The show must go on-15-
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サファイアの瞳を持つ我が島「イオフロート」。
緑に囲まれた八角形の深い青色は、セントラルオクタヴィアン揚水発電所。
天気の良い日に空からこのセントラルオクタヴィアンの池を眺めるのがとてもお気に入りだ。
こんなに綺麗なのに、電気を作れるなんてホントにお得だわ。
セントラルオクタヴィアンは、余ってしまった電力により海水を吸い上げ、必要な時に吸い上げた水を落とすことで発電するという揚水発電所なのだが、そんなところにお得感を感じてしまう静香をシュティの兄のジョシュアはいつも「日本人って無駄が嫌いだよね。二つ以上の機能がないと満足してくれないんだ」と笑う。
「そりゃそうよ、私はあたりまえなことをするために生きているわけじゃないんだから」
と、静香はジョシュアの悠長な物言いを一蹴する。
一つの物が一つの機能を果たすのは当然のことであって、そこに付加価値がつかなければ静香の興味は惹かれない。
ただ生きているのであれば、虫でも植物でも持っている一つの機能だ、生きる機能以上に思考と感情を持つ人間だからこそ、一つ以上の機能を持つものに関心を持つことができる。人間が生きること自体が多機能さを求めている、と静香は思っていた。
人間の一生は短い。人間として生を全うする時間の中で精一杯たくさんのことを楽しみつくしたいのだ。
「楽しまなきゃ損だわ」
自分を殺しに来た人間に会った、その瞬間をどう生きるか、生き延びるかを考えるのも楽しかった。
今、島へ降りて行く瞬間も、島や海の綺麗さに圧倒されるのが嬉しい、この空気抵抗を感じるのが楽しい。
次に地上に降りる瞬間も、降りた後のことも、その時にどうなったのか知るのが楽しみで仕方がない。わくわくする。
一秒一秒生きていることを楽しみたい、またそれが楽しい、それが朱鷺羽静香という人間だった。