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Critical condition-01-

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 会議室のドアを開けると何かが頭の上へ降ってきた。

「うわっ、何だ?」

「やった、でかしたシュティ上手く頭に挿さったで」

 志智がガッツポーズをする。

「これはまた、見事に挿さりましたね」

 ルイが苦笑する。

「君影の背だと大して速度が出ないから挿さるかどうかわかんなかったけど、うまくいったね」

 手に白い風車を握っていたシュティはどことなく興味がなさげな口調で言った。

 多喜は無表情に拍手をしている。

「犯人はお前か志智!」

 各々の反応で犯人を特定した君影は志智に詰め寄る。

「あはは~! 扉開ける時の無防備さを戒めんのや!」

「志智も引っかかったんだけどね~」

 シュティがニコニコと言う。

「結局、多喜と志智と君影のうち多喜だけが避けられたね、ルイ」

「そうですね、賭けは私の勝ちですね」

 にこっとルイが笑いながら言う。

「うーん、君影は避けるかなって思ってたんだけどな~。意外と鈍い?」

「お前らが黒幕か!」

 君影は志智に詰め寄ったままシュティとルイの方へ顔を向けた。

「黒幕だなんて言いがかりだよ君影、純粋にボクが犯人。ルイは幇助くらいかな。犯人っぽい仕草の人が犯人だとは限らないよね。もう少し冷静に状況を分析しないとさ、ホームズにはなれないなぁ残念」

 シュティはさも残念そうな悲しそうな顔を作った。

「何が残念だ、開き直ってんじゃねーよ、ルイだって賭けに乗ってんだから幇助じゃねーよ共犯だっつの」

「まぁまぁ、そんないきり立たんでもえぇやん、頭の風車取って椅子に座ろうや君くん」

 志智が君影をなだめる。

「何、そんなもんが!?」

 君影はあわてて、頭をさぐり風車を取る。

 白い紙で作られた風車が、割り箸頂点に地面と平行になるように画鋲で留められていた。

「何だこれ、風車って普通こんな留め方しねーだろ」

 君影は、画鋲で留められている風車を割り箸の側面につけ直した。

「うん、別に風車を作りたかったワケじゃなかったけど、あるものでちょっと試したかっただけだから」

 シュティがぽつりと言った。

「何を?」

「ヘリの事故について」

「何か分かったのか!」

 君影がシュティに勢い良く問う。

「今日は島の稼働の仕上げの日のはずなのに、全体的にすっきりしない日でしたよね」

 シュティは急に口調を改め、君影の勢いを殺すかのように唐突な話題転換をした。

「お…、おう」

 君影はシュティの言うことへは同意なのだが、戸惑いつつ返事をした。

 志智も多喜もそれぞれに思い当たる節があるので、黙ってうなずいた。

 シュティの急な打ち合わせ、着ぐるみのパンダ目撃、舞台監督の堀の言動、仕上げはヘリの事故、それらがなければ今朝のすっきりとした気分のままで今日が終われたはずなのだ。

「ヘリの事故の実験に風車はなんの役にも立ちませんでした、手持ち無沙汰で始めたことだったので問題はないんですけれどもね」

 シュティの口調が明るくなった。

「何か分かるも何も、ルイから話を聞くといいですよ、凄く素敵なニュースが聞けます」

 急に話しを振られたルイは、困ったような微笑みを浮かべた。

「簡潔に言うと…」

 ルイの言葉に君影、志智、多喜の三人は息をのむ。

「殺されかけました」

「何やの、その素敵すぎるニュースは…」

「簡潔すぎだろ…おい」

「聞きたくなかった…」

 今日の式典をフォローするために全力を尽くしきってしまった志智、君影、多喜が三人三様に疲れきった口調で驚きを口にした。

「つまり、何、事故じゃなくてルイとお嬢の殺人未遂事件ってことなんやな」

 いち早く立ち直った志智がルイとシュティを交互に見比べながら確認した。

「主に静香さんの殺人未遂で、僕は多分巻き添えだと思います」

 やんわりとした口調でルイが答える。

 そういう問題ちゃうわとすぐさま志智に突っ込まれた。

「じゃぁ、今呼ばれてるのは、口からでまかせ多喜主演の映画制作をどうするか会議じゃなくて、安全対策会議なのか」

 どこか合点がいった口調で君影も確認した。

 シュティはそれに対してはさぁと肩をすくめただけだった。シュティも知らないようだった。

 君影はこめかみと目頭を順番に指先でマッサージしながら喋る。

「確かに、事故というだけじゃスッキリしなかったけどな…。で、ちゃんと心当たりはあるんだろうな?」

「ありすぎて困っちゃうのよね」

 急に女性の声が会話に割って入った。

「今日は一日お疲れさまね、もうちょっとつきあってもらうわよ」

 後から入って来たらしい静香は、会議室の扉に相対するように、一番遠い席に座った。

「で、結局俺たちどうすりゃいいわけ? どのみちもう映画撮影だってごまかしちゃったんだし警察にゃ届けないんだろ?」

 今までの会話の流れを崩さず君影があけすけな物言いで静香に言った。

「そうね」

 と静香は前置きして喋り始めた。

「映画の撮影で済ませたのは正解だったわね、機転が良く利いてたわ褒めてあげる。ただし、それくらいの能力を見込んでスカウトして育てたんだから当然といえば当然の結果よね」

「誰も褒めてくれだなんて言ってねぇよ、俺たちお嬢の何でも屋兼広報なんだからよ。お嬢の命令なら地球だって守っちゃいますってか」

 君影以外の四人は「ないない」と首を振る。

「地球なんかは守らなくてもいいけど、私の島は守ってよね」

 嬉しそうに静香は続ける。

「大きなことをやれば、大きな声で意見の違う誰かに気に入らないって言われるし、小さなことをやれば、やっぱり意見の違う誰かに小さい声で気に入らないって言われるし、その言い方が、どんな風に現れるかっていう、それだけの違いだわ。

 今回は、どうしても島の運営を大々的にやってほしくないって、そう言って来たんでしょうね、前々からいるのよ、研究をやめろって言ってくる奴が。

 別に、研究がしたくて島買ったわけじゃないから止めてもいいんだけれど、情報っていい商品になるんだものね~、特に炭素と食料系って。だから止めるなんて考えられないわ」

 静香は長い睫毛に囲まれた目を心底楽しそうに細めた。

「だから、あなた方に頑張ってもらうしかないわけ。きっと楽しいことになるわよ~」

 ヤな話を聞いたと言わんばかりの顔で君影は舌打ちをした。

全体の三分の一くらいまで話が進みました。

これからの部分は元々あるプロットを少し変えてアップしていくので、

更新が遅くなると思われます。

コメンナサイ;

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