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山の向こうに、小さな街の灯りが見えた。


俺の地元。

もう何年ぶりになるんだろうな。あの駅前のアーケード、あの白い鉄塔、遠くにちょこんと見える市民体育館の丸い屋根。

変わってないようで、変わってる。変わってるようで、変わってない。


足が棒ってこのことだな……。

駅前のコンビニ、まだやってる。あそこのカレーまん、地味に美味かったな。

あーでも今、食欲より眠気の方が勝ってる。どっか、座れそうなとこ──


「……あら? あんた、健斗くんじゃない?」


「……ん?」


懐かしい声に振り向くと、そこには近所の「岡本商店」のおばちゃんがいた。

昔、部活帰りによく立ち読みして怒られたっけな。


「やっぱり! 大きくなったわねぇ〜、ちょっと痩せた? っていうか……どうしたの、そのカバン。旅行? ……こんな夜中に」


「あ……いや、ちょっと、実家の方に……」


「そっかぁ……うちの店、もう閉めちゃったけど、ちょっとお茶くらい飲んでく? お湯はまだあるから」


「え、いいんですか? 助かります……マジで……」


おばちゃんが鍵を開けて、小さな商店に明かりが灯る。


中は昔と全然変わってなくて、レジ横には今も変わらず謎のキャラが描かれた駄菓子が並んでた。

椅子に腰を下ろすと、ドスン、と全身の重力を感じた。


「……おばちゃん」


「ん?」


「……なんか、世界、終わっちゃうんですね」


おばちゃんは、湯飲みにお茶を注ぎながら、うん、と静かにうなずいた。


「うちは、孫たちが明日、こっち来るって言っててね。みんなで集まろうかって。まぁ、こんな日でも、家族は家族だし」


「……ですね」


「でもあんた、なんでこんな時間に、歩いてまで帰って来たの?」


しばらく黙ってから、俺は言った。


「……言えなかった想いがあるんです。高校の時に。いや、今も、か……」


「そっか。じゃあ、間に合うといいねぇ」


おばちゃんはそう言って、お茶をもう一杯くれた。

その味は、不思議と涙が出るくらい懐かしくて、温かかった。

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