㉓
「……好きだよ、真由美」
「……うん。私も。ずっと、好きだったよ」
ふたりはそっと抱き合った。
何も語らず、ただ、世界の終わりにようやく届いた気持ちを胸に抱えて。
静寂が満ちる。
空からは、かすかに光が降りはじめていた。
もうすぐ、この星が終わる。そんな夜。
そしてその、少し離れた木陰。
「……ねえ、ちょっと。あれ、絶対告白したよね? 今のシーン、告白成功の流れだよね? しかも美しくまとまってるし、ドラマならもうエンドロールよね?」
声をひそめて早口でまくし立てる裕子。
その隣で、真由美の母がハンカチで目頭を押さえていた。
「うちの子……ようやく、ようやく……ああもう……!」
そして、真由美の父は――。
「……っぐ……健斗……おまえ……!」
拳を震わせ、歯を食いしばりながら、悔しそうにうなずいている。
「お義父さん、泣いてます?」
「うるさいッ!」
裕子はツッコミたくなる気持ちをぐっとこらえた。
「でも……よかった。ほんと、よかったよね」
そう言って、母が父の手をそっと握る。
「まったく、最後の最後でこんなドラマある? 地球終わるんだよ? もっとこう、ドタバタで終わるかと思ったら、しっかり青春のオチまでついて……」
裕子は言いながら、ぽりぽり頭をかいた。
「で、私がここにいる意味って何なんだろうねぇ。なんかさ、見守りポジション極まりすぎて、逆にちょっと切ないというか……」
そう言って、木陰からそっと出ると、三人で並んで空を見上げる。
――星が、流れた。
一筋、また一筋。
その流れ星たちは、まるで祝福のようだった。
「でもまあ、最後がこんなふうに笑って終われるなら、悪くないかもね」
裕子がそう言うと、真由美の母が笑い、父が肩をすくめた。
「……そうだな。悪くない」
そして、三人の視線の先。
丘の上では、健斗と真由美が、星空の下で手をつないで笑っていた。
**
世界は終わる。
けれどその一瞬前に、
確かに、ひとつの恋が実った。
最後の夜。
最後の空の下。
みんなで笑って、
この星とさよならしよう。
――Fin.




