしませんか」
「着替える前と着替えた後がどこかに写っていそうだもんな」
なるほど、と君影は思った。
答え
6月9日はロクとキュウーで「ロックの日」だからです。(くだらn…)
ハイ! お後がよろしいようで! また次回!