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真由美の家の縁側。

日が傾き始め、オレンジ色の光が障子越しに差し込んでいる。


裕子は、湯呑みを手にしたまま縁側に座っていた。

そこへ、そっと隣に座ってきたのは、真由美の母だった。


「……裕子ちゃん」


「ん? はい、おばちゃん」


母は小さく笑って、膝の上で手を組む。


「……あの子、ずっと待ってたのよ。ほんとに。あんな子なのにねぇ、うちの真由美」


「そんなことないですよ。……私、知ってましたもん。あの子、健斗くんのこと、ずーっと好きだったの」


「ふふ、やっぱり?」


母は、そっと懐から封筒を取り出して裕子に差し出す。


「……これね、真由美が高校生の頃に書いてた、手紙。健斗くんに渡そうと思ってたんだって。でも結局、出せなかったまま、うちにあったの」


裕子は、それをじっと見つめた。


「……それを私に?」


「うん。今じゃないかもしれない。でも、もしかして、どこかのタイミングでね……

もし、あの子がまた、臆病になって言えなくなっちゃったら、裕子ちゃんが代わりに渡してあげてほしいの」


裕子はしばらく黙っていたけれど、やがて苦笑いしながら封筒を受け取った。


「……また便利屋扱いですか、私。でも……はい、了解です」


母は、安心したように目を細める。


「……ありがとね、裕子ちゃん。あなたがいてくれて、ほんとによかった」


「……やめてくださいよ。そういうの、泣けてくるじゃないですか……」


裕子は空を見上げた。

遠くでカラスが鳴いていた。

どこかで、誰かの人生の終わりが、静かに始まっている気がした。

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