The show must go on-13-
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手段を講じるために、マネージャーに尋ねる。
手段をマネージャーに尋ねる、ではないところが、こいつの恐ろしいところだ、と君影は思った。
誰かのせいにしない。
庇護されているだけの少年ではなく、自立した人間なのだと、こういう時に実感させられる。
「で、シュティは何が聞きたかったんだ? 時間ないぞ」
「The show must go onかどうかが知りたいんです」
シュティは、こめかみに人差し指をあて考える仕草をした。
「あぁ、そゆこと」
志智が、納得した。
「なるほど」
多喜が、うなずいた。
ザ ショー マスト ゴー オンとシュティは言った。
君影自身もQUEENの有名な曲のタイトルになっているくらいの言葉なので意味は分かった。
ショーは続けなければいけない。一旦始まった舞台は何があっても止められない。 この式典というショーを始めるのか、そして続けるのかどうか? ということだ。
今日の式典が成功するか、失敗するかで、この島の命運が決まる。
自分たちは、もう既に二年前から自主的に今日の式典のためのレールに乗っている。君影は、一度掴みかけたチャンスを逃した、二度目は逃したくない。このショーが続行可能な限りなんとしても続けたい、そう思った。
「操縦不能になっていたと判明した時には、まだプロペラは回り続けていたのかどうかが聞きたいです」
シュティの中ではいくつかのシナリオができ上がっているらしい。
そのシナリオの分岐点となるところが、「プロペラは回り続けていたのか」なのだろう。
「マネージャーどう?」
「…分かりません」
か細い声でマネージャーは答えた。
「分からないじゃなくて」
シュティが声は荒げはしないもののいきり立つ。なるほど、これで時間がかかっていたのか。君影は、シュティを制した。
「分からないのは分かった。じゃぁ、音は? すぐ、墜落するような話しをしていたか?」
「…していません。音は、なんだかうるさかったです」
「じゃぁ、すぐには墜落しない可能性もあるってことだな?」
君影はシュティに目配せをする。
シュティは無言でうなずいた後、喋り始めた。
「通常、その状況であれば、パイロットはなんとしてでも軟着陸を試みるでしょう。ですが、静香の性格を考えると、しばらく揚力が保てる状況なのであれば、大人しく軟着陸を試み救助を待つ、という選択をするとは思えません」
「ルイも連れてるしな~」
志智が言った。
パイロットが止めても、ドアを開けて出て行ってしまいそうだ、そこにいる誰もが思った。
「会場の状況から推測するに、マスコミはヘリに異変があったことを既に報じているはずです。なので、それを逆手にとりましょう」
「…え、でも、そんな、むちゃくちゃな。それに、もし、脱出していなかったら…」
マネージャーが口を挟んだ。
シュティはにっこりと微笑んだ。
「大丈夫ですよ、静香は」
「まぁ、むしろ、自分が来たときに用意が整ってない方がキレられるよな~」
君影もシュティに乗る。この仲間だったら乗り切れる、そう純粋に思った。
前はもっと自分が引っぱっていかなくてはいけない責任感で張りつめていたのにこの気楽さはなんだろうとも思った。
「そうやなぁ、『アタシが死んだってやり遂げなさい!』くらいのことは言うわな」
志智もちゃかして言った。
「じゃぁ、どうする?」
「サプライズで映画の撮影ということでお願いします」