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「……ねえ、裕子」


「んー?」


「来ると思う? 健斗くん」


「そりゃあ、あんた次第じゃないの?」


「え、どうして私?」


「だって、あんたが好きだったんでしょ。ずーっと。あの入学式のバス停から」


「……うん」


「なら、来るよ。そんくらいの気持ち、あいつ持ってる」


「……ううん、でもね。私、あの時からずっと“待ってただけ”なんだよ。高校の時も、卒業式の時も、連絡来るかなって思ってても、自分からはできなくて……。そのうち、あいつ、引っ越しちゃって」


「うん」


「結局、なにもしなかったのは私の方だったのに──それでも、来てくれるのかなって、思っちゃってる」


「……来るよ。地球最後だもん」


「なんか、それも切ないね」


二人で笑った。

でも、笑ったあとに静寂が落ちると、余計に胸がざわつく。


裕子が麦茶を取りに立ち上がる。


「けどさ、ほんとに最後なんだとしたら、好きだって言っとかないと損じゃない? 今さら格好つけてもしょうがないじゃん」


「……でも、来なかったらどうしよう」


「そん時は、私が一緒に過ごしてあげるよ」


「え?」


「え、じゃない。あんたの幼馴染の裕子さんをなめるんじゃありませんよ」


「ふふっ……ありがとう」


「……でも本音言うとさぁ、私はどうして地球最後にこんな青春ラブストーリーの脇役やらされてんのって思ってるよ?」


「え?」


「いや、ほんと。私にもさ、告白されるイベントの一個くらいあってもいいじゃん? 最後だよ?」


「裕子はそういうとこちゃんと自分から動くタイプじゃん」


「それを言うな」


笑いながら、真由美は立ち上がり、カーテンをそっと開ける。

外は、星が近く見えるほど澄んだ夜空だった。


「……来てくれると、いいな」


「うん」


二人が窓の外を見つめるその頃──山の向こうから、ゆっくりと、ひとりの男が地元の街に足を踏み入れようとしていた。

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